第20話【残り283日:夏休み特訓旅行】
第20話【残り283日:夏休み特訓旅行】
放課後の床下秘密基地。
マサオは深刻な顔でプロジェクターを回していた。
スライドには大きな字で『慈愛=獲物を分ける?』の文字。
「マサオ、これなに」
「俺は『慈愛』がねぇらしい」
「・・・まぁ、さっきも風紀委員さんにドロップキックしてたね」
「うるせぇ!あれは正当防衛だ!」
「動物虐待、器物破損って怒ってたけど」
マサオは床に寝転がって暴れ出した。
「俺は慈愛を理解しなきゃいけねぇんだよぉ!!」
「なんでだよ」
「なぁ、慈愛は何をすれば貯まるんだ?ポイントカード制か?」
なぜか急に、マサオが幼く見えた。
マサオの真剣さに僕も向き合おうと思った。
「うーん、見返りを求めない優しさかなぁ」
僕は困ったように笑いながら答える。
それを聞いたマサオの目が、獲物を狙うハンターのように鋭く光った。
「よし! 真夏は暑いから避暑地に行くぞ!」
「ここ(基地)も涼しいでしょ」
「気合いれて特訓合宿に行くんだよぉ!」
目が本気だ。
「お前の好物、毎食出すから」
「いらないよ」
――
旅館に着いた。
大自然。標高が高いのか。ひんやりしている。
「どこだよ、ここ」
「いいだろ。それより早く慈愛、教えろよ」
そう言いながら僕たちは絶景を堪能していた。空気が美味しい。
部屋の窓からの景色も見事で、露天風呂まで付いていた。
夜、眠っているとゴロゴロゴロと、マサオが転がってきた。
僕の横で止まり、左ヒレを僕の上に乗せる。
「寝相悪いな」
ユキマルもよくこんな風にくっついて眠ってたな。
僕はマサオを潰さないようにふんわりと抱きしめて眠った。
翌朝、奇妙な悲鳴で目が覚める。右横腹が痛い。
マサオに殴られたのか?
「ギェェェェ!!」
悲鳴を上げながら土を掘るマサオ。
傍で、ヒヨコたちがミミズをつついている。
マサオの足元には、あの封印の紙が貼られたバケツがあった。
遠くの木の陰から、執事の長谷川さんが目元をハンカチにあてながら見守る。
「この特訓旅行・・・必要だったのか?」
――残り283日




