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9/13

第9話「見つからないタネは、なかったことになりますか?」


【公演記録 No.009】


演目:消失奇術

会場:ぱんでむ・劇場区画 第七舞台

観客:0名

出演者:冥理

立会人:真意


使用トリック:VanishingAct / MetadataVision


本人の認識:検証


本物だったか:


__________


備考:


本公演では、観客を入れていない。


追記:


観測も行っていない。


追加追記:


それでも、消えた。


---


「今日は」


冥理ちゃんが。


舞台中央で。


胸を張った。


「誰も見ません!」


真意ちゃんが。


客席から。


即座に言う。


「私はいるでしょう」


「見ません!」


「私は?」


「目隠し!」


「何であなたが決めるのよ」


「検証です!」


第七舞台。


客席。


空。


白い椅子。


なし。


放送設備。


停止。


鏡。


撤去済み。


反射面。


覆い。


記録装置。


なし。


窓。


なし。


出入口。


一つ。


その扉にも。


真意ちゃんが。


封印紙を。


三重。


貼った。


今回。


目的。


一つ。


観客の存在しない状態で、冥理の奇術は成立するか。


第5話。


見ていない冥理。


第6話。


観客が。


冥理の因果奇術を。


学習。


第7話。


観客が。


問題を出す。


第8話。


人物間の認識まで。


学習し始めた。


なら。


逆。


観客。


いない。


観測。


ない。


その状態では。


何が起こる。


真意ちゃんが。


黒い布を。


自分の目に巻く。


「これでいい?」


「完璧です!」


「あなたは?」


「私は」


冥理ちゃん。


自分にも。


布。


巻く。


「もちろん見ません!」


「……」


「何です?」


「二人とも見ないのに、どうやって結果を確認するの」


「後で見ればいいんですよ」


真意ちゃん。


「雑」


「手品ですから!」


「検証よ」


「検証手品です!」


「新ジャンルを作るな」


---


舞台。


中央。


箱。


一つ。


赤。


普通の木箱。


中。


鳩。


一羽。


真意ちゃんが。


事前に。


虫眼鏡で。


確認済み。


【鳩】


【生存】


【箱内部】


【世界線座標:固定】


冥理ちゃんの。


因果の奇術は。


発動前。


なし。


観客タグ。


なし。


「では」


冥理ちゃんが。


目隠し。


したまま。


ステッキを。


箱へ。


向ける。


「箱の中の鳩を」


一拍。


「消します!」


真意ちゃん。


「開始」


冥理ちゃん。


指。


鳴らす。


ぱちん。


沈黙。


何も。


聞こえない。


「……」


冥理ちゃん。


「どうです?」


真意ちゃん。


「見えてない」


「そうでした」


五秒。


十秒。


真意ちゃん。


「確認する?」


冥理ちゃん。


「まだ」


「何で?」


「余韻です」


「いらない」


「大事ですよ?」


三十秒。


真意ちゃん。


布。


外す。


舞台。


箱。


ある。


冥理ちゃん。


いる。


「箱はある」


「鳩は?」


真意ちゃんが。


箱。


開ける。


鳩。


いる。


ぽっぽ。


「失敗」


「ええっ」


冥理ちゃん。


布。


外す。


鳩。


見る。


「本当にいますね」


「普通にいる」


「元気そう」


「元気ね」


鳩。


冥理ちゃんを。


見る。


冥理ちゃん。


鳩を。


見る。


「……」


鳩。


首。


傾げる。


冥理ちゃんも。


傾げる。


真意ちゃん。


「張り合わないで」


---


二回目。


同じ。


消えない。


三回目。


消えない。


四回目。


鳩。


二羽。


「増やした!」


真意ちゃん。


「見てませんよ!?」


冥理ちゃん。


「あなたの能力でしょう!」


「違います!」


「二羽になってる!」


「惜しい!」


「何が!?」


五回目。


箱。


鳩。


そのまま。


六回目。


鳩。


色。


少し。


青い。


「着色するな!」


「やってません!」


「あなた以外に誰がいるの!」


冥理ちゃん。


「それを確認する実験では?」


真意ちゃん。


