表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
47/53

第47話【冬太の心 マサオ視点】

第47話【冬太の心 マサオ視点】


5月20日


俺は最初ターゲットに、あいつを選んだ。

神奈月冬太。


この時は名前も知らない。

選んだ理由は単純。


「こいつ、簡単そうだな」


よく一人でフラフラ歩いている。

目も虚ろ。

いかにも隙だらけ。


「楽勝だな」


そう思った。

―—実際、楽勝だった。


気づいた時には、もう中にいた。


「あ、入れた」


拍子抜けするくらい、あっさり。


「なんだよ、つまんねぇな」


目の前には抜け殻のペンギン。

おかしいなと思った。


体を動かそうとする。

やっぱり妙だ。


「何でだ?」


主導権が、完全に奪えない。


俺はいる。

でも、あいつもいる。

同じ場所に、2人いる。


「・・・邪魔だな」


追い出せばいい。

そう思った瞬間。


――来た。


「・・・は!?」


言葉にならない何かが、流れ込んできた。

感情。

いや、そんな軽いもんじゃない。


――洪水だ。


「な、何だよこれ!?」


視界が歪んでいく。

強制的に、映像が流れる。


(おい、映画かよ!)


小さな柴犬。

尻尾を振る。

元気に走り回る。

美味しそうに食べる。

隣で眠る。

ふわふわの毛並み。

ブラッシングをねだる。


「ユキマル・・・」


声が聞こえる。

冬太の声だ。


「もっと一緒に、いれば良かった」

「もっと散歩、できたのに」

「もっと――」


止まらない。

後悔が、罪悪感が、願いが。

全部、全部。

一気に押し寄せる。


「お願いだ・・・」


「ユキマルを連れて行かないで」


息が詰まる。

苦しい。

呼吸が。


「自分の命を分けてもいいから」


「神様どうか連れていかないで」


――何だよこれ。


「こいつ、お人好し過ぎるだろ!!」


「逆に怖いわ!!」


俺は、冬太の感情を無抵抗に浴びた。

胸が潰れそうになる。

呼吸が上手くできない。


――逃げたい。


こんな感情、知らない。

重過ぎる。


「無理」


「無理無理無理!!」


こんな人間、知らない。

理解不能。


なのに、離れない。

全部、流れ込んでくる。


「・・・怖ぇ」


初めてだった。

本気で怖いと思った。


――これが。


「慈愛・・・?」


分からない。

分からないけど。


「こいつ・・・やべぇな」


こんな感情を持つ人間がいるのか。

俺には無理だ。

絶対に。


――やめた。


乗っ取りを、解除した。


「・・・はぁはぁ」


空気が美味い。

呼吸が出来る。


「何だよ、あいつ・・・」


振り返る。

倒れている冬太。

まだ目を覚まさない。


俺は考える。

こんな人間がいることに心底驚いた。


これが「慈愛」というものか分からない。


こいつは命を差し出そうと考えてた。

しかも対象の相手は人間でも無い。


犬だぞ!!


「・・・マジかよ」


この人間が珍しいのか。


「・・・まあいい」


担ぎ上げる。


「観察してやる」


希少な人間をゲットだぜ。


冬太はまだ目覚めない。


「・・・え?」


「目覚めるよな??」


今からこの人間は貴重な観察対象だ。


俺の秘密基地に連れていくか。

あの場所を冬太だけには特別に教えてやる。


俺の子分、1号候補だな。


これが俺たちの出会いだった。


――残り350日


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