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第48話【残り0日:車内 マサオ視点】

第48話【残り0日:車内 マサオ視点】


5月5日


学校の裏門に高級車のロールス・ロイスが止まっていた。

時間だ。


「おい、お前、ついてくるなよ」

「絶対行くでしょ」


一瞬考える。

冬太は、ペットロスで辛そうだった。

目の前で死んだら、精神は大丈夫か?


電柱に括りつけてやろうかーーなんて、頭をよぎる。


冬太の方に振り返りざま。

考えうる中で一番とっておきの可愛いポーズを作った。


――乗っ取りは発動しなかった。


「・・・嘘だろ」


冬太は真剣な表情で、少し怒っていた。

執事のじいが車の扉を開ける

私と冬太も乗り込む

(心配かけさせんじゃねぇよ)


隣に座る冬太を横目で見る。

手を固く組み、祈るようにしていた。


だが今は、怖くない。

あの時の冬太の愛犬ユキマルへの気持ちが、今なら痛いほど分かる。


「もっと一緒に、いれば良かった」

「もっと本音で話していたら」


冬太にできることは、もうないのかもしれない。

こいつには幸せになってほしい。


もっと早く、冬太に真実を打ち明け、相談していたら。

何か変わったかもしれない。


残り一緒にいられる時間がどれほどか分からない。

車内は静寂だった。


(こいつの前では、弱れねぇ)


もっと一緒にいたかった。

絶対、そんなこと言えない。


辛いのは。残る冬太のほうだ。


「フッ」


生まれてきて、楽しかった時間が、人間の時じゃなくて

「ペンギンになった1年間」って、どういう事だよ。


思わず吹き出しそうになる。


(あぁ、こいつと一緒に高校行きたかったなぁ)


私が弱っていると、冬太が悲しむ。

弱体化したペンギンの体で強がり続ける。


残される側のこいつに。

ペットロスであんなにボロボロになっていた。


(これ以上、心の負担かけたくねぇ)


・・・そうだ。


楽しいことでも考えるか。


こんなに沢山の人間に自ら関わったのは初めてだった。

乗っ取るどころか。

相手の感情の洪水に溺れた。


本気の感情は。

(すげぇ重い)


冬太は出会った時から狂気の優しさでドン引きだった。

怖かった。

時折、目が。

マジでヤバかったなぁ。


だが、冬太の隣はなぜか安心した。

こいつだけは何があっても俺を裏切らない。

なんでだか、そう思った。


泳げない俺がプールに落ちた時も。

冬太は絶対助けに来ると思っていた。


人間に対して、初めて

「こいつ、ちゃんと飯食ってんのか」と心配になった。


「フッ」


これが死ぬ前に見るって言う、走馬灯ってやつかもな。

なら、私は。

あえて楽しい未来ライフを想像してやる。


――残り0日



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