止まる。


「……」


客席。


空。


観客タグ。


なし。


白い椅子。


なし。


拍手。


なし。


異常。


鳩。


青い。


「あなたの能力は」


真意ちゃん。


虫眼鏡。


冥理ちゃん。


【因果の奇術】


発動履歴。


ある。


「動いてる」


「でしょう?」


「でも」


箱。


青い鳩。


「思った結果になってない」


冥理ちゃん。


腕。


組む。


「第五話と同じですね」


「見ていない時」


「はい」


「あなたの奇術は」


真意ちゃん。


「制御が落ちる」


冥理ちゃん。


少し。


考える。


「では」


「何」


「私の手品は」


客席。


空席。


見る。


「見られることで」


少し。


笑う。


「完成していたんでしょうか」


真意ちゃん。


答えない。


---


七回目。


条件。


変える。


真意ちゃんだけ。


見る。


冥理ちゃん。


見ない。


結果。


鳩。


消える。


正常。


八回目。


冥理ちゃん。


見る。


真意ちゃん。


見ない。


成功。


九回目。


二人。


見る。


成功。


十回目。


誰も見ない。


失敗。


真意ちゃん。


ノート。


書く。


観測者:1以上


成功率。


高。


観測者:0


意図した結果。


成立しにくい。


「……」


冥理ちゃんが。


横から。


覗く。


「なるほど」


「見ないで」


「私の結果ですよ?」


「まだ途中」


「はい」


真意ちゃん。


書く。


ただし。


第五話では。


冥理ちゃんが。


見ていなくても。


真意ちゃん。


夢幻ちゃん。


そして。


観客。


見ていた。


つまり。


条件は。


冥理本人が見ること


ではない。


誰か。


見ていること。


「観測が」


真意ちゃん。


呟く。


「固定してる」


冥理ちゃん。


「何を?」


「あなたの手品の結果」


真意ちゃん。


箱。


見る。


「誰も見てない時」


「はい」


「あなたが『鳩を消す』って因果を書き換えても」


鳩。


ぽっぽ。


「結果が固定されない」


冥理ちゃん。


「なるほど」


「鳩が増えたり」


「はい」


「青くなったり」


「かわいいですよ?」


「そこじゃない」


「はい」


「つまり」


真意ちゃん。


ペン。


止める。


「あなたは世界を書き換えてる」


「はい」


「でも」


冥理ちゃん。


見る。


「書き換えた世界を」


ゆっくり。


「誰かが見て」


「はい」


「初めて」


「正解になる」


沈黙。


冥理ちゃん。


少し。


笑う。


「奇術師らしいですね」


真意ちゃん。


「どうして」


「手品は」


冥理ちゃん。


帽子。


押さえる。


「お客様が見て」


一拍。


「初めて手品ですから」


---


真意ちゃん。


嫌な。


違和感。


「……」


冥理ちゃん。


「真意ちゃん?」


「今の」


「はい?」


「前にも言った」


「何を?」


「見ている人がいるから手品だって」


第3話。


冥理ちゃん。


言っていた。


その時は。


ただの。


冥理ちゃんらしい。


価値観。


そう思った。


でも。


もし。


それが。


比喩では。


なかったら。


真意ちゃん。


虫眼鏡。


冥理ちゃん。


【冥理】


【奇術師】


【因果の奇術】


さらに。


深く。


【発動条件:____】


揺れる。


以前。


見えなかった欄。


今回。


文字。


一瞬。


出る。


【観測】


真意ちゃん。


息。


止まる。


その直後。


ノイズ。


欄。


消える。


「……」


冥理ちゃん。


「何か見えました?」


「観測」


「はい?」


「あなたの能力」


真意ちゃん。


「発動条件に」


冥理ちゃん。


笑顔。


止まる。


「観測って出た」


沈黙。


鳩。


ぽっぽ。


妙に。


大きく。


聞こえる。


「……」


冥理ちゃん。


「それ」


少し。


声。


低い。


「私が観測するんです?」


「分からない」


「真意ちゃんが?」


「分からない」


「誰かが?」


「そこまで読めなかった」


冥理ちゃん。


舞台。


見る。


客席。


空。


「つまり」


「推測よ」


真意ちゃん。


先に。


釘。


刺す。


