161 その頃の由奈達(後編)
【Side 由奈】
友理奈ちゃんたち後輩が、安川の目的にようやく気付いて落ち込んでいる。
そこに七絵ちゃんがこう言ってくる。
「私だって親友の湊を失った悲しみはあるよ。 憎いって思ったこともあった。 でも、その憎しみを安川に向ける事を安川自身が狙っているかもしれないって考えたら冷静になる事が出来た」
七絵ちゃんの言葉に、後輩達が黙って俯きながら聞いている。
無論、私やエミリーさんたちも、そして瑠奈ちゃん達三人娘もだ。
「それに……。 何よりも湊自身は、私達が憎しみの刃を向ける事を……、復讐を望んじゃいなかったんだよ。 仮に復讐出来たとしても、湊が戻ってくるわけじゃないから」
涙を流しながら発言する七絵ちゃんに、今度は伸晃君が前に出た。
「だから、俺達が上手く回れるように先輩達に相談することも考えていたんだ。 俺達だけでは無理でも先輩達と相談すればきっとうまくいくと思ってな」
同じく冷静さを保っていた伸晃君は、私達に相談することも考えていたらしい。
自分達だけでは無理だろうからということなのだろう。
彼の話も、他の友理奈ちゃん達は俯いて聞いている。
「安川が狡猾で、かつ自分の思い通りにするためには手段を選ばない性格なのを知ってるはずの俺達が、まんまと安川の罠に嵌りそうになったんだ。 これを反省点として、俺達は冷静に一歩下がって視野を広めて行動すべきだ。 何も由奈先輩は、俺達に戦うなと言ったわけじゃないんだから」
そう。
私は、後輩達に対して戦うなと言ってはいない。
今の憎しみに囚われたままで安川に挑ませるわけにはいかなかっただけだ。
それを伸晃君はしっかりと言ってくれた。
「ごめんなさい……」
友理奈ちゃんや他の後輩達は俯きながら、へたり込んだまま力なく謝罪をしていた。
そんな後輩達の傍に私は近づき、友理奈ちゃんや柚希ちゃんを抱きしめた。
「さっき伸晃君が言ってくれたけど、何も私は戦うなと言っていないよ。 あくまで、あなた達が憎しみに囚われたまま安川に挑むのは危険だから止めたんだよ」
二人の目に涙が浮かぶ。
今までの悔しさが募っているのだろうか。
「チャンスはまだあるよ。 だから今は冷静になって、私達に頼って……。 ね?」
「う、うわあぁぁぁぁん!!」
私が後輩達に掛けた言葉をきっかけに、友理奈ちゃんを始め、後輩達が揃って泣き出した。
やはり今までの悔しさが募っていたのだ。
私は特に泣きじゃくる二人を黙って受け止めていた。
「あの子たち……、余程ヤスカワに悔しい思いをしていたんだね……」
「ええ……。 訴えても奴が政治家の息子であるがゆえに受け入れてもらえず、泣き寝入りになるしかなかったケースが多かったので」
「あまりにも酷い話……」
傍らでエミリーさんが伸晃君と話をしていた。
クレアさんも伸晃君の話を聞いて、顔を歪めていた。
「それで、向こうは一騎打ちらしいですが、あれからどうなりました?」
「あ、待ってて……、聞いてみるよ」
後輩達を受け止めている私の代わりに伸晃君がエミリーさんに対して向こうの現状を聞いてくれた。
伸晃君は頼りになる男の子だなぁ。
「今、アイリスちゃんから報告があって、ひなたちゃんが勝ったみたい。 ザナ王女は槍の技術がまだおぼつかなかったのが敗因だったみたいだけど……」
ひなたちゃんが勝ったという報告を聞いて、ホッとした。
エミリーさんの言うようにザナ王女は槍の戦い方に慣れていないのが敗因だったようだ。
「ザナ王女が死ぬ前に、ひなたちゃんに何かを伝えたみたい。 安川に支配されたガルタイトの現状みたいだけど……」
どうもザナ王女が戦死する前に、ひなたちゃんに何かを伝えたようだ。
内容は安川に支配されたガルタイトの現状らしいが、今後の安川の行動次第で攻略を早めないといけないのかも知れないね。
「とにかく、後輩の子たちを自宅に送ってあげよう。 暗殺はもうないだろうから。 ザナ王女から聞かされた内容は、ひなたちゃんが戻ってきてから教えてもらうようにしよう」
「あ、それは私と伸晃くんでやります。 由奈先輩達は、暁斗先輩達を迎えに行ってあげてください」
「うん、七絵ちゃん達、お願いね。 あと瑠奈ちゃん達も手伝ってあげて」
「分かりました」
「先輩達も気を付けて」
七絵ちゃんや瑠奈ちゃん達が、後輩達と一緒に自宅へ帰っていくのを見届けてから、私達は南地区の入口へと向かって行った。
暁斗君達を迎えに行くと共に、ひなたちゃんがザナ王女聞かされた内容を教えてもらうためだ。
(今後、順調にいけばいいけどね……)
多少の不安を抱えつつ、私はエミリーさんやクレアさん達と共に暁斗君達を迎えに南地区へと進んでいく……。
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