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第36話【残り0日:車内】

第36話【残り0日:車内】


5月5日


学校の裏門に高級車のロールス・ロイスが止まっていた。

時間だ。


「おい、お前、ついてくるなよ」

「絶対行くでしょ」


マサオが前方で歩き始めた。

電柱をチラッと見ている。

歩くスピードが少し落ちた。


こちらに振り返る。

あざといポーズだった。


「・・・嘘だろ」


マサオは驚いていた。乗っ取りをしようとしたんだ。

可愛いとかそんなこと思ってる場合じゃない。


(なんでそんなに置いていこうとするんだよ)

無性に腹が立ってきた。


長谷川さんが車の扉を開ける。

会釈して、車に乗り込んだ。

雨音だけが、一定に響く。


僕は手を固く組んでいた。

(お願いします)

(どうか)

――祈る。


隣では、マサオが目を閉じている。

呼吸は浅い。


マサオと出会って良かった。

ユキマルを失ってから動物はもう飼えないと思った。


でも、こいつは違う。

相棒よりも。

もっと大きな存在になっていた。

――このペンギンが愛おしい。


僕はマサオの小さく冷たいヒレを握る。


頼むから。

こいつを連れていかないでくれ。


――残り0日



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