「確定じゃない」


「はい」


「観客がいないと使えない能力だとも断定できない」


「はい」


「でも」


真意ちゃん。


ノート。


見る。


十回。


結果。


「少なくとも」


「はい」


「誰も見ていない時と」


「はい」


「誰かが見ている時で」


「結果が違う」


冥理ちゃん。


「……」


「再現性がある」


「……」


「これまで」


真意ちゃん。


顔。


上げる。


「観客があなたの能力を学習していると思ってた」


冥理ちゃん。


「そうですね」


「でも」


真意ちゃん。


言葉。


止まる。


そこから先。


言いたくない。


冥理ちゃん。


待つ。


真意ちゃん。


続ける。


「逆かもしれない」


「逆?」


「あなたの能力が」


客席。


空席。


「最初から」


喉。


少し。


乾く。


「観客を必要としていた」


---


冥理ちゃん。


しばらく。


何も言わなかった。


それから。


「真意ちゃん」


「何」


「十一回目」


「まだやるの?」


「条件を変えたいです」


「何」


冥理ちゃん。


舞台。


中央。


立つ。


「誰も」


客席。


見る。


「見ない」


「それはさっきやった」


「違います」


冥理ちゃん。


帽子。


外す。


「私も」


置く。


「真意ちゃんも」


ステッキ。


置く。


「見ない」


箱。


指す。


「そして」


一拍。


「後からも見ない」


真意ちゃん。


目。


細める。


「どういう意味?」


「結果を」


冥理ちゃん。


「確認しません」


「……」


「消えたかどうか」


「分からないまま?」


「はい」


「永久に?」


「はい」


真意ちゃん。


箱。


見る。


鳩。


一羽。


「それじゃ」


「検証できません」


「でしょう?」


冥理ちゃん。


笑う。


「だからです」


「何が?」


「もし」


箱。


「誰にも観測されない奇術に」


冥理ちゃん。


「結果が必要ないなら」


真意ちゃん。


止まる。


「……」


「結果が」


「決まらない?」


「かもしれません」


真意ちゃん。


すぐ。


否定しない。


考える。


観測。


結果固定。


正解。


観客。


これまでの。


一連。


それなら。


条件として。


意味がある。


「やる」


真意ちゃん。


言う。


「ただし」


「はい」


「箱は封鎖する」


「はい」


「絶対開けない」


「はい」


「虫眼鏡でも見ない」


「はい」


「他のクルーにも伝える」


「はい」


「いつまで?」


冥理ちゃん。


笑う。


「永遠」


真意ちゃん。


「本気?」


「奇術師ですから」


「答えになってない」


「今回は」


冥理ちゃん。


目隠し。


巻く。


「タネを」


少し。


笑う。


「誰にも見つけさせません」


---


十一回目。


二人。


目隠し。


箱。


鳩。


中。


冥理ちゃん。


「消します」


真意ちゃん。


「開始」


指。


鳴る。


ぱちん。


何も。


起きた音。


なし。


二人。


目隠し。


外さない。


三十秒。


一分。


冥理ちゃん。


「終わりです」


真意ちゃん。


「そのまま」


二人。


後ろ。


向く。


真意ちゃん。


扉。


手探り。


開ける。


出る。


冥理ちゃん。


続く。


扉。


閉じる。


封印。


扉越し。


真意ちゃん。


ようやく。


目隠し。


外す。


冥理ちゃんも。


外す。


二人。


箱。


見ていない。


鳩。


見ていない。


結果。


知らない。


真意ちゃん。


封印紙。


貼る。


開封禁止


その下。


内部観測禁止


さらに。


次元ルーペ使用禁止


冥理ちゃん。


「徹底してますね」


「当たり前」


「私も?」


「絶対駄目」


「はい」


「覗いたら」


「どうなります?」


真意ちゃん。


「私が怒る」


冥理ちゃん。


「怖い!」


---


その日の。


午後。


何も。


起きない。


夕方。


何も。


夜。


何も。


観客。


出ない。


白い椅子。


出ない。


問題。


出ない。


拍手。


ない。


翌朝。


真意ちゃん。


第七舞台。


前。


封印。


intact.


