第6話 説得
「サラ、留守番を頼んだよ」
リオネルはなかなか許可のおりない婚姻の催促に行くために、叔父である国王に会いに行くことにした。
城門の前まで、サラは見送りに来てくれたが、サラはいつものように営業スマイルだ。サラがアルジャンと遊んでいる時はもっと明るい顔をしているので、この顔が作り笑顔であることにリオネルは薄々気がついていた。
自分がいない間に、サラがまたいなくなってしまうのでないかと思えて酷く不安になりリオネルはサラを引き寄せて抱きしめた。
「サラ、何処にも行かないでくれ。必ず陛下を説得してくるから」
サラはスッとリオネルから離れた。その表情は少しだけ悲しそうな顔をしていた。
「……分かりました。帰ってきたら、リオネル様にお話があります。リオネル様のお帰りをお待ちしていますね」
リオネルは馬車に乗り込み、サラが見えなくなるまで手を振り続けた。
* * *
「リオネル、久方ぶりだな! 元気にしていたか!」
国王は温かくリオネルの事を迎え入れ、抱擁した。
リオネルはすぐ国王に本題を切り出した。
「陛下、私の婚姻の許可はいつおりるのですか? 手紙で散々催促しても、返事の一つもくれないではないですか」
国王はリオネルの言葉に眉間に皺を寄せた。
「本当にあの娘でないと駄目なのか? お前もいい歳だから、さっさと結婚しろとは言っていたが、誰でもいい訳ではないのだぞ」
「彼女の何処がいけないと言うのですか!?」
リオネルは国王が言うであろう理由は予想がついていたが、ムキになって聞いた。
国王は深い溜息をつく。
「では、教えてやろう。
まず、彼女の実家に問題がある。普通は自分の娘を嫁に出す時は実家が支度金を持たせるのが一般的だな。それをあの家は用意できないからとお前に払わせた。しかも、貰っておきながら当の本人は逃げ出した言うじゃないか…… それで、謝って支度金を返してくれば話は違ったかもしれないが、あの家はそうはしなかった。そんな家を私の縁戚にはしたくない」
「………彼女の実家に問題があるのは認めます……
しかし、それは彼女のせいではない! 彼女は実家で酷い扱いを受けていたことは調べがついています!」
「そんな事はわしだって分かっている。可哀想だとは思う。しかし、だからといってお前があの娘と結婚しなければいけない理由にはならないだろう。
あの娘が不憫だというなら、私から適当な相手を紹介しても良い。それで、あの実家と娘は離れられる。
それにだ。あの娘はそもそも自分で逃げ出したのだろ? たくましいじゃないか。わざわざ、わしやお前が助けてやる必要などないのではないか?
お前は彼女がイーツにいる間の事も勿論調べたのであろう?
わしも調べた。交友関係も全てだ。
彼女は本当にお前のことを愛しているのか? 断れない状況に追い込まれているだけなのではないか?」
リオネルは何も言い返せなかった。サラがリオネルを何とも思っていないのは、一緒に過ごしているリオネルが一番よく分かっていた。
リオネルは喉の渇きを感じて、侍女が用意してくれたお茶を一気に飲み干した。
「……それでも、彼女はベランジェに必要な人材です。とても聡明で、家臣からも慕われています。
彼女が私の事を何とも思っていないのは分かっていますが、貴族の結婚などそういうものではないですか。利があるから結婚する。それで、いいではないですか……」
苦しい言い訳なのは、分かっていたがリオネルは諦められなかった。
国王はまた溜息をついた。
「要するに、お前が彼女に惚れてしまったということじゃな。全く、困ったもんじゃ……」
リオネルは国王に頭を下げた。
「お願いです! 甥っ子の頼みを聞いてください! 陛下!」
「……では、条件を出そう。
今、お前の領で進めている避暑地リゾート計画を成功させなさい。そうすれば、私も他の貴族たちも彼女の実力を認めざるを得ないだろう。そこまで結果を出せば、婚姻の許可を出そう」
リオネルは嬉しくて国王の手を取った。
「ありがとうございます! 陛下!」




