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第37話【離さない】
第37話【離さない】
車が止まった。
「マサオ様、神無月様、着きましたよ」
マサオは、いつの間にか寝ていた。
長谷川さんが車の扉を開けて立っている。
大病院の裏の入り口だった。
「あ・・ありがとうございます」
僕は緊張していた。
車から降りる。
マサオはフラフラだ。
「マサオ、大丈夫?」
手を伸ばすと、ヒレで弾かれる。
「めっちゃ元気だわ!!オラ行くぞ!」
女性2人が小走りで外へ出て来る。
僕達に向かって一礼。
歩き方が歪でヨタヨタしていた。
見ていられなかった。
悩んで、後ろから抱き上げる。
驚いていたがが、安心したように目を閉じた。
大病院のVIPルーム前。
白い廊下。静かな空気。
「俺とじい以外、誰も入るな」
「・・・え」
「ここで待ってろ」
「――嫌だ」
マサオは少しだけ驚いていた。
「バカだろお前」
「知ってる」
マサオを離さなかった。
見つめあう。
逃げない。
長い、数秒。
マサオが折れて笑う。
「しょうがねぇな」
長谷川さんがドアを開けてくれる。
「おい、冬太」
「なに」
「俺、この1年が人生で一番楽しかったわ」
「マサオ」
「ありがとな」
「待って、別れみたいな・・・やめてよ」
共にドアの中へ入っていく。