「……」


冥理ちゃん。


隣。


「無事ですね」


「そうね」


「開けます?」


「開けない」


「はい」


二日目。


何も。


三日目。


何も。


四日目。


第五話以降。


初めて。


異常が。


止まった。


真意ちゃん。


調査室。


壁。


新しい仮説。


書く。


観客は、奇術の結果を固定するために発生した?


横。


冥理の能力が観客を生成した?


その下。


あるいは、観客が存在したから冥理の能力が成立した?


矢印。


両方。


「……」


因果。


循環。


どちらが。


先。


分からない。


鶏。


卵。


奇術師。


観客。


冥理。


手品。


真意ちゃん。


第7話。


冥理。


最初の手品。


まだ。


決まっていない。


もし。


最初の手品より。


先に。


観客が。


いたら?


「……」


真意ちゃん。


その仮説を。


書こうと。


する。


やめる。


問題に。


なる。


選択肢に。


なる。


今は。


決めない。


---


五日目。


朝。


冥理ちゃん。


調査室。


来る。


「真意ちゃん」


「何」


「ちょっと」


「手品なら駄目」


「してません」


「じゃあ何」


冥理ちゃん。


困った。


顔。


「昨日から」


「うん」


「帽子の中が」


真意ちゃん。


構える。


「何」


「少し」


冥理ちゃん。


帽子。


持ち上げる。


「おかしいです」


「手を入れないで」


「はい」


真意ちゃん。


帽子。


見る。


いつもの。


冥理ちゃんの帽子。


本人にとっては。


小道具。


同時に。


空間直通路として。


機能することもある。


ただし今回は。


使っていない。


真意ちゃん。


虫眼鏡。


【帽子】


【冥理所有】


【内部空間】


さらに。


「……」


タグ。


続く。


【接続先:第七舞台】


真意ちゃん。


止まる。


「冥理ちゃん」


「はい」


「いつから?」


「昨日」


「何が起きた?」


「何かを出そうとして」


「出した?」


「出してません」


「何を?」


「ハンカチ」


「それで?」


「帽子に」


冥理ちゃん。


少し。


気まずそう。


「鳩の羽が」


真意ちゃん。


固まる。


「色は?」


「青です」


「……」


第七舞台。


十一回目。


誰にも。


見られなかった。


鳩。


それ以前。


六回目。


青くなった鳩。


箱。


封鎖中。


一度も。


開けていない。


「帽子」


真意ちゃん。


「置いて」


冥理ちゃん。


机。


置く。


「触らないで」


「はい」


真意ちゃん。


虫眼鏡。


さらに。


深く。


【接続先:第七舞台】


【成立時刻:十一回目実施時】


「……」


真意ちゃん。


「結果」


「はい?」


「決まってた」


「何に?」


「消失」


ではない。


鳩は。


消えず。


冥理ちゃんの。


帽子へ。


接続された。


でも。


誰も。


見ていなかった。


誰も。


確認しなかった。


なのに。


結果。


存在する。


「仮説」


真意ちゃん。


「外れた?」


冥理ちゃん。


「観測者なしでも結果は決まる?」


「そう見える」


真意ちゃん。


ノート。


手。


伸ばす。


止まる。


違和感。


「……待って」


「何です?」


十一回目。


二人。


見ていない。


後からも。


確認していない。


箱。


まだ。


封鎖。


では。


青い羽。


誰が。


見た?


