10 初宝箱
今日もアンデッド対策に鼻ティッシュを装備して、6〜9階層をクリアしたよ。メグちゃんもジョーちゃんも魔石拾いのお手伝いをがんばってくれた。
「こんにちはー。買い取りお願いしまーす」
6階層 コボルトゾンビ
レベル10魔石 254個 収入19万500円
7階層 ジャイアントバットゾンビ
レベル11魔石 286個 収入23万5950円
「こんにちはー。買い取りお願いしまーす」
8階層 クロウラーゾンビ
レベル12魔石 255個 収入22万9500円
9階層 エイプゾンビ
レベル13魔石 267個 収入26万0325円
1階層〜9階層は全部同じくらいの広さだった。メグちゃんの案内があったから1階層あたり30〜40分くらいで攻略できたよ。
どこの階層も魔物がたくさんいて、立ち止まると周りから魔物が集まってきて手に負えなくなるから、ずっと歩き続けたよ。
中学校のダンジョン学の授業では1つ1つ確認しながら慎重に進まないとダメって言っていたけど、島屋ダンジョンでは逆だね。慎重に進んだらゾンビに囲まれて死にかけたからね、わたし。
◇
今は10階層入口ホールで、ゲートキーパー部屋に続く白い大きな扉を眺めながら、ひと休み中だ。
『ゲートキーパーはレイス1体だったよね』
「みぃー」『スキンヘッドおじさんが言ってたの。昔、調査隊がちらべたの』
『初めてのゲートキーパー戦だから慎重に行こうと思って作戦を考えてみたよ。ゲートキーパー部屋の白い扉をちょっとだけ開けて、そこからレイスを攻撃するの』
「みぃー」『いい作戦にゃの。楽に倒せるのが一番にゃの』
「いーう」
『みんなの賛成も得られたことだし、この作戦でいくよ』
『みんな、そーっとだよ』
「あー」
「みぃー」『そっとにゃの』
わたしたちは大きな両開き扉をほんの少し押し開けて、3人でそっとのぞきこんでみたよ。メグちゃんとジョーちゃんもわたしの頭の上から見てる。
100mくらい先の壁際にモノリスが見える。そのモノリスを背景にして扉から20mほどのところにレイスが浮かんでいた。レイスは目を赤く光らせて、ダークアローを3本も撃ってきた。わたしはそっと扉を閉めたよ。扉にガンガンガンと振動が伝わってきた。
「みぃー」『作戦ちっぱいにゃの』
『奇襲は失敗したけど、扉をちょこっと開けて攻撃しよう作戦は継続するよ。扉を盾代わりにするんだ』
「だーまー」
「みぃー」『レイスのダークアローは、ゴーストのダークアローの5倍くらいの攻撃力にゃの。美紀ちゃんの魔法防御力にゃら100本当たってもケガひとつしにゃいそうにゃの』
『ゴーストの時もケガはしなかったけど痛かったからね。目に矢が入ったら、たぶんびっくりするくらい痛いよ』
「みぃー」『アドバイスさんはケガをちないうちに痛いめを見て攻撃を避ける練習をちた方がいいって言ってるの。美紀ちゃんは物理防御力に問題があるそうにゃの』
『そっかー。そういうことならがんばってよけてみるね。わたしの華麗なステップをみんなに見せてあげる』
わたしは扉を豪快にバーンと開け放った。そして予想していたレイスのダークアロー3本攻撃を右にジャンプして華麗にかわす。完璧だね。メグちゃんとジョーちゃんは戸口のところから見学中だ。ここからはわたしの攻撃のターン。
〈レイスの頭にライトアロー3連〉
レイスが3本の矢作戦ならわたしも3本の矢作戦だ。ライトアローが当たってレイスが光になって消えていった。
「やったかな? って、痛、痛、痛いよ!」
わたしの目の前を黒い何かが通りすぎたと思ったら、顔や身体の前に何かがガンガン当たり続けて、とっても痛い。目を開けていられない。
『だーやー』
「みぃー」『ダークアローにゃの。レイスたちに攻撃されているの。華麗にゃステップにゃの』
「痛たー」
「みぃー」『美紀ちゃんの魔法防御力にゃら大丈夫にゃの。よけるの。撃ち返すの』
「痛ーいーー」
「みぃー」『ダメだったの。ジョーちゃん、緊急出動にゃの。障壁魔法陣で美紀ちゃんを防御するの』
「だーうー」
「痛くなくなった!」
目を開けるとわたしの前で、透明な板が淡く光ながら、ダークアローを受け止めてくれていた。
ダークアローが飛んできている方を見上げると、左右に別れたレイスたちがダークアローを撃ちおろしてきていた。レイス発見! 今度はわたしのターンだよ。
〈左斜め上レイスの頭攻撃〉〈左斜め上レイスの頭攻撃〉・・・〈右斜め上レイスの頭攻撃〉
レイス9体が光になって消えていった。
