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8/11

第8話「どこまでが、冥理ちゃんですか?」


【公演記録 No.008】


演目:境界当て

会場:真意・調査室/ぱんでむ施設内複数地点

観客:不明

出演者:真意

補助出演:冥理


使用トリック:MetadataVision / 不明


本人の認識:調査


本物だったか:


__________


備考:


本公演には舞台が存在しない。


追記:


そのため、ぱんでむ施設内のどこまでが公演会場であったかについても確定していない。


---


朝。


真意ちゃんは。


机に突っ伏していた。


寝てはいない。


寝られなかった。


机。


ノート。


昨夜。


破り捨てた紙。


全部。


片付けた。


はずだった。


その中央に。


一枚。


白いカード。


第六問


その下。


冥理を、どこまで冥理と呼びますか?


「……」


真意ちゃんは。


カードを見ないように。


横を向いていた。


正確には。


見えている。


ただ。


読まないようにしている。


昨夜から。


文字は変わっていない。


虫眼鏡も。


使っていない。


触ってもいない。


答えてもいない。


それでも。


カードは。


そこにある。


「真意ちゃーん?」


扉。


こんこん。


真意ちゃんが。


顔を上げる。


「入らないで」


「えっ」


「そこで待って」


「お届け物なんですが」


「何」


「朝ごはんです」


「いらない」


「昨日から調査室に籠もっていると聞きまして」


「誰から」


「いろんな方から」


「範囲が広い」


扉の向こう。


冥理ちゃん。


「開けますよ?」


「待って!」


「はい」


真意ちゃんは。


机を見る。


カード。


問題。


冥理を、どこまで冥理と呼びますか?


