第39話【動き出した時間】
第39話【動き出した時間】
それから、どれくらい経ったか分からない。
学校には行っていた。
何もかもが「普通」に戻ったみたいだ。
それが、逆に嫌だった。
秘密基地の前で、足が止まる。
開けるのが、怖い。
いないことが確定する気がした。
自分でも分かるくらい情けない顔をしていた。
固まる。
意を決して、中に入った。
「・・・誰だよ」
ヒヨコじゃない。
少し大きくなった、黄色い体。
「大きくなってる」
ヒヨコ達は突然。
思い出したように成長していた。
ついあの日まで、手のひらサイズだったのに。
「・・・なんで」
近づいてくる。
前と同じように、躊躇なく。
――軽くない。
重さが違う。
止まっていた、命の進み方が違う。
「あいつが、いなくなったからか」
ニワトリに成長しようとする“それら”は。
ただ僕を見上げていた。
なぜか元気だった。
「お前らは、進めたんだな」
胸が締め付けられる。
「僕は」
言葉が詰まる。
ユキマル。マサオ。
頭の中に、残り続けている。
未完成の羽が、少し揺れる。
「・・・やっぱり静かすぎるよ」
座り込んだ。
あいつ愛用のクッションを抱きしめる。
あの“慈愛”スタンプカードをポケットから取り出して見つめる。
マサオのよく眠るクッションの下にあった。
結局1つ目で終わっている。
何個でも押してあげればよかった。
僕の世界からは、色が抜け落ちたようだ。
いつの間にか、こんなにも愛していた。
時々、思う。
(もし、あの時)
答えは出ない。
秘密基地は、そのままだった。




