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行列のできるスキル鑑定士  作者: ポムの狼
雪残る

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第8話 抜け道

「素晴らしいです、マルタン! なんて美しい建造物でしょうか!」


 完成した美しい石造りのホテルにサラは感嘆の声をあげた。目の前には雄大に広がる湖。後ろには残雪のブラン山がモダンなデザインの建物にぴったりあっていた。


「この美しい自然が私のインスピレーションを刺激したのよ」


 彼はマルタン。女性のような話し方をするが男性で、リオネルの依頼でベランジェにやってきた建築家だ。彼が設計と現場監督をこなし、やっとこのホテルが完成したのだ。

 マルタンは本当に有能な人物だった。彼を連れてきたリオネルの目利きとコネクションにサラは感心するばかりだった。


 今日はマルタンから、ホテルが完成したとの報告を聞き、サラと狼ブルームトとオベール卿、それに兵士が二人で現場視察にきていた。最近、サラの外出には必ず兵士が付いてきていた。


「この建材は何を使っているのですか? 一見すると灰色のただ石にも見えますが、近くで見るとキラキラ光って高級感がありますね……」とサラは聞く。


 マルタンはちょび髭を触って得意気だ。


「流石サラちゃん。良い所に気がついたわ。私が、ベランジェの渓谷を散策していて見つけましたのよ。細かいガラス質の物質が混ざった岩のようね。地元の素材を使ったほうが、材料代も抑えられるから使ってみたの」


「素敵です!」


 サラは宣伝用の資料に載せようと思いメモを取った。


「さあ、外観だけじゃなくて中も見てちょうだい」


「あ、アルジャンは待っててね。その辺で遊んでていいよ」


 当然のように一緒に入ろうとしていたブルームトをサラは止めた。ブルームトは耳としっぽを下げて、湖を見に行った。


 中に入るとロビーの美しさにサラは息を飲んだ。


「わぁ……お城みたいですね……

 オープンイベントのパーティーはここでしてもいいかもしれないですね」


 広いロビーの天井には美しいシャンデリアが吊るされていた。布張りの家具は濃いブルーの布が張ってあり高級感がある。ホテルの入口や窓からは湖が見えて開放的だ。


「気にいってもらえて良かったわ。あ、サラちゃんカウンターも見てほしいから、ちょっとこっちきてくれる?」


 オベール卿や兵士二人はロビーを散策中だった。マルタンはサラだけをこっそりと呼び出し、ホテルのカウンターの奥へと案内した。


 マルタンは小声でサラに話しかけた。


「……ねぇ、サラちゃん。今日はどうして兵士が付いてきてるの? 私何か変なことしたかしら?」


「……マルタンのせいじゃありません。最近、私の外出には必ず兵士が付いてくるんです。どうもリオネル様の命令で付いてきているらしいんですけど、リオネル様に理由を聞いても教えてくれなくて……」


 マルタンは手を頬に当てて、首を傾げた。


「サラちゃん、もしかして浮気でも疑われてるんじゃないの? だって、あの兵士たち、サラちゃんのことを見ている気がするわ」


「え……」


「困った事があったら、このアルマンに相談なさい。解決とはいかないかもしれないけどアドバイスできるかもしれないわ」


 サラはマルタンに自分の事情を打ち明けるべきか悩んだ。

 しかし、開業後にサラがいなくなったら、マルタンにも迷惑をかけるかもしれないので、事情を説明しておくことにした。


「………実は、私、オープンイベントが終わったらベランジェを出たいとリオネル様に話したんです」


「え、それはなぜ? 以前二人で会いに来てくれた時は、リオネル様はサラちゃんにベタ惚れって感じだったけど……」


「………亡くなったと思っていた大切な人が生きていたんです。私はその人と一緒になりたいんです。だから、リオネル様にも正直に打ち明けて、オープンイベントが成功したら出ていく許可をいただいたんです」


「………そうだったのね……

 でも、サラちゃん。あの兵士たち、サラちゃんが逃げ出さないように見張っているんじゃないかしら…… 本当にリオネル様はサラちゃんを見送る気があるのかしら? 私、少し心配だわ……」


 確かに、サラの外出に兵士が同行し始めたのは、その相談をリオネルにしてからだった。


「私は、サラちゃんのこと応援するわ! こんな私に偏見なく接してくれて、私の作る物をこんなに良く褒めてくれるサラちゃんのことが好きだから。ちょっと、こっちに来て」


 カウンターの奥には従業員が休憩できるスペースが設けられていた。お客様から見えないように窓のない部屋だった。


「ここよ。この少しだけ色の違う石、分かるかしら?」


 壁の石で一箇所だけ濃い色の石があり、サラは頷いた。


「前にサラちゃんが私に【転移魔法】の才能があるって教えてくれたでしょ?

 私、試してみたくなっちゃって、自分で調べて、この石に使ってみちゃったの。この石を十回ノックしてくれる?」


 サラは言われた通りにノックした。

 すると黒かった石が光って、サラが瞬きをする間にサラは別の場所に移動していた。ホテルから少し離れた森の中のようだ。


 サラがいなくなったことに気がついたのか、遠くから全速力でブルームトが走ってきた。


「ブルームト、ここが秘密の抜け道なんだって。マルタンが、もしもの為にって教えてくれたの。覚えておいてね」


 サラの言葉に狼の姿のブルームトは頷いて尻尾を振った。


 少しするとマルタンも転移してきたのか、現れた。


「さぁ、戻りましょう。兵士たちにばれてしまうわ。戻る時は、この石を十回、足で踏むのよ」


 マルタンはさっきと同じ黒い石の場所を教えてくれた。


 ホテルにサラとマルタンで戻ったが、二人が抜け出していた事はどうもばれていないらしい。



「さぁ、皆さん! 次は客室を見てもらいたいから付いてきてちょうだい!」



 アルタンの案内で一行の視察は続いた。




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