冥理本人を。


この部屋へ。


入れる。


それ自体。


回答になる可能性。


「……」


真意ちゃんが。


立ち上がる。


扉へ。


「冥理ちゃん」


「はい?」


「質問する」


「どうぞ!」


「あなた」


間。


「今、何人?」


廊下。


沈黙。


「……」


冥理ちゃん。


「一人ですけど」


「本当に?」


「たぶん」


「たぶん?」


「第五話以降」


冥理ちゃんが。


扉越しに。


明るく答える。


「自信を持って人数を言わないことにしました!」


「そこだけ学習しないで」


「安全策です」


真意ちゃん。


虫眼鏡。


扉越し。


輪郭。


【冥理】


一人。


少なくとも。


タグ上は。


「入って」


「はーい」


扉。


開く。


冥理ちゃん。


紙袋。


二つ。


帽子。


ステッキなし。


「今日は」


両手。


上げる。


「手品道具を置いてきました!」


「偉い」


「褒められた!」


「最低限よ」


冥理ちゃん。


嬉しそうに。


机へ。


そして。


カードを見る。


「……」


止まる。


真意ちゃん。


「読んだ?」


「はい」


「答えないで」


「もちろんです」


冥理ちゃんは。


紙袋を置く。


「私への問題じゃありませんし」


「……」


真意ちゃんが。


見る。


冥理ちゃん。


いつもの笑顔。


でも。


視線。


カードへ。


ほんの少しだけ。


警戒している。


「怖い?」


「何がです?」


「問題」


「いいえ」


即答。


真意ちゃん。


「嘘」


「……」


「少し怖いでしょう」


冥理ちゃん。


笑顔。


三秒。


そして。


「少しだけ」


認めた。


---


朝食。


サンドイッチ。


飲み物。


真意ちゃんは。


カードを。


裏返した。


問題文を。


見えなくする。


冥理ちゃん。


向かい。


「それで」


「何」


「答えないんです?」


「答えない」


「いつまで?」


「永遠にでも」


「長期戦ですねえ」


「あなたは」


真意ちゃん。


パンを。


少し。


ちぎる。


「どう思うの」


「何を?」


「どこまでが冥理か」


冥理ちゃん。


止まる。


「私に聞きます?」


「これは」


裏返したカードを。


指で叩く。


「私への問題」


「はい」


「あなたの答えを聞くことは、私が答えることじゃない」


「なるほど」


冥理ちゃん。


考える。


「では」


自分の手を見る。


「ここまで」


「手?」


「はい」


腕。


「ここまで」


肩。


「ここまで」


頭。


帽子。


「ここまで」


真意ちゃん。


「帽子まで?」


「大事ですよ?」


「外したら?」


冥理ちゃん。


帽子を外す。


机。


置く。


「冥理です」


「じゃあ帽子は冥理じゃない」


「でも」


冥理ちゃん。


帽子を。


つつく。


「私以外が被っても似合いません」


「それは別」


「厳しい」


真意ちゃん。


「能力は?」


「ありますね」


「なくなったら?」


「……」


冥理ちゃん。


少し。


考える。


「困ります」


「冥理じゃなくなる?」


「それは」


間。


「違うと思います」


「記憶は?」


「難問ですね」


「体は?」


「さらに」


「同じ顔のあなたが二人いた」


「いましたねえ」


「どちらも冥理だった」


「はい」


「一人に戻った」


「はい」


「どちらが残った?」


「分かりません」


「でも今」


真意ちゃん。


冥理ちゃんを見る。


「あなたは自分を冥理だと思ってる」


「もちろんです」


「じゃあ」


真意ちゃん。


「元かどうかは関係ない」


冥理ちゃんの。


笑顔が。


少し。


変わった。


「……」


「何」


「いえ」


「言って」


「真意ちゃん」


冥理ちゃん。


少し。


嬉しそうに。


「ちゃんと私のこと考えてくれてますね」


真意ちゃん。


眉間。


「調査よ」


「はいはい」


「本当に」


「分かっていますよ」


でも。


冥理ちゃん。


楽しそう。


真意ちゃん。


嫌そう。


その時。


机。


裏返したカード。


カサ。


音。


勝手に。


表を向いた。


二人。


止まる。


第六問


冥理を、どこまで冥理と呼びますか?


その下。


新しい文字。


回答を確認しました。


真意ちゃんが。


立ち上がる。


「答えてない!」


冥理ちゃんも。


椅子から。


少し。


離れる。


カード。


さらに。


元である必要はない。


真意ちゃん。


「……」


今の会話。


拾われた。


本人が冥理だと思っていれば、冥理ですか?


「違う」


真意ちゃんが。


即答した。


冥理ちゃん。


「真意ちゃん!」


真意ちゃん。


口を押さえる。


遅い。


カード。


回答:違う


「……」


真意ちゃん。


顔。


青くなる。


「しまった」


冥理ちゃん。


カードを見る。


「問題が」


変わる。


では、本人の認識だけでは不足しています。


その下。


何が必要ですか?


