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160 その頃の由奈達(前編)

【Side 由奈】


「ゆ、由奈先輩……!?」


「それに……、奥井さんと九条さんと宿毛さんまで……?」


「悪いけど……、今のあなた達を戦場に行かせられないよ」


 暁斗くんとひなたちゃん達が戦場に向かっている一方で、私はというと、瑠奈ちゃんと春菜ちゃんと柚子ちゃんと一緒に先行して、安川に憎悪を抱えながら戦場へと行こうとした後輩達の行く手を遮っているところだった。


「何でですか!? あの男が湊ちゃんを殺したのに……!!」


「落ち着いてよ、小高さん! 憎いのはわかるけど……!!」


「それを抱えたまま安川の元へと向かった時点で奴の思うつぼなんだよ!」


 友理奈ちゃんが代表で納得できないような感じで批判してきたけど、柚子ちゃんや瑠奈ちゃんがそれを諫めようとしていた。


「だからって、あの男をそのままにするつもりなの!?」


「何もそんな事言ってない! 安川には鴫野先輩達や暁斗先輩がやってくれてるから……!!」


「意味がないのよ! それでは……! 湊ちゃんの仇が討てない!!」


 三人娘が説得をしても、友理奈ちゃんや他の後輩達が納得していないし、説得にも応じない。

 いわば平行線状態となっていた。

 そして私は、槍を手に前に出て、後輩達にこう言い放った。


「先程の会話内容からしても、やはりあなた達を安川のクローンホムンクルスがいる戦場に向かわせるのは危険すぎる。 安川はその憎悪ですら利用する男だという事くらいはあなた達がよく知っているはずじゃないの?」


「くっ、だけど……!」


「どうしてもと言うなら、私を倒してみせなさい」


「由奈先輩……?」


 槍を構え、憎悪を抱えた後輩達に事を構える様子を見て、瑠奈ちゃんは心配そうに見ている。


「大丈夫だよ。 すぐ終わるから」


 瑠奈ちゃんに一声かけた直後、私は殺気を高めた。


「ひぅ……っ!」


「こ、これが……、由奈先輩の……!?」


 友理奈ちゃん達は、私の殺気に怯え始めている。

 他の後輩達もそうだった。

 しかし、譲れない思いがあるのだろうか、それを抑えて私に襲い掛かってきた。


「うわあぁぁぁぁぁぁっ!!」


「町中だから、やりづらいけどね……。 行くよ……!」


 町中で戦うので、やりづらい感は否めないが、エミリーさん達に事前にクリストフ国王に町中で戦うかも知れないという事を伝えておいてと伝言役を頼んでいた。

 私自身が、湊ちゃんの葬儀の時の後輩達の様子から、これは危ないと感じていたが、行動自体は予測できなかった。

 なので、せめて力ずくでも憎悪を抱えた後輩達を止めるという役割を私自身が買って出たのだ。


「スゥイング!!」


「きゃあぁぁぁっ!!」


「わあぁぁぁ!?」


 私は槍を豪快にスイングするように横に払った。

 その時の衝撃波によって、多数の後輩達は後ろに吹き飛んでいく。

 瑠奈ちゃん達は事前に結界で防御していたみたいでよかった。


「くっ、まだまだぁっ!!」


「甘いよっ!!」


 一方で衝撃波を耐えた後輩達が、剣を持って立ち向かうが、直線的で読みやすい。


「なぁっ!?」


「ええっ!?」


「うそぉ……!?」


 ガキンと言う金属音と共に、私は三人の後輩達の剣の攻撃を槍で捌いた。

 さっきも言ったが、冷静さを欠いたあまりにも直線的な攻撃なので、簡単に捌くことが出来たわけだ。

 そして、そのまま私は槍の柄で三人の腹部を当てた。


「あぐ……っ!」


「う、ぐぅぅ……!!」


 一撃が重かったのか、三人の後輩達はそのまま腹部を押さえて蹲る。

 衝撃波で吹き飛ばされたダメージが残っている後輩の女の子……、柚希ちゃんが恐怖に歪めながら私を見ていた。


「こ、これが……、由奈先輩の……、実力……!?」


「つ、強すぎる……!」


 柚希ちゃんや友理奈ちゃんを始めとした、衝撃波で吹き飛ばされた後輩達は殺気を纏った私に段々と怯え始めていた。

 多少のやり過ぎは否めないが、こうでもしないとおそらくは正気に返れないだろうと踏んでの事だ。


「由奈先輩すごいね……」


「三人同時攻撃も槍で簡単に捌いてるし……」


「私も教えてもらおうかな……?」


 一方で、三人娘からは尊敬の眼差しを向けられた。

 特に春菜ちゃん……、後で槍について教えてあげるから少し待っててね。


「由奈先輩!!」


「あー、やっぱりこうなったか」


 そうしているうちに、報告してくれた七絵ちゃんと伸晃君が駆けつけて来た。

 伸晃君は今の状態を見て、私と後輩達が戦闘をするという予測を立てていたみたい。


「ごめんね。 瑠奈ちゃんたちの説得も応じなかったから……」


「あー、いえ、こっちこそ止められずに済みません。 湊が死んじゃった影響がここまでなんて……」


「とはいえ、戦場に出すよりはマシでしょうけど」


 私が謝罪すると、七絵ちゃんも止められなかった事について謝罪された。

 伸晃君も安川の元に向かわれるよりかはマシだと言っていた。


「由奈ちゃん、遅くなった……」


「あ、足止め終わった?」


 その直後に、エミリーさんやクレアさん達がやって来た。


「まぁ、一応ね」


「そっか……。 そうそう、こっちに来る途中で向こうにいるアイリスちゃんからの報告が入ったよ」


 私はひとまずの肯定の返事をした。

 その後でエミリーさんから報告があるようだ。

 安川のクローンホムンクルスがいるであろう戦場にいるアイリスちゃんからだった。


「どんな内容の?」


「えっとね……、アイリスちゃんによると戦場ではヤスカワのクローンホムンクルスは、ユリナちゃん達が戦場に居ないことを知って動揺したみたいで、そこに付け込んだアキトくんとひなたちゃん達が殲滅させたそうだよ」


「え……? 私達が向こうに居ないことに動揺……? という事は……、本当に……!?」


 エミリーさんからの報告を後輩達も聞いていたのだろう。

 友理奈ちゃんが顔を青ざめていた。

 なお、三人娘はやはりという感じで頷いて、七絵ちゃんや伸晃君も同様だった。


「うん。 安川は、湊ちゃんの死による憎悪を利用して、あなた達を殺す算段だったんだよ」


 私が追い打ちともとれる説明で、三人娘や七絵ちゃん、伸晃君以外の後輩がみんなショックを受けていたようだった。


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