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177 対決、安川 凶 その1

「こいつが……、本物の安川(やすかわ) (まがつ)か」


「はい。 私達や胡桃を苦しめ、クローンホムンクルスを使って湊を暗殺した元凶です」


「そして、ガルタイトすら手玉に取った……と」


 警戒態勢を敷いたまま、俺達は安川を見る。

 よく見るとクローンホムンクルスと違い、オリジナルは微妙に目つきがヤバそうな感じだった。

 こいつが政治家の息子だというのだから、支配欲が高まるのも無理はないだろう。

 だが……、これ以上安川を野放しには出来ない。


「今までの俺様の手を潰してここまで来た事は褒めてやるよ。 だが、オリジナルの俺様はクローンホムンクルスとは違うぞ」


「だろうな。 だが、ここでお前とあの国王を取り込んだ合成魔獣(キメラ)を止めて見せるさ」


「そこまで知ってるとはね。 やはりアンタは危険だよ」


「お前もかなり危険だけどな。 厄介なユニークアイテムとか作りやがって」


「そうだね」


 安川は俺を危険視しているが、そもそも俺達にとってはあんなユニークアイテムを作ったり、ヘイトの血を使って強力なホムンクルスを作れるあたり安川の方が危険なんだよな。

 由奈も頷いているし。

 

「ともかく、俺様はただでやられるわけにはいかないんでね。 思いっきりやらせてもらうぞ!」


「それはこっちのセリフだね。 胡桃ちゃんや七絵ちゃん達の苦しみ、味合わせてあげるよ」


 これ以上、話をするつもりはないのか、安川は剣先を向けて来たが、ひなたも怯むことなく剣を向けた。

 こっちもこれ以上話をしても無駄だろうし、俺自身もそのつもりだしな。

 とはいえ、やはり奴の仕込みがどうなのかは心配だ。


(安川の仕込みを封じてくか)


 なので、みんなが戦いの体勢に入ってる間、俺は久しぶりにあの呪術を使う事にした。

 あの盗賊集団の【漆黒】との戦い以降、使ってなかったしな。


「皆さん、参りますよ!!」


「「「おおぉぉっ!!」」」


「へへっ、甘いぜ!」


 イリアさんの号令と共に、ひなた達が突撃するがやはり安川は不敵な笑みを浮かべて魔力を解放しようとした。

 

(ここだ! こっそり【サイレントカース】を……!!)


 そのタイミングで魔封じの呪術の【サイレントカース】を行使した。

 そして、安川が解放しようとした異質な魔力は、本来はある国の住民しか使えないはずのあの魔法を使うためのモノだった。


「【グラヴィティ】!!」


「何っ!?」


「その魔法は……!?」


 安川が口にした魔法の名前にクロウ中佐とエミリーが驚く。

 しかし、安川が口にした【グラヴィティ】という魔法は発動しない。


「な、な……!? 魔法が……発動しない!?」


「えっと、どういう事でしょうか?」


「もしかして、お兄ちゃんが?」


「ああ、嫌な予感がしたんでな。 あの呪術を掛けさせてもらった」


「あの【漆黒】戦以来の【サイレントカーズ】だっけ? 流石だね、暁斗くんは」


 魔法が発動しなかった事に驚きを隠せない安川。

 イリアさんも拍子抜け気味で固まっているが、アイリスが違和感に気付いたようだ。

 正直に話すとひなたも納得したようだ。


「だけど、暁斗君のおかげで発動しなかったけど、さっき使おうとした魔法って重力魔法だよね? ゼイドラムの人しか使えないと言う」


「ああ、そうだ。 だが、ヤスカワという男が何故使えるようになったのか……!」


「あの男にはユニークスキルを持っているとアキト君達から聞きました。 多分、それを利用したんでしょうね」


 由奈とクロウ中佐が、ゼイドラムの人しか使えないはずの重力魔法を安川が使った事が信じられなかったが、エミリーはユニークスキルのおかげだろうと予測していた。

 今はクールタイム中だから使えないが、使える日にその重力魔法を無理やり会得したのだろう。

 この状況だと、安川は他にも魔法を会得していた可能性が強い。


 魔法を封じて良かったと思うよ。


「くそっ! やってくれた……! だが、まだ戦える!!」


 そう言って、安川は剣を構える。


「だろうね」


「まだ、始まったばかりだしね」


「ですが、私達も負けるわけにはいきませんよ」


 同時にひなたやミナト、クロを始めとしたみんなも安川を睨んだ。


 そう。

 奴との戦いは、まだ始まったばかりなのだ。



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