---


「部屋を出る」


真意ちゃん。


カードを。


置く。


「持っていかない」


「はい」


「もう会話もしない」


「はい」


「冥理ちゃんについて考えない」


「それは難しくありません?」


「やるの」


「はい」


廊下。


二人。


歩く。


十メートル。


角。


曲がる。


普通。


第七舞台。


ない。


白い椅子。


ない。


「……」


真意ちゃん。


少し。


安心。


冥理ちゃん。


「今日は追ってきませんね」


真意ちゃん。


「言うな」


「はい」


食堂区画。


スタッフ。


客。


普通。


厨房。


音。


匂い。


ぱんでむの日常。


冥理ちゃんが。


「では私は外商へ」


「待って」


真意ちゃん。


止める。


「一人にならないで」


冥理ちゃん。


目を丸くする。


「心配してくださるんです?」


「監視」


「はいはい」


「その返事やめて」


「では、承知しました!」


二人。


歩く。


そこへ。


店内放送。


ぴんぽん。


『業務連絡です』


二人。


止まる。


聞き慣れない。


声。


男でも。


女でもない。


機械音でもない。


ただ。


妙に。


聞き取りやすい。


『冥理ちゃんを見かけた方は』


真意ちゃんが。


顔を上げる。


『最寄りの冥理ちゃんまでお知らせください』


沈黙。


冥理ちゃん。


「……」


真意ちゃん。


「……」


店内。


何人か。


客。


気にしない。


通常営業。


『繰り返します』


真意ちゃん。


走る。


「冥理ちゃん!」


「はい!」


二人。


放送設備へ。


『冥理ちゃんを見かけた方は』


廊下。


曲がる。


『最寄りの冥理ちゃんまで』


真意ちゃん。


「最寄りの冥理って何よ!」


冥理ちゃん。


「私も知りません!」


『お知らせください』


放送。


切れる。


真意ちゃん。


虫眼鏡。


スピーカー。


【館内設備】


【音声出力】


【放送元:____】


空欄。


「また」


冥理ちゃん。


「原因なし」


「そう」


真意ちゃん。


周囲。


見る。


そして。


止まる。


廊下。


向こう。


誰か。


歩いてくる。


黒い帽子。


赤いリボン。


衣装。


冥理ちゃん。


真意ちゃんの横にも。


冥理ちゃん。


二人。


「……」


向こうの冥理ちゃんが。


手を振る。


「真意ちゃーん!」


横の冥理ちゃんも。


「えっ」


向こう。


近づく。


「探しましたよ!」


横。


「私もです!」


二人。


顔を。


見合わせる。


「……」


同時。


首を。


傾げる。


「また増えましたね」


真意ちゃん。


頭を抱える。


「そういう問題じゃない!」


---


三人。


調査室へは。


戻らない。


空いている。


休憩区画。


真意ちゃん。


二人の冥理ちゃんを。


並べる。


左。


朝から一緒。


右。


さっき現れた。


「質問」


真意ちゃん。


「名前」


左。


「冥理です」


右。


「冥理です」


「役職」


二人。


「外商クルーです」


「今朝何を食べた?」


左。


「真意ちゃんとサンドイッチを」


右。


「外商先で焼き菓子を」


真意ちゃん。


止まる。


「記憶が違う」


左。


右を見る。


「外商?」


右。


左を見る。


「朝食?」


真意ちゃん。


虫眼鏡。


左。


【冥理】


【外商クルー】


【奇術師】


【因果の奇術】


右。


同じ。


さらに。


生成原因。


左。


【冥理】


右。


【冥理】


「また」


第五話。


二人になった時と。


同じ。


由来が。


本人自身へ。


閉じている。


真意ちゃん。


「あなたたち」


二人。


「はい」


「どっちが本物?」


二人。


少し。


考える。


左。


「どちらも?」


右。


「どちらもでしょうねえ」


真意ちゃん。


舌打ち。


「次」


左を見る。


「私をどう呼ぶ?」


「真意ちゃん」


右。


「真意ちゃん」


「冥理ちゃんを?」


二人。


互いを見る。


「冥理ちゃん」


同時。


真意ちゃん。


「……」


左。


少し。


笑う。


右も。


同じ。


「これ」


真意ちゃん。


小さく。


呟く。


「本人認識を増やしてる」


二人。


見る。


「何がです?」


「さっき」


真意ちゃん。


「本人が自分を冥理だと思っていれば、それだけで冥理なのかって聞かれた」


左。


「はい」


右。


「はい」


「私は違うって答えた」


二人。


「はい」


真意ちゃん。


二人を。


指す。


「だから」


声。


低い。


「足りない条件を探してる」


冥理ちゃんを。


複製したのではない。


真意ちゃんに。


問いを。


突きつけるため。


本人が冥理だと思っている二人を並べた。


では。


何を基準に。


真意は。


冥理を。


冥理と呼ぶ?


