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ちび白猫と小さな赤ちゃんと現代ダンジョンへ  作者: 南瓜と北狐


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101/114

101 ちびっこ王女

 飛行機械の客室のモニターには黒いユグドラシルの幹と大きな湖、新しいスマホ工場が映っているよ。

 新しいスマホ工場は、湖に面した王室管理の元保養地に建てられていて、スマホの部品の材料のカボチャも簡単に確保できるそうな。

 大きな湖を見ると背中がゾワゾワするのはなんでだろうね。こういう時のこともメグちゃんに言われていたね。「みぃー」『認識変換魔法を連発しにゃいとダメにゃの』って。


『宿敵はカボチャ』『宿敵はカボチャ』『宿敵はカボチャ』


 これで大丈夫。ゾワゾワが減ったよ。


「田中さん、どうしたのじゃ? 顔色が悪くなっておるぞ」

『いえ、今日は定期的にこれをすることになっていまして。気になさらずに』

「体調が悪いなら医師を呼ぶがのう」

『ありがとうございます。ですが大丈夫です。すぐに体調は良くなりますから。わたしの体調よりスマホ工場の正門を軍勢が取り巻いているように見えるのですが、あれは?』


 客室のモニターには、スマホ工場の正門を取り巻く雑多な兵士たちが映っていたよ。それに相対して正門を守っているのは、緑のマントをつけた護国騎士団だ。


「征服派の貴族の私兵たちじゃ。ここまでしてくるとはのう。ですが安心してくだされ。あの者たちは威圧だけでスマホ工場には入ってこれぬからのう。スマホ工場は姫さまの領地。無断で踏みいれば反逆罪も適用できるのじゃ」

『王女殿下が合弁会社の社長につかれたのは、そういう理由もあったんですね』


 ◇


 工場敷地内の六角形の平屋の建物にきたよ。この建物は王室の保養所として建てられたもので、スマホ工場建設の時に改装されて、合弁会社の社長室、副社長室になっているそうな。

 わたしは湖の方から感じる強い圧迫感をまぎらわせるために認識変換魔法を3連発したよ。


『宿敵はカボチャ』『宿敵はカボチャ』『宿敵はカボチャ』


 3連発じゃダメだね。もう2連発だ。


『宿敵はカボチャ』『宿敵はカボチャ』


 これで少しはマシになったかな。あの木の下にカボチャが5個も転がっているよ。魔導砲を今すぐ5連発した方がいい気がしてきた。


「じいやー」


 建物からツインテールのちびっこ王女がトテトテと走り出てきたよ。後ろからエルフ侍女が追いかけてきている。金髪緑目のちびっこ王女は前にテレビで見た時より身体が大きくなって3歳くらいに見えるね。


「田中さん、少し失礼するのじゃ」


 モリアーティさんがわたしにひと声かけて、ちびっこ王女の方に走っていったよ。


「姫さま、走ると危ないですじゃ」


 モリアーティさんの言葉通り、転びかけたちびっこ王女をエルフ侍女が、さっと抱きあげたよ。プロの技だね。ちびっこ王女はニコニコ笑顔だ。


「姫さま、ただいま戻りましたのじゃ」

「じいや、しんたくがおりたのじゃ。よいしんたくなのじゃ」

「素晴らしい神託でしたのう」

「みなみとりでからつうしんがきたのじゃ。しんたくのとおり、そとにだいちがひろがったのじゃ」

「まことでございますじゃ!」

「みどりのだいちなのじゃ。かわもみずうみももりもあったのじゃ」

「素晴らしい知らせですじゃ」

「みんなもよろこんでくれるのじゃ」


 ちびっこ王女が表情をキリリと引きしめたように見えないこともないようなかわいらしい表情でわたしに目を向けたよ。


「じいや、あちらのかたが、たなかしゃんかえ?」

「そうですじゃ」


 侍女におろしてもらったちびっこ王女がトテトテと歩いてきた。MMJのビジネスマナー教育では、外で会った時は笑顔で握手だったけど、違う気がするね。こういう時はアニメを参考にしてみるよ。わたしはひざまづいて頭を下げてみた。


「たなかしゃん、あたまをあげてほしいのじゃ。とおいところからよくきてくれたのじゃ。わたしはエリエル・ノエル・モリエール。エリエルとよんでほしいのじゃ」

『エリエル殿下、お初にお目にかかります。わたしは田中美紀ともうします。本日はよろしくお願いいたします』


 ひざまづくとエリエル殿下の目線と同じ高さだね。


「こちらこそよろしくおねがいしゅるのじゃ。MMJのしゅまほはしゅごいのじゃ。おかあしゃまもわたしもよくつかっておるのじゃ」

『そう言っていただけるとスマホの開発者も喜ぶと思います』


 エリエル殿下がスマホを褒めていたことをメグちゃんとジョーちゃんに教えてあげないとね。


「かそうくうかんのおかげで、わたしもおかあしゃまとおしゃんぽしたりごはんをいっちょにたべたりできるようになったのじゃ」

『仮想空間はどんどん拡がっていて、雲の上や海の中もお散歩できるようになっていますから試してみると楽しいですよ』

「わたしがおしゃんぽしたのは、ウチといっちょのおしろのかそうくうかんなのじゃ。くものうえかやー、おかあしゃまといってみるのじゃ」

『ご飯は焼肉店が楽しかったです。自分でお肉を焼いて食べるんですよ』

「じぶんでやくのかやー」

『仮想空間の遊園地なんかも楽しいですよ。わたしも家族と行ったりしました』

「ゆうえんち、いったことがないのじゃ。たのしそうなのじゃー」

『高度300mから紐なしバンジージャンプとか、現実にないアトラクションもありますから楽しいですよ』

「それはたのしくなしゃそうなのじゃ」

『エリエル殿下には無重力遊泳アトラクションの方がいいかもしれないですね。ふわふわしてクルクルです』

「それはたのしそうなのじゃ」

『クルクルしすぎると止まらなくなっちゃいますが』

「へんなのがおおいのじゃ」



「姫さま、そろそろ次の方がお待ちです」


 興味津々な感じのエリエル殿下の言葉にいろいろ答えていると、ささやくような声でエルフ侍女が次の予定を告げたよ。


「もうそんなじかんかや。しゅまほをつくってくれたMMJに、わたしのこころからのかんしゃをおくるのじゃ」

『エリエル殿下にそう言っていただけて光栄です』

「たなかしゃん、しきてんがおわったら、ゆっくりおはなししたいのじゃ」

『いつでも声をかけてください』

「ありがとうなのじゃ」


 わたしは完成式典が終わったら、すぐに帰るつもりだったけど、小さいのにがんばっているちびっこ王女のお願いは断れないよね。

 背中のゾワゾワがどんどんひどくなってきているから、今度は認識変換魔法を5連発だ。


『宿敵はカボチャ』『宿敵はカボチャ』『宿敵はカボチャ』『宿敵はカボチャ』『宿敵はカボチャ』


「田中さん、大丈夫かのう?」

『わたしは大丈夫です』

「式典まで部屋で休んだ方がいいのじゃ。セイラ、田中さんを休ませるのじゃ。田中さん、わしの部下のセイラじゃ。なんでもセイラに言ってくだされ」


 カボチャが5個ボヨンボヨン跳ねてきたけど、エルフ侍女2号のセイラさんが蹴散らしてくれたよ。セイラさん頼りになるね。救世主に見えるよ。

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