第27話 私は人殺しになるんだ
光機の剣。
それは、彼女自身のスキルでありながら、わずか15歳のアカリにとっては持て余すほどの強力な剣であった。
光り輝く刀身は、あらゆるものを斬り刻む。
どんなに硬いモンスターの皮膚であっても、一瞬で豆腐のように斬ってきた。
アカリのレーティングは1746であるが、光機の剣が持つ潜在能力はそんなものではない。
本来は、レーティング2000クラスの強さを持つスキルなのである。
それほどの力を持っている世界的にもトップクラスの能力なのだ。
まだ訓練も足りず、身体もできあがっていないアカリだからこそ、レーティング1746に留まっているのだった。
この先適切な指導者の下で、数年かけて探索者としての修行をすれば、レーティング2222を誇るシーコを上回るほどの使い手になってもおかしくないほどだ。
アカリ自身はまだそこまでの技量を持っていないにしても、光機の剣自体は、この世に存在するありとあらゆるものを斬れるほどの鋭く強靭な剣であった。
アカリは光機の剣の強さを信じていた。
そして、実際信じるに足るほどの強さを誇っているのである。
今までだって数々のモンスターどもを斬り伏せてきたのだ。
その剣を、アカリは目の前の女性に向けて振り下ろした。
脳の奥がビリビリとしびれる。
これが、初めての殺人。
私は人殺しになるんだ。
あの母親――あのクソ浮気女は、殺人者の母となる。
ざまあみろざまあみろざまあみろ。
私は大人たちの言う通りになんか、絶対にならない。
人生をかけて、命をかけて、他人の命まで使ってでも、私は私の意志を押し通す、そんな女だということをわからせてやる!
アカリはそんな強い思いで剣を振り下ろした。
人の肉を裂く感触って、どんなのだろう――。
恐ろしさがアカリを襲う。
人を殺す。
まさか人間として生まれてきてそんなことをしでかす人生になるとは。
だけど、もう止められない。
残像を残しながら青く光り輝く剣が命を斬り裂こうとして――。
そして、目の前のホウキ女――紅亜が、かるーーーーーくホウキを振った。
ポキン、という冗談みたいに軽い音を出して光機の剣が折れた。
折れた刃先はくるくると回転して天井に突き刺さる。
いや、もう一本ある、今のはなにかの間違い――。
「ちょっと待ってよ」
紅亜がそう言いながら、アカリが左手に握った光の剣をホウキでポン、と叩く。
するともう一本の光機の剣は柄からあっさり折れて、地面につきささった。
「は? はい? え? なにこれ」
困惑するアカリを前に紅亜はむむうと口をへの字にすると、
「もー、ダメだよそんなの振り回しちゃ!」
と言って軽くアカリの頭をホウキではたこうとして――。
「スト―――――――ップ!! 死んじゃう死んじゃう! ってか脳みそひき肉になったらどうすんの!」
澄見歌が紅亜を羽交い絞めにした。
とたんに紅亜の表情がとろけて、
「ふひ~~……。あのー、澄見歌ちゃん、胸が……当たってます」
とか言っている。
……なんなの……。
アカリは茫然としてその場にへたり込んだ。
「ぷはっはっはっはっは!」
向こうの方で、ギャルの女が笑っているのが見えた。
あとその隣で馬(?)の腹の下に潜りこんでいる銀髪はマジでなんなの。
〈wwwwwwww〉
〈ホウキはやはり最強〉
〈あのライトセーバーみたいなのよりホウキのが強いんだな〉
〈ホウキ女ってどこまで強いんだ〉
〈私ホウキさんのファンになりました〉
〈シーコ回復してるな、良かった〉




