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164 決戦に向けた暁斗達の強化 その1

『マナの波動が良くないと思ったら……。 事情は理解した。 さぁ、我と契約をするといい』


 安川にほぼ支配されつつあるガルタイトとの最終決戦に向けて、俺達も強化すべく色々やっている最中だ。

 現在、ゼイドラムの南にある火山で、火の精霊の【イグニス】との契約を終えたところだ。

 本来なら試練をすべきなのだが、イグニス自身もマナの波動が良くないと感じていたらしく、その理由を話した所、すんなり契約できたのだ。

 ガイアブルクの遥か北にある【風の谷】という場所にいた風の精霊【ティフォン】との契約も済ませたので、これで一応【サモナー】としての強化は終わりにしておこう。

 他にも精霊はいるみたいだけど、俺達に時間はない。


 二つの精霊の契約に要した時間は、移動などを含めて17日も掛かった。

 安川のユニークスキルのクールタイムは三か月だが、ガルタイトへの移動時間を考えると約二か月以内に強くならないといけない。

 いわば、これも強行スケジュールなのだ。


「後輩達の方は?」


「何とか強くなっているよ。 魔法メインの子はエミリーお姉ちゃんとクレアお姉ちゃんが担当してくれてるし、物理担当はひなたお姉ちゃんとクリスタちゃんが主だね」


 目的の精霊の契約を終えて戻って来た俺は、胡桃を休ませてからアイリスに後輩の様子を聞いた。

 今回の特訓は、魔法メインをエミリーとクレアが、剣などの物理はひなたとクリスタが担当してくれていたようだ。

 そのおかげか、後輩達は何とか強くなってくれていると言っていた。


「お兄ちゃんは、この後は槍の訓練なんだっけ?」


「ああ、由奈に稽古をつけてもらおうと思ってな」


『主は槍についてはまだ未熟のようだな』


「情けないがな。 予備としても槍を使えるようにはしておきたい」


 俺は、この後は由奈に槍の訓練を頼んでいた。

 今、こっちにいる四人の勇者の中では、由奈が一番槍を使いこなしているからだ。

 俺が抱える全てのジョブの中で、唯一【槍術士】がまだ板に付き切れていない。

 マスターは出来なくても、ある程度は槍でも戦えるようにはしておきたいのが本音だ。


「お待たせ、暁斗君。 じゃあ、地下の部屋の4号室で行うよ」


「ああ。頼むよ、由奈」


「怪我のないように気を付けてね」


 アイリスに見送られる形で、俺と由奈は、地下の4号室の部屋に向かう。

 さて、上手くやれるといいが……。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「せぇぇぇぇい!!」


「甘いッ!! でやぁぁっ!!」


「ぐああっ!!」


 アイリスの別荘にある地下の部屋の一つ、4号室と書かれた部屋の中で、俺と由奈は模擬戦形式での槍の訓練を受けていた。

 怪我のないように、木の棒を使っての訓練だが、俺が突きを繰り出しても、由奈に軽くあしらわれては、カウンター気味で返される。

 素早く突こうにも、由奈に読まれる形の上、どうも届かない。


「踏み込みがいつも甘いよ、暁斗君。 剣と違ってただ突くだけじゃあだめなんだよ」


「踏み込みか……」


「うん。 突く場合は、よく踏み込んだ上で一点を狙いすますようにするんだよ」


 踏み込んだ上で、一点を狙いすますか……。

 結構、難しいな、槍は……。


「暁斗君の場合、正拳突きをイメージしたらいいんじゃないかな? あれも踏み込んだうえで腰を落として一点を狙って拳を繰り出すんでしょ」


「あ……」


 そういえば……。

 序盤あたりの戦い方では、剣以外にも拳で戦ってた時もあったな。

 確かに最近は剣ばっかりだし、失念していたな……。


「使ってる木の棒を拳に見立てて、やってみればどうかな?」


「分かった。 やってみよう」


 木の棒を拳に見立ててやってみようと由奈からの提案を試してみる。

 両足を踏み込んで、腰を落として……。

 由奈に目掛けて、狙いすまして突きを放つ。


「せぇぇぇい!!」


「ぐっ!!」


「あっ、しまった!!」


 加減を間違えたのか、由奈を吹き飛ばしてしまった。

 その際に、由奈のスカートの中も見えてしまったが、慌てて見なかったことにする。

 ちなみに、ピンクだった。


「悪い、由奈」


「いいよ。 その調子で、これから動いていく私を捉えた上で、突きを繰り出して吹き飛ばして見せて」


「大丈夫なのか?」


「大丈夫。 さぁ、まだまだ行くよ!」


 すぐに立ち上がった由奈は、あっけらかんとした様子で、続きを要求する。

 この調子でまずは突きをマスターしておけば、【槍術士】の素質も鍛えられるだろう。


 トイレ休憩とストレッチを挟みつつも、槍の訓練は夜まで続いたのだった。



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