第30話【残り51日:恋のコーチ(鬼)】
第30話【残り51日:恋のコーチ(鬼)】
マサオは頭に「必勝」と書かれたハチマキ(長谷川さん特製)を巻いていた。
空のペットボトルをブンブン振り回している。
ヒヨコたちもピョンピョン飛んでいる。
やる気に満ち溢れていた。
(なんでだよ)
「フンッ、来たか」
「恋愛は勝負じゃないよ」
「何言ってんだぁ!恋愛は総合格闘技だぁ!」
「マサオ、恋愛知らないでしょ」
「これより指導を始める!!」
「ねぇ、ほんと聞いて」
「俺を岬だと思って口説いてみろ!」
「絵面がやばいよね」
「早くしろ!」
「僕ただペンギン口説いてる人になるよね」
マサオはホワイトボードに貼っていた岬さんの写真を取る。
そして、自分の頭にペタッと乗せた。
「よし、いいぞ」
「・・・えぇ。・・・『あの、今日もお元気ですね』」
ベシッ!
「なめてんのかぁぁぁああ!!」
怒号とは裏腹に叩き方は軽かった。
「もっと腹の底から魂でぶつかれぇ!殺意で心にトドメを刺すんだぁ!」
「それ怖いよ!」
――
昼休み。
体育館の裏。
マサオの指令でやってきた。
一人でドリブルや壁打ちをして、バスケットボールを楽しんでいる岬さんがそこにいた。
「(行け!『俺がディフェンスしてやるよ』って言え!)」
「(いやいや僕じゃ練習相手にもならないよ!?)」
一向に動かないのを見かねて、マサオは後ろから僕を蹴り飛ばした。
「わあぁぁ!」
岬さんのすぐ近くに突っ込んだ。
「ペンギンさんの友達? 何してるの」
「い、いや、その・・・良い天気だね」
「曇りだよ」
「そ、そうだよね」
いたたまれない空気。マサオがヒレで頭を抱えていた。
何もできずに、その場を後にする。
帰り道、マサオが転ぶ。
「大丈夫?」
マサオを持ち上げる。
以前よりも体が軽くなっている気がした。
「下ろせぇ」
と、言いながらマサオは暴れなかった。
「岬は良いやつだ。あいつならお前の面倒を見てくれる」
「なんでそこまで」
「お前を腑抜けさせない、強いやつ」
「岬さんのこと、すごく推すね」
「今生きてるもの、大事にしろぉ」
「・・・」
――残り51日




