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ちび白猫と小さな赤ちゃんと現代ダンジョンへ  作者: 南瓜と北狐


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100/114

100 聖樹国

 いつの間にか閉じていた目をあけると、モノリスを囲むストーンヘンジみたいな巨石群が見えた。巨石群には細かい模様が刻まれている。ドラゴンネストダンジョンのギガントゴーレム谷の壁画に似てるね。空にはオーロラがたなびいているよ。

 さっきなにかあった気がしたけど、なんだったかな? 女の子の声がクロクロ言ってたような? 視界のはしに金色がちらちらしていたから、つまんでみるとわたしの髪が金髪になっていたよ。どういうことさ? 認識変換魔法の副作用なの?


「御使い様に心からの祈りを」

「新たな時代、新たな世界! 祈りを!」

「新たな世界の誕生に感謝の祈りを」

「御使い様に感謝を捧げます」


 まわりの人たちは歓声をあげてお祭り騒ぎだ。今日は異世界のお祭りの日だったのかな? ほっぺたをつんつんしている人もいるよ。あれは花子さん、太郎さんたちの宗教じゃないか。異世界にまで……宗教こわい。


 スマホで時間を確認すると待ち合わせ時間の5分前だったよ。おかしいね、30分前行動を心がけていたのに。

 あわてて巨石群を出ると、待ち合わせ場所の駐機場入口には待ち合わせ相手のエルフのおじいさん、モリアーティさんがいたよ。モリアーティさんは聖樹国の偉い人で、新しい合弁会社の副社長になってくれる人だ。70代くらいに見えるけど538歳、もう玄孫もいるそうな。


『モリアーティさん、お待たせしました』

「わしも今きたところじゃ」


 モリアーティさんの視線がわたしの頭を見ている気がするよ。金髪だからかな。認識変換魔法の副作用だし気にしないでもらおう。


「花……いつもと違うよそおいじゃのう」

『こちらにくるのにいろいろありまして。気にしないでください』

「さようかのう。わかったのじゃ」

『みなさん、にぎやかですね。今日はお祭りでもあるんですか?』


 道や駐機場にいる人たちも浮かれて大声で話したり、祈ったりしている人が多い。ほっぺたつんつんしながら踊っている人までいる。

 これが異世界の普通の姿だったら、わたしついていけないかも。


「先ほど神託がおりたのじゃ。その神託が慶事でのう」


 さすが異世界、神託まであるんだね。ファンタジーまっただなかだ。


『みなさんが喜んでいるということは、かなり良いことだったんですね』

「そうなのじゃ。この世界はあと100年すれば崩壊する世界だったのじゃ。それが崩壊しなくなったのじゃ」

『それはめでたいですね。あれ? ということは引っ越しは?』

「引っ越しとな?」

『みなさん、元の惑星が砕けるから地球に移ってくる予定だったんですよね。それがどうなるのかなと思ったんです』

「田中さんはよく知っておるのじゃ。われわれは移住計画と呼んでいるのじゃ。移住計画をどうするかは、これから国毎に決めていくことになるはずじゃ」

『国毎にこれからですか。こちらでは神託はよくあるんですか?』

「最近では2年前と8年前にあったのう」

『あまりないんですね。だったら工場完成記念式典の日と重なったのは、いい記念になりますね』

「そうじゃのう。今日、神託があったことは、われわれ融和派の大きな力になるはずじゃ」

『融和派ですか?』

「そうさなあ。田中さんは知っておいた方が良いかもしれぬのう。飛行機械の中で説明するのじゃ」



 ◇


 モリアーティさんに案内されて、周りの飛行機械より、ひとまわり大きな黒塗りの飛行機械に乗り込んだよ。この飛行機械の周りに、なぜか黒マントの騎士たちが10人も立っていたから、税関をスルーした憶えがないこともないようなわたしは少しだけビクビクしてしまったよ。

