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貴方といると、お茶が不味い  作者: わらびもち


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カサンドラの後悔②

 学園に入学してから、充実した日々を過ごすことができた。王太子を除いた攻略対象は皆、すぐにわたくしに夢中になった。彼等は驚くほど単純だ。ちょっとヒロインの真似事をしただけで、簡単に靡いてしまう。

 よくよく考えればこんなの単なる綺麗ごとで、何の解決にもならない。結局、彼等はただ逃げているだけだ。自分を取り巻く環境や自分自身から。だから、ヒロインのお花畑な思考で放たれる無責任な発言に惹かれ、何の罪もないわたくしを断罪するのだ。罪悪感なく冤罪をふっかけ、王太子に断罪を唆すような人でなしになる素質を元から持っている。容姿と身分以外に何の取り柄も無いくせに、自尊心だけは無駄に高い彼等に吐き気がした。


 それはそれとして、見目のいい男達から女神のように崇拝されるのは心地よかった。

 この様子ならば、仮に王太子がヒロインに魅了されても彼等はわたくしの絶対的な味方になってくれるだろう。頭が空っぽな分、支配しやすくて助かる。


「ん……? そういえば、ゲームでもカサンドラの味方はいたわね。忘れていたわ」


 カサンドラの友人、ミスティ侯爵令嬢のレオナ。

 彼女はいついかなる時でもカサンドラの絶対的な味方で、断罪シーンでも彼女を庇って王太子に物申していたはず。


「ゲームではカサンドラの登場シーンからずっと、背景のように近くに存在していたはずなのに……おかしいわね?」


 カサンドラがレオナと何処でどうやって知り合ったかなんて分からない。

 そんなのゲームでは触れていなかった。

 まあ、ゲームでは友人だったのだから、この世界でもきっとカサンドラとレオナは友人関係にあるのだろう。わたくしはそう、疑いもしなかった。

 

 だとしたら、今からでも親交を深めておかないと。将来への保険として味方は増やしておいた方がいいのだから。

 

「確か彼女はクリスの婚約者だったわよね……? だったら、クリスに頼めば会えるかしら……」


 早速クリスに頼むと、二つ返事で了承してくれた。ちょうど、今度の休みにレオナと観劇に出かける予定なのだという。それにわたくしも一緒に行けばいいと、彼はさも当然のように言った。


「え……でも、婚約者との逢瀬なのでしょう? わたくしが行ったらお邪魔じゃないかしら……?」


 デートに他人がついていくなんて駄目じゃないかしら?

 でも、クリスは満面の笑みでこう告げた。


「貴女とレオナは友人関係にあるのでしょう? なら、何の問題もありませんよ」


 迷いのない顔でそう言われると、それが当然のように思えてしまった。

 そうよね……わたくしとレオナは『友人』ですもの。友人ならば、逢瀬に同伴しても何の問題もないはずよね……。


 わたくしは戸惑いを捨て、彼の提案を受け取ることにした。

*

 クリスに協力してもらったことで、めでたくレオナと会えたのだが……彼女の反応は想像と全く違ったていた。ゲームでは、いかにも親友ですと言わんばかりの態度でカサンドラの傍にいたレオナ。だが、実際に会った彼女は、怪訝そうな顔をこちらに向けている。


 まるで、わたくしがここにいることがおかしいかのように……。


 困ったわたくしはクリスに視線を向けたが、彼はレオナの反応など全く気にしていない様子だった。それどころか、クリスは「もう始まるから急ごう」とわたくしの手を引き、そのまま劇場内へと入っていった。


 婚約者ではなく、わたくしの手を取るの? レオナを放置していいの?

 

 そんな疑問を抱いたものの、いざ劇が始まると夢中になってしまい、いつの間にかレオナのことなど頭から抜け落ちていた。 ふと気づくと彼女の姿はなく、いつ席を立ったのかさえ分からない。結局、彼女とろくに会話もできなかった。

 残念がるわたくしに、クリスは「じゃあ今度は我が家のお茶会に招待しますよ。それなら沢山話せるでしょう」と提案してくれた。


 そうね。お茶会だったらきっと沢山話せるし、親交を深められるわよね。

 そう期待したのに、茶会の席でもろくに言葉を交わせない。むしろ、彼女に避けられているような気がする。レオナはカサンドラの友人のはずなのに……どうしてだろう。

 

 彼女のあの……おかしな者を見るような目に、どうしようもなく不安がこみ上げてくる。

 気晴らしに街へ買い物に出かけたところ、立ち寄ったブティックで、なんと『ヒロイン』を見つけた。

 視界に飛び込んできた鮮やかなピンクブロンドの髪。それを見た途端、わたくしは居ても立ってもいられなくなり、彼女へと詰め寄っていた。


 思えば、この辺りから人生の歯車が狂い始めたような気がする。

 あれよあれよという間にわたくしは王太子から婚約破棄され、家からも追い出されてしまった。

 味方をしてくれるはずのレオナも全然役に立たない。それどころか、ちゃっかりと王太子の婚約者の座におさまっている。


 なんで? なんで結局こうなるの?


 わたくしは頑張ったのに……!

 国外追放されないために努力してきたのに……ゲームの強制力には勝てないの!?

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