第29話【残り57日:ヘタレ救済プロジェクト始動】
第29話【残り57日:ヘタレ救済プロジェクト始動】
3月10日
秘密基地の空気は、以前より少しだけ冷たくなっていた。
「おい、好きな女性のタイプを言え」
「えぇ、急に」
「早くっ!」
「・・・うーん」
「このヘタレ!」
「・・・傷ついたよ」
「なら苦手なタイプは!」
「威圧感のある女性はちょっと・・・」
「なら、それ以外は誰でもいいんだな!」
「え、誰でもは・・・」
「いいから答えろ!何かあるだろ!」
「うーん・・・動物が好きとか、動物に優しい人かなぁ」
「条件がゆるすぎる! ゆるふわか、お前は!」
マサオは地団太を踏む。
ヒヨコたちも真似をする。
「よし!!!!」
バンッ!!
「え、なに」
「これより重大なプロジェクトを開始する!!」
マサオはペットボトルの空の容器をブンブン振り回した。
「何する気だよ・・・また変な作戦?」
「名付けて『ヘタレ救済プロジェクト』だ。・・・お前に彼女を作る!!」
「ぶっ・・・!!」
思わず炭酸水を吹き出す。
「彼女!? 急にどうしたんだよ」
「見てりゃ分かる! お前は放っとくと腑抜けて生気のない目になる。俺がいなくなった後、誰がお前の背中を叩くんだ!」
「え?・・・マサオ、いなくなるの?」
「例えばの話だぁ!」
「そんな前提で話さないでよ」
「黙れ! 彼女候補は決まったぁ!」
「え、早くない?」
「これを見ろ!」
ホワイトボードを出す。写真が貼ってある。
岬さんがマサオをギュッと抱えてる瞬間。
「えっ、岬さん!?」
「俺を見て『可愛い』って言ってた。・・・合格だ!」
「それ重要?」
「一番重要だろうがぁ!!」
「ピヨ」「ピヨ」
ヒヨコたちも騒ぎ出す。
「よし、作戦開始だぁ!!」
「いや待って」
慌てて止める。
連動して火車くんを思い出す。面倒そうだ。
「僕まだ心の整理とか・・」
「知るか!!」
「ひどいな!」
「新しい『好き』を増やせぇ!」
「雑すぎない?」
「うるせぇ!」
「恋愛を何だと思ってんの!?」
「分かんねぇけど人は幸せになるんだろ!たぶん」
ヒヨコがぴょこぴょこ僕に近づいてくる。
手に乗せる。ふんわり温かい。
気分が、少し落ち着いた。
「・・・無理だったら、どうするの」
「その時は・・・俺がなんとかする」
「どうやって」
「知らん!」
「知らないのかよ!」
――残り57日