 飛行機械の客室は高級そうな感じで、なんとなく居心地の悪さを感じていると、部屋の壁に周りの様子が映し出された。スマホでも使われている空中投影モニターだ。

 街から色とりどりの魔法花火がポンポンと上がる中、わたしが乗った飛行機械は飛び立っていった。なぜか聖樹騎士団の聖樹マークの入った飛行機械が4機も周りをかためているね。悪いことをして護送されている気分だ。わたし悪いことしてないよ、たぶん。


「今、この国は真っ二つに割れていてのう。それが融和派と征服派じゃ。地球と協調して移民を進めていこうという派閥と、地球を侵略して支配下におさめてしまおうという派閥じゃ。融和派は女王陛下を旗印に、征服派は女王陛下の弟公爵を筆頭にして争っておってのう」


 エルフの国そんなことになってたんだ。エルフの国の派閥は、目的があるぶんわかりやすいね。軍閥貴族の金髪派閥や赤髪派閥なんかは、権力争いのための派閥だったから、今でもよくわからないよ。


「体調のすぐれない女王陛下を案じた姫さまが、女王陛下の代わりに力をつくしてくれておるのだがのう。条約調印式の姫さま誘拐未遂と日本からの宣戦布告で、征服派が勢力を強めているのじゃ。そのうえ日本を3日で制圧できたことで、征服派の勢力に拍車がかかっておってのう」


 ちびっこ王女誘拐未遂と赤髪派閥の宣戦布告には、わたしもあきれたもんね。


「日本を3日で制圧できたのは賢者オカシさまのおかげじゃというのに」

『賢者オカシさまですか?』

「女王陛下と姫さまと親交のある賢者さまじゃ。その叡智は限りなく、どんな難題もたちどころに答えてくれる御方なのじゃ」


 異世界にもメグちゃん(アドバイスさん)みたいな人がいるんだね。


『聖樹国にはそんなにすごい方がいるんですね』

「姫さまの話では賢者オカシさまは地球の方でのう。空間ネットワークで知り合ったそうじゃ。甘味に目がない御方らしくてのう。甘味の写真をよく送ってきてくださるそうじゃ」

『甘いもの好きの賢者さまですか』

「征服派は地球を侵略して賢者オカシさまを怒らせたらどうなるか考えておらんようでのう。地球にはただでさえ魔王がいるというのに。困ったものじゃ」


 賢者ならまだわかるよ。でも魔王ってなにさ? 地球そんなにファンタジーじゃないよね。


『地球に魔王ですか?』

「自由自在に空を飛び、ドラゴン1000体をまたたく間に倒してしまう怪物じゃ」

『そんな危なそうな怪物が……』

「われわれは8年前から地球に調査員を送っておってな。その調査員たちが実際に魔王を目撃しておるのじゃ」

『調査員の方が見ているんですね……』

「賢者オカシさまは魔王とも知り合いらしくてのう。日本に宣戦布告された時にも、魔王を刺激しないように知恵をお借りしたのじゃ。魔王がわが国を攻めるようなことがあれば、壊滅的な被害が出るという予測もあってのう。他国にも知らせておるのじゃ」

「それでものう。クローエドワルド鉱王国やクローエドラスニア竜王国とアメリカとの交渉が頓挫したりしてのう。各国の征服派が力を強めているのじゃ」

「今回のスマホ工場は、地球にもわれわれより優れた技術があるというのを征服派や国民に見せて、軽挙妄動に走らないようにいましめる意図もあるのじゃ」

『それでスマホ工場建設にあんなに力を入れられていたんですね。半年で完成したのには驚きました』

「融和派に残った力を結集して建設したのじゃ。スマホ工場はクローエアリエル聖樹国を建国したアリエルさまの伝承にもなぞらえておってのう。これで征服派が考えを改めてくれたらいいのじゃが」

「幸い今日の神託で新たな道も開かれたのじゃ。これで女王陛下と姫さまの努力がむくわれてくれれば良いがのう」


 新しい情報が多すぎて目がまわってきたよ。

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