第9話 採用人事
サラの最近の業務はもっぱらホテル従業員の確保だった。
良い人材を確保したかったので、予算の許す限り大々的に広告を出した。すると、150人採用を考えていたのだが、約10倍もの応募が殺到したので、サラは応募書類の山を見て愕然とした。
「オベール卿…… 全員と面接したいので、私のスケジュールを開けておいてください」
「ぜ、全員ですか!? 流石に全員は無謀では?」
「でも、私の【鑑定】のスキルは本人と会わないと使えないんです!
この中の誰が隠された才能を持っているのか、書面だけでは判断しきれません!」
「……ちょっと、待っててください」
オベール卿はサラに仕事部屋を出ていった。しばらくすると予期せぬ人物を連れて戻ってきた。
「え!? リオネル様!? 今日は城の前の訓練場で訓練だったのでは?」
「サラが困っていると、オベール卿が言っていたから抜けてきた」
リオネルは流れる汗をタオルで拭きながら、サラの隣に座る。
サラは部屋の隅に控えていたオベール卿を睨んだが、オベール卿はサラの視線に口をとがらせて知らん顔をしていて、サラは腹立たしかった。
リオネルは履歴書を見て素早く二つの山に仕分けていく。
「何を分けているんですか?」
「採用と不採用だ。書類の段階で少なくとも300までには絞りたい」
「え……でも、隠れた才能が……」
リオネルは書類から目を離し、サラに向き直った。
「サラ、今回のホテルの顧客層は?」
「……貴族です。平民でも裕福な層をターゲットにしています」
「じゃあ、出身や家柄である程度候補者を絞れる筈だ。隠れた才能も大事かもしれないが、長年育った環境は本人の特性にかなり影響する。顧客層と似たような環境の人間を第一候補として絞った方が賢明だろう。
オープンまで、あまり日もないし、最低限のマナーは既に身についている人間がほしい。後は以前にホテル業界で働いていた経験のある人間なら、出自を問わなくてもいいかもしれない」
「………ごもっともです。そこまで考えが至りませんでした」
リオネルは優しく笑ってサラの頭を撫でた。
「サラは何でも一人でやり過ぎだ。もう少し、私やオベール卿を頼った方がいい」
「……ありがとうございます」
サラは頼れる上司に尊敬の眼差しを向け、リオネルのスキルを見た。
名前︰リオネル・ベランジェ
職業︰ベランジェ領 領主
取得スキル︰【審美眼】【剣術】【兵法】
【領地経営】
長所︰周りに好かれる頼れる領主
短所︰自分の判断に絶対的な自信があり、
空回りする事がある
………
この【審美眼】というスキルはサラの【鑑定】とは似て非なるもののようだが、かなり優秀なスキルのようだ。
リオネルに連れられて、国境防衛の拠点を視察した事があったが、全ての兵が適材適所に収まっているように感じサラは感心したのを思い出した。
「私も、出自の所と前職の所を見ながら仕分けてみますね」
サラはリオネルの指導のおかげで、スムーズに従業員の選考を進める事ができた。