冥理ちゃん。


昨日。


帽子から。


何かを出そうとして。


見た。


つまり。


最初の観測。


四日後。


結果。


その時点で。


初めて。


決まった可能性。


「冥理ちゃん」


「はい」


「昨日」


「はい」


「羽を見る前」


「はい」


「帽子の中が第七舞台に繋がってるって知ってた?」


「いいえ」


「予想した?」


「全く」


「鳩?」


「考えてません」


真意ちゃん。


「……」


なら。


観測した瞬間。


十一回目の結果が。


四日遅れで。


確定した。


「結果が」


真意ちゃん。


呟く。


「待ってた」


冥理ちゃん。


笑わない。


「何を?」


「観測されるのを」


沈黙。


真意ちゃん。


帽子。


見る。


青い羽。


一枚。


内部。


「四日間」


「はい」


「結果がなかったんじゃない」


「はい」


「結果が」


真意ちゃん。


「決まってなかった」


---


第七舞台。


封印。


まだ。


開けない。


真意ちゃん。


冥理ちゃん。


扉。


前。


帽子。


透明ケース。


入れる。


誰も。


触らない。


「箱」


真意ちゃん。


見る。


「今」


「はい」


「中を見たら」


冥理ちゃん。


「結果が決まる」


「可能性が高い」


「では」


「開けない」


「はい」


真意ちゃん。


「問題は」


帽子。


見る。


「一部だけ」


「観測されましたね」


「青い羽」


「はい」


「だから」


「鳩が青い状態?」


「それも断定できない」


真意ちゃん。


「羽だけが青い鳩かもしれない」


「青い鳩の羽かもしれない」


「鳩じゃない何かの羽かもしれない」


「そもそも」


冥理ちゃん。


「帽子から出た羽が、箱の結果と同一とは」


真意ちゃん。


「まだ確定してない」


二人。


黙る。


冥理ちゃん。


少し。


笑う。


「真意ちゃん」


「何」


「これ」


「うん」


「手品ですよね」


真意ちゃん。


嫌な顔。


「何で嬉しそうなの」


「だって」


冥理ちゃん。


封印された扉。


見る。


「箱の中を」


手。


広げる。


「誰も知らない」


「……」


「鳩がいるかもしれない」


「うん」


「いないかもしれない」


「うん」


「青いかもしれない」


「うん」


「帽子の中に移ったかもしれない」


「うん」


「全部」


冥理ちゃん。


笑う。


「見れば分かる」


真意ちゃん。


「だから見ない」


「はい」


冥理ちゃん。


嬉しそう。


「最高のタネですね」


---


その時。


パチン。


拍手。


一回。


二人。


凍る。


廊下。


誰もいない。


白い椅子。


なし。


真意ちゃん。


虫眼鏡。


周囲。


【廊下】


【第七舞台外周】


【冥理】


【真意】


観客。


なし。


「……」


冥理ちゃん。


「戻ってきましたね」


真意ちゃん。


「違う」


「何が?」


「観客タグがない」


「では」


また。


パチン。


拍手。


一回。


真意ちゃん。


音。


方向。


探す。


第七舞台。


中ではない。


廊下。


でもない。


「どこ」


三回目。


パチン。


今度。


近い。


真意ちゃん。


虫眼鏡。


冥理ちゃん。


冥理ちゃんも。


周囲。


見る。


そして。


二人。


同時に。


帽子。


透明ケース。


見る。


中。


パチン。


小さな。


音。


ケース。


振動。


真意ちゃん。


「……」


帽子の。


内部。


鳩の羽。


一枚。


その横。


白い。


小さな。


何か。


見える。


真意ちゃん。


虫眼鏡。


ケース越し。


【観客】


「……」


冥理ちゃん。


顔。


止まる。


真意ちゃん。


「帽子の中」


「はい」


「いる」


「誰が?」


「観客」


冥理ちゃん。


「……」


第七舞台。


封鎖。


誰にも。


観測させなかった。


結果。


観測されるまで。


未確定。


その未確定の場所へ。


どこからか。


観客。


入った。


「真意ちゃん」


冥理ちゃん。


声。


静か。


「私たち」


「何」


「十一回目」


箱。


「誰にも見せなかったつもりでしたよね」


真意ちゃん。


答えない。


冥理ちゃん。


続ける。


「でも」


帽子。


見る。


「一人だけ」


「……」


「ずっと」


笑顔。


