第49話【離さない マサオ視点】
第49話【離さない マサオ視点】
「マサオ様、神奈月様、着きましたよ」
いつの間にか寝ていた。
執事のじいが車の扉を開けて立っていた。
大病院の裏の入り口だった。
「あ・・ありがとうございます」
冬太は緊張していた。
車から降りる。
俺は、このお通夜みたいな空気が苦手だ。
やめろよ。俺は脳内でワクワク未来ライフを満喫してたんだぞ。
「マサオ、大丈夫?」
冬太が手を伸ばしてきたのでヒレで弾いた。
「めっちゃ元気だわ!!オラ行くぞ!」
連絡を受けていたのか、お手伝いさん1号2号が小走りで外へ出て来る。
それぞれ私に向かって一礼。
おうおう、苦しゅうないぞ。
俺は右のヒレを上げようした――ズキン。胸の奥が痛む。
慌てて右ヒレを胸に持ってくる。
足もガクガクする。病室まであと何歩だ。
瞬間、ふわりと宙に浮かんだ。
冬太が後ろから抱き上げたのだ。
俺はぼんやりと、温かいぬくもりの中で、うつらうつらした。
気づくと、VIPルームの前だ。
白い廊下。静かな空気。
「俺とじい以外、誰も入るな」
「・・・え」
「ここで待ってろ」
「——嫌だ」
驚いた。
こんなにはっきり言われたこと、今まで無かった。
「バカだろお前」
「知ってる」
離さないように抱きしめてくる。
もう、やめてくれよ。
こっちも限界なんだよ。
死にたくねぇよ。
冬太は、珍しく目が本気だ。
マジかよ。
「しょうがねぇな」
笑ってしまう。
絶対泣くなよ俺。
「おい、冬太」
「なに」
「俺、この1年が人生で一番楽しかったわ」
「マサオ」
「ありがとな」
「待って、別れみたいな・・・やめてよ」
言える内に伝えたかった。
共にドアの中へ入っていく。