「悪は滅びたよ。メグちゃん、ジョーちゃん助けてくれて、ありがとね。痛いし前が見えないしで攻撃できなかったよ」
「だーあー」
「みぃー」『レイスが10体もいたの。スキンヘッドおじさんのはなちと違うの』
『調査隊が入ったのって70年前らしいから、その間に増殖したのかも。このダンジョンは魔物多すぎだし。あーまだヒリヒリしてるよ』
「みぃー」『上着とジャージにあにゃがあいてるの。水玉模様みたいにゃの』
『ほんとだーー。レイスめ! この服は雑巾にする予定の服だったからいいけど、替えの服を持ってきてないよ。ここは封印していたレジ袋作戦しかないか』
「みぃー」『レジ袋作戦にゃの?』
『レジ袋に穴をあけてかぶって帰るの。リュックにレジ袋が4枚あるからね。本当は黒いゴミ袋の方がいいけどないから』
そんな感じで話しながら、レイスの魔石と魔核を拾っていると、いつの間にかモノリスの手前に宝箱が現れていて、ジョーちゃんがくっついているのが見えた。
「宝箱だーーー!」
「みぃー」『宝箱にゃのーーーー!』
メグちゃんが叫びながら、一瞬のうちに宝箱の横に移動していた。瞬間移動? もしかして瞬間移動なの? そんなことを思いながら、わたしも全力疾走で宝箱のもとへ。
宝箱の周りをゆっくり3周しながら、宝箱をじっくり観察する。ジョーちゃんがずっとしがみついてるけどね。メグちゃんもわたし同じように宝箱をいろいろな角度から見ている。宝箱、それは人類の見果てぬ夢と果てしない欲望の形。みんな初宝箱に興味津々のようだ。
「みぃー」『この宝箱に罠はにゃいの。鍵もかかってにゃいから、そのまま開けても大丈夫にゃの』
メグちゃんは調査していたんだね。偉いよ。
『メグちゃん、ありがとね。ジョーちゃん、宝箱を開けてみたい?』
「あーうー」
首をフルフル振るジョーちゃん。やっぱり宝箱の中身には、興味がないようだ。宝箱の開放の儀は、なんとなくやりたそうにしているメグちゃんに任せようかな。
『ジョーちゃんは宝箱の箱が欲しいの?』
「だーうー」
『そうみたいだね。せっかく初宝箱だから、メグちゃんが宝箱を開けてみる?』
「みぃー」『あけるの。わたちに任せるの』
『『何が出るかな♪何が出るかな♪何が出るかな♪』』「みゃみぃーみゃ♪みゃみぃーみゃ♪みゃみぃーみゃ♪」「あ~う〜♪?あ~?あ〜?」
宝箱の前に浮かぶメグちゃん。みんなで何が出るかなソングを斉唱だ。ジョーちゃんはついてこれてないね。今度教えてあげよう。
メグちゃんが、ガバッと勢いよく宝箱を開けたよ。
いよいよお宝とご対面だ。宝箱の中には、オシャレな感じの銀色のブレスレットが10個入っていたよ。ジョーちゃんはブレスレットに興味がないのか、ちらっと見ただけで、あとは宝箱の内装の赤い布をペチペチたたいて検分中だ。ブレスレットをさっさと出して、宝箱を渡してあげよう。
『オシャレな感じのブレスレットだね』
「みぃー」『ミスリル製ブレスレットにゃの。付与効果はサイズ調整にゃの』
『ミスリル……お高いやつだー』
「みぃー」『ミスリル合金じゃにゃく高純度ミスリルだから地金だけでもブレスレット1個で1千万円はいくそうにゃの。10個だから1億円ににゃるの。大当たりにゃの、びっくりにゃの』
『大金すぎて実感がわかないね。税金と手数料を引かれても7500万円……これだけあれば院長先生のポーションも買えるし、メグちゃんが欲しがっていたアイテムボックスも作れるよ』
「みぃー」『アイテムボックスにゃの! バタバタちて忘れていたの。転生者ごようたちにゃの。ほちいの』
『探索者免許を取りに行った時に聞いたら、シェードの魔核は1個千円で買えて、シャドウの魔核は1個2万円くらいだって。アイテムボックス用の魔核もたくさん買えるよ』
「みぃー」『このブレスレットは高純度ミスリルで質量が200グラムあるから、効果枠が8枠ありゅそうにゃの。サイズ調整とアイテムボックスの他に6枠分いろいろな効果をつけられるから、持っておきなさいってアドバイスさんが言ってりゅの』
『じゃあ、わたしたちの分は3個残して、7個売った分でアイテムボックスを作ったり、院長先生のポーションを買ったりするのでいい?』
「みぃー」『いいの。そうするの』
『ジョーちゃんは……っと、宝箱を情報板領域に取り込んだんだね。ちっちゃな宝箱に超合金ヴァルキュリアを入れて遊んでるよ』
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