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第25話 高校生にこんな百合キス見せちゃダメだと思うの

 突然のことに、湯歌(ゆか)はなにが起こったのかわからなかった。

 

「私の息、吸って!」


 とか何とか言いながら、紅亜(くれあ)が唇を合わせてきたのだ。

 そして紅亜(くれあ)が「フーッ!」と息を吹き込んでくる。

 なにこれわっかんない!

 でも。

 この極限状況。

 あの紅亜(くれあ)さんがそうしろっていうなら。

 いうとおりにするしかなかった。


 湯歌(ゆか)はぎゅっと目をつぶり、送り込まれてくる空気を、思い切り吸った。

 それは湯歌(ゆか)の小さな胸に収まった二つの肺に取り込まれる。

 純度100%の魔力。

 いや、それ以上。

 湯歌(ゆか)は、いや紅亜(くれあ)だって気づいていなかったのだが、紅亜(くれあ)の思いは、その呼気に紅亜(くれあ)自身が持つ魔力まで含ませていた。


 湯歌(ゆか)は、紅亜(くれあ)の甘い呼気を吸って吸って吸う。


 ぷはっ、と口を離した紅亜(くれあ)はもう一度大きく息を吸い、また強引に湯歌(ゆか)の唇にキスをしてきた。


〈なんだこれ!?〉

〈突然の百合キス!?〉

〈なにしてるんだ?〉

〈意味わからんぞ?〉

〈マウストゥーマウスにしても相手が違うんじゃないか〉


「フーーーッ!」


 紅亜(くれあ)の吐息を、


「スーーーッ!」


 思い切り吸い込む湯歌(ゆか)

 そして異変はすぐにやってきた。

 まず、湯歌(ゆか)の全身に魔力がいきわたり、なんだかふわふわとしてくる。

 さらに脳内は冴えわたり、視力すらもよくなったのか、視界の解像度があがる。

 今やシーコの傷口の、血管一本一本、神経一本一本の切断面まではっきりくっきり見える。


 ああ、これは紅亜(くれあ)さんが魔力を私にくれたんだ、とすぐに理解した。

 そして、今考えるべきはただ一つ、シーコの救命だけだった。


 湯歌(ゆか)は叫んだ。


奇跡の外科手術ミラクル・オペレーション!」


 湯歌(ゆか)の背中から、オーラで作り上げられた無数の腕が生えてくる。


「お姉ちゃんどいて! 今から治す!」


〈おおおおおキターーーーー!〉

〈すげえオーラの量! とんでもない魔力だぞ〉

〈すげーーーー〉

〈さっきの百合キスは魔力の移転か?〉

〈そうかも! さっきよりもイモスミのオーラ量が半端ない!〉

〈ユニコーン治した時の三倍はあるぞ〉

〈ホウキ女なんでもできるじゃん〉

〈やばい、ホウキ女どうなってんだ〉

〈あとで解説頼むぞ〉

〈オペが始まった!〉

〈ぎり間に合うか!?〉

〈ヤバい、左足の接合と右手首の接合を同時にやってる!〉

〈え、その輸血バッグどっからでてきたの?〉

〈まさか全部これオーラで作り上げてるのか?〉


 超スピードでオペが進む。

 切り落とされた手首と足がとんでもない速度と正確さで縫い合わされた。


 オペをしながら湯歌(ゆか)澄見歌(すみか)に顔を向けた。


「お姉ちゃん! めいっぱいシーコさんに治癒魔法をかけて! かけ続けて!」

「わかった、ヒーリング!」


 そしてついに。


「ゲハッ、ゴホッ……フー、フー、フー、……」


 シーコの自発呼吸が復活する。

 顔色もずいぶんよくなってきた。


 だが、これだけの大手術である。

 湯歌(ゆか)の魔力もすぐに尽き始めた。

 オーラでできた腕たちがだんだんと薄くなっていく。

 

「も、もう限界……でもまだ……!」


 皮膚の縫合は終わっていない。

 なんとかやり切ろうとするのだが、気力だけでは現実を超えられない。

 湯歌(ゆか)紅亜(くれあ)を見て言った。


「も、もう一回……」


 ええと、あの行為ってなんて呼ぶものだろう?

 人工呼吸……って感じでもないし……ええとええと、時間がない、伝わればいい!


紅亜(くれあ)さん、もう一回チューしてください!」

「うん!」


 紅亜(くれあ)のふっくらとした唇が近づいてくる。

 体力も魔力も枯渇したぼうっとした頭で、湯歌(ゆか)は思った。


 ――おいしいやつ、またくる!


 そしてふたたびのマウストゥーマウス。


 シーコの命自体は救えた状態なので、今度はその唇を堪能する余裕があった。

 堪能?

 あれ、こんなこと考えちゃうなんてやっぱり余裕なくてパニックになってるよ私。


 息を吹き込んでもらってから、意味もないのにチュッと音を立てて唇を離す。


「よし、元気復活! もう少し行くよ! お姉ちゃん、もっと治癒魔法!」

「うん! でも……私ももう……魔力が限界……」


 チラッと紅亜(くれあ)を見る澄見歌(すみか)

 魔力を消費しているからか、それとも別の理由からなのか、そのほっぺたは真っ赤だった。

 紅亜(くれあ)は意味が分からないらしく首を傾げていたが、「ああ!」と言ってポンと手をたたいた。


「そういうこと!? でも、澄見歌(すみか)ちゃん相手だとなんか緊張しちゃう……」

「なんですかそれ、私相手だと緊張しないってことですか」


 ムカッとして湯歌(ゆか)がそう言ったとき。


「いいからウチを早く治療してくれ……」


 荒い息遣いをしながらシーコがそう言った。


〈意識戻った!〉

〈やったああああああ〉

〈よくやった!〉

〈完璧!〉

〈すげえ、三人のコンビネーションでシーコを救った!〉

〈【朗報】スーパーボランティア復活〉

〈ところで女子高生復活してるんだけど〉

〈高校生にこんな百合キス見せちゃダメだと思うの〉


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