消える。


「中から見ていたんじゃないですか?」


---


真意ちゃん。


虫眼鏡。


帽子。


深く。


【観客】


さらに。


【観測対象:】


文字。


揺れる。


【奇術】


違う。


さらに。


【結果】


さらに。


【未確定結果】


「……」


真意ちゃん。


息。


止める。


「観客が」


「はい」


「結果を見てるんじゃない」


冥理ちゃん。


「では?」


真意ちゃん。


ゆっくり。


言う。


「結果が決まる前を」


虫眼鏡。


文字。


【観測対象:未確定結果】


「見てる」


冥理ちゃん。


黙る。


それは。


今までと。


意味が違う。


観客が。


奇術を。


見ている。


そう思っていた。


冥理を。


見ている。


そう思っていた。


真意を。


見ている。


そう思っていた。


でも。


もし。


本当に。


見たいものが。


決まる前のもの


なら。


奇術。


だけではない。


人物。


役割。


過去。


関係。


全部。


観客は。


未確定なものを。


見ている。


そして。


見たことで。


それが。


確定する。


真意ちゃん。


「……」


第8話。


冥理が。


真意をどう認識するか。


観客は。


学習できなかった。


理由。


客観的条件が。


なかったから?


違う。


「冥理ちゃん」


「はい」


「昨日」


「はい」


「私を真意ちゃんと呼ぶ条件を聞かれて」


冥理ちゃん。


「答えました」


「あなた」


真意ちゃん。


「条件を決めなかった」


「はい」


「だから」


真意ちゃん。


帽子の。


観客。


見る。


「観客は」


声。


小さく。


「確定できなかった」


冥理ちゃんの。


目。


少し。


見開く。


「……」


「学習失敗じゃない」


真意ちゃん。


「確定失敗だった」


---


拍手。


なし。


観客。


帽子の。


内部。


じっと。


何かを。


見ている。


真意ちゃん。


「見ちゃ駄目」


「誰が?」


「この観客」


「どうやって」


「分からない」


「追い出します?」


真意ちゃん。


止まる。


観客。


消す。


排除。


それ自体。


冥理ちゃんの。


因果奇術なら。


可能かもしれない。


だが。


それを。


見られる。


学習。


される。


そして。


もっと。


悪い。


観客は。


未確定なものを。


確定する。


なら。


「消す」という。


結果を。


こちらが提示した瞬間。


それが。


正解になるかもしれない。


「触らない」


真意ちゃん。


言う。


「何もしない」


冥理ちゃん。


「第7話と同じ?」


「違う」


真意ちゃん。


帽子。


見る。


「今回は」


一拍。


「何も決めない」


冥理ちゃん。


少し。


笑う。


「得意ですよ」


真意ちゃん。


「あなたは何でも手品にしすぎ」


「職業病です」


「外商でしょう」


「副業です!」


「どっちが?」


「企業秘密です!」


真意ちゃん。


少し。


笑う。


すぐ。


真顔。


「行く」


「どこへ?」


「第七舞台」


「開けるんです?」


「開けない」


「では?」


真意ちゃん。


封印された。


扉。


見る。


「箱を」


「はい」


「永久に」


一拍。


「未確定のまま保存する」


冥理ちゃん。


目。


瞬く。


「観客が」


真意ちゃん。


「未確定を見たがるなら」


「はい」


「見せておく」


「……」


冥理ちゃん。


「囮?」


「そう」


「箱を?」


「そう」


「永遠に?」


「そう」


冥理ちゃん。


嬉しそう。


「素敵ですね」


真意ちゃん。


「何が」


「世界一」


封印。


された。


舞台。


「開けてはいけない」


帽子。


押さえる。


「マジックボックスです」


---


箱。


開けない。


帽子。


封印。


観客。


追い出さない。


何もしない。


その日の。


夜。


拍手。


止まる。


翌日。


帽子。


観客タグ。


消える。


第七舞台。


変化。


なし。


三日。


一週間。


異常。


減る。


観客。


問題。


出さない。


白い椅子。


出ない。


真意ちゃん。


記録。


【公演記録 No.009】


結論:


観客は。


冥理の奇術そのものを。


目的としているとは限らない。


現在の仮説:


