第21話【残り281日:ポイントくれよ】
第21話【残り281日:ポイントくれよ】
昼食前。
マサオが嬉しそうに、ペタペタペタ―ッと、走ってやってきた。
例のバケツを持っている。嫌な予感がした。
マサオが誇らしげに「生きたミミズ」を差し出してきた。
「ほら食え。ヒヨコの貴重な食糧だ。これが『見返りを求めない施し』つまり慈愛だろ!?」
「マサオ・・・気持ちは嬉しいんだけど。人間はそれを食べないんだよ」
「はああ!? せっかく俺が早起きして頑張って捕まえてきたんだぞ!俺の慈愛を受け取れよぉ!」
僕は半泣きで断った。
マサオがブチギレて殴ってきたので、慈愛ポイントはマイナスへ。
――
他の提案として「困ってる人を助けるのはどうかな」と伝えてみた。
マサオは子分のヒヨコたちを偵察に出した。
重い荷物を持ったお婆ちゃんを発見。
マサオは階段の下で羽をバタつかせた。
「オラァ!頑張れ!足腰を鍛えろぉ!」
応援のつもりだが威嚇にしか見えない。
お婆ちゃんは耳が悪いらしく終始にこやか。
「元気なペンギンねぇ」とゆっくり階段を上がる。
苛立ったマサオがついに両ヒレを上げて威嚇。
「あらまぁ!嬉しいけど私には主人がいるのよ。ごめんなさいねぇ」
「おい! 求婚じゃねえよっ!!」
お婆ちゃんは上機嫌で階段を上がりきって、後ろからついてきたマサオにお饅頭を渡した。
マサオは貰ったお饅頭を無表情で見つめていた。
もはや、どちらが助けたのか分からなくなって終了した。
――
夕暮れ。
特訓に疲れ果てたマサオ。
苛々でジタバタしだした。
「なんで数学で『慈愛』は解けねぇんだよ!」
「なんでお前は数学分かる前提なんだよ」
「意味わかんねぇ問題出しやがってぇ!」
「誰に出されたんだよ」
「いいんだよ!そんなことは!」
「えぇ・・・」
そして、珍しく急にシュンとした。
「・・・結局、俺には分からねぇんだ。誰かを大切にするとか、そんな感情。知らねぇよ」
僕は、マサオの泥だらけになっていたヒレをハンカチで拭き始めた。
「マサオは十分頑張ってるよ。苦手なミミズもヒヨコ達のために獲ってるんでしょ。それはもう、立派な慈愛じゃないかな」
「・・・お前が思ってるようなもんじゃねぇよ」
フンッと鼻を鳴らしていたが、どことなく元気を取り戻したようだ。
「おい、ならスタンプくれよ」
突然、紙とスタンプを渡される。
マサオの目がキラキラしていた。
よく分からないまま、スタンプを1つ押す。
「なんで10個も押す欄あるの?」
「10個で交換だろ?」
「何に」
「『慈愛』に」
「――ん!?」
1つ目のスタンプを見て、マサオとヒヨコたちはハッピーダンスを踊り出す。
「・・・なんか違うと思う」
空は青紫と赤紫のグラデーションに染まっていた。
影も相まって、無邪気に嬉しそうに踊るペンギンとヒヨコ達が可愛らしい。
冷えてきた空気の中でも、温かい空間に感じた。
――残り281日