観客は。


未確定状態を観測し。


その結果として。


何らかの確定を生じさせる。


逆に。


確定条件を与えない状態では。


観測結果を成立させにくい。


ただし。


観客が。


「確定させている」のか。


「確定する瞬間を見ているだけ」なのか。


「確定するまで待っている」のか。


判別不能。


さらに。


重大事項。


第七舞台内部の箱。


開封禁止。


箱内部の状態は。


今後。


確認しない。


確認した瞬間。


公演 No.009の結果が。


成立する可能性がある。


真意ちゃん。


その下。


書く。


未観測状態の保全を優先。


ペン。


置く。


少し。


考える。


そして。


最後。


箱の中身を知りたいという理由だけで開けないこと。


二重線。


引く。


その横。


赤字。


特に冥理ちゃん。


---


翌朝。


第七舞台。


扉。


新しい紙。


一枚。


真意ちゃん。


見る。


自分の。


字ではない。


開封禁止


その下。


内部観測禁止


さらに。


次元ルーペ使用禁止


ここまでは。


真意ちゃんが。


貼った内容と。


同じ。


だが。


四行目。


追加。


観客による観測禁止


真意ちゃん。


止まる。


「……」


冥理ちゃん。


横から。


覗く。


「増えてますね」


「あなた?」


「違います」


「触った?」


「触ってません」


真意ちゃん。


虫眼鏡。


紙。


【掲示物】


【設置者:____】


空欄。


「また」


冥理ちゃん。


「観客?」


真意ちゃん。


首。


振る。


「違う」


「では?」


紙。


さらに。


深く。


【対象:観客】


「……」


真意ちゃん。


「これは」


声。


低く。


「観客に向けた警告」


冥理ちゃん。


笑顔。


止まる。


「誰が?」


答え。


ない。


二人。


封印された。


第七舞台。


見る。


この数話。


ずっと。


観客。


一つ。


だけだと。


思っていた。


観客が。


複数に。


増えたことは。


あった。


でも。


それも。


同じ種類。


同じ側。


だと。


勝手に。


思っていた。


真意ちゃん。


紙。


見る。


観客による観測禁止


つまり。


少なくとも。


これを。


書いた何かは。


観客を外側から認識している。


冥理ちゃん。


小さく。


言う。


「真意ちゃん」


「何」


「この紙を貼った方は」


「うん」


「お客様では」


「ない」


真意ちゃん。


即答。


その瞬間。


第七舞台。


扉の。


向こう。


何か。


動く。


箱。


ではない。


足音。


でもない。


低い。


布が。


擦れるような。


音。


二人。


動かない。


そして。


扉の向こうから。


声。


一言。


「見ないで」


真意ちゃん。


顔。


固まる。


冥理ちゃんの。


笑顔。


完全に。


消える。


声。


冥理ちゃんではない。


真意ちゃんでもない。


観客が。


これまで。


出した。


無機質な声とも。


違う。


初めて。


聞く。


誰かの。


声。


もう一度。


「まだ」


少し。


弱く。


「見ないでください」


そして。


沈黙。


真意ちゃん。


扉。


触らない。


冥理ちゃんも。


触らない。


「……」


長い。


沈黙。


冥理ちゃん。


ようやく。


口。


開く。


「真意ちゃん」


「何」


「箱の中」


「言わないで」


「はい」


真意ちゃん。


扉。


見る。


鳩。


箱。


未確定。


観客。


さらに。


今。


それとは。


別の。


誰か。


初めて。


本物の。


声で。


見ないで。


と言った。


真意ちゃん。


一歩。


後ろへ。


「帰る」


冥理ちゃん。


「はい」


二人。


背を。


向ける。


歩く。


角。


曲がる。


その時。


第七舞台。


中。


パチン。


拍手。


一回。


続いて。


初めて。


もう一つ。


別の音。


ぱち。


拍手。


ではない。


手。


一つ。


何かを。


止めるような。


短い音。


その後。


静寂。


---


【公演記録 No.009・最終追記】


「観客」とは異なる可能性のある存在を確認。


特徴:


観客の観測行為そのものを制限しようとしている。


第七舞台内部の未確定状態を保護している可能性。


目的:


不明。


立場:


不明。


冥理との関係:


不明。


重要:


これまで。


問題は。


「何が本物なのか」


だった。


現在。


より重要なのは。


誰が、それを本物にしようとしているのか。


そして。


誰が、それを決めさせまいとしているのか。


本物だったか:


__________


その空欄の下。


翌朝。


一行。


追加されていた。


«まだ決めないでください。»


今回は。


真意ちゃんも。


冥理ちゃんも。


その文字を。


消さなかった。

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