「……」


左の冥理ちゃんが。


笑う。


「なるほど」


右も。


「試験ですね」


真意ちゃん。


「嬉しそうにしないで!」


二人。


「だって」


同時。


真意ちゃん。


「喋るな!」


二人。


口。


閉じる。


---


第三。


現れた。


十分後。


厨房。


帽子から。


野菜を出していた。


第四。


外商区画。


客へ。


名刺を渡していた。


第五。


休憩室。


椅子で。


寝ていた。


第五は。


起こすと。


「寝てません!」


と言った。


全員。


冥理。


全員。


少しずつ。


直前の記憶が。


違う。


だが。


それ以前。


共有している。


真意ちゃんは。


五人を。


広い会議室へ。


集めた。


「壮観ですねえ」


「夢のようです」


「私が五人!」


「公演できますね!」


「交代で休めます!」


真意ちゃん。


机を叩く。


「静かに!」


五人。


「はい!」


揃う。


「……」


真意ちゃん。


頭痛。


「何人になっても同じね」


一人。


手を挙げる。


「個性を出します?」


「出さないで」


「はい」


真意ちゃん。


ホワイトボード。


書く。


冥理とは何か


五人。


眺める。


「哲学!」


「公演タイトルみたいですね」


「バーガー名にも」


「黙って!」


真意ちゃん。


書く。


身体。


記憶。


能力。


役割。


本人認識。


由来。


どれも。


決め手にならない。


身体。


同一。


記憶。


大部分。


共通。


能力。


同じ。


役割。


同じ。


本人認識。


全員。


冥理。


由来。


冥理。


「……」


一人。


冥理ちゃん。


「詰みました?」


真意ちゃん。


「詰んでない」


別。


「では何が違うんでしょう」


真意ちゃん。


見る。


五人。


違い。


朝。


一緒にいた冥理。


外商へ行った冥理。


厨房の冥理。


休んでいた冥理。


それぞれ。


出来事。


違う。


でも。


その違いも。


今。


作られた。


条件。


答えではない。


真意ちゃん。


「私との関係」


五人。


「はい?」


真意ちゃん。


一人ずつ。


見る。


「あなた」


朝から。


一緒。


「私がカードを見た時、いた」


「はい」


二人目。


「あなたは外商先にいた」


「はい」


三人目。


厨房。


四人目。


外商区画。


五人目。


休憩室。


真意ちゃん。


「でも」


止まる。


五人。


全員。


自分を見る。


「私が」


言う。


「冥理ちゃんって呼んだら」


五人。


全員。


同じように。


少し。


嬉しそうな顔をする。


真意ちゃん。


黙る。


「……」


一人。


「真意ちゃん?」


「それ」


「何がです?」


「その顔」


五人。


顔を。


見合わせる。


真意ちゃん。


虫眼鏡。


一人目。


二人目。


三人目。


四人目。


五人目。


タグ。


同じ。


だが。


タグではなく。


見る。


普通に。


目で。


「……」


冥理ちゃん。


笑い方。


帽子を。


触る癖。


褒めると。


少し。


本気で嬉しそうになる。


危険な時。


冗談を言う。


怖い時ほど。


舞台用の笑顔。


真意ちゃんに。


止められれば。


文句を言う。


でも。


本当に声が変われば。


従う。


第五話。


振り返らなかった。


第六話。


手品を見せるのを。


止めた。


第七話。


最初の手品を。


決めなかった。


「……」


真意ちゃん。


ペンを。


置く。


「分かった」


五人。


「本当ですか!?」


「何がです?」


「私とは!」


「冥理の定義!」


「気になります!」


真意ちゃん。


「うるさい」


でも。


少しだけ。


笑った。


「答えは」


五人を見る。


「決められない」


沈黙。


「えっ」


五人。


揃う。


真意ちゃん。


「誰か一人を選んで」


ホワイトボード。


消す。


「それ以外は冥理じゃない、なんて言える根拠がない」


身体。


消す。


記憶。


消す。


能力。


役割。


本人認識。


全部。


消す。


「だから」


五人。


見る。


「今ここにいるあなたたちは」


間。


「全員、冥理ちゃん」


五人。


静か。


真意ちゃん。


続ける。


「少なくとも」


一人。


二人。


三人。


四人。


五人。


「私が知ってる限りでは」


「……」


朝からいた。


冥理ちゃんが。


少し。


笑う。


「それ」


真意ちゃん。


「何」


「嬉しいですね」


真意ちゃん。


「調査結果よ」


別の冥理ちゃん。


「照れてます?」


「消すわよ」


「どれを!?」


五人。


同時。


真意ちゃん。


止まる。


五人も。


止まる。


そして。


全員。


吹き出す。


真意ちゃんも。


一瞬。


笑いそうになり。


耐える。


その時。


会議室。


スピーカー。


ぴんぽん。


全員。


黙る。


あの声。


『回答を確認しました』


真意ちゃんの。


顔が。


冷える。


『冥理は複数存在できます』


「違う!」


真意ちゃんが。


叫ぶ。


五人。


見る。


『回答を訂正しますか?』


真意ちゃん。


「その結論じゃない!」


『では』


壁。


白いカード。


一枚。


現れる。


冥理を、どこまで冥理と呼びますか?


その下。


真意ちゃんの。


回答として。


私が知っている限り、全員。


「……」


真意ちゃん。


カードへ。


近づく。


その横。


新しい欄。


回答理由を入力してください。


「入力しない」


カード。


未入力を理由として採用しますか?


「しない!」


回答:しない


「……」


真意ちゃん。


額。


押さえる。


冥理ちゃんの一人。


小さく。


「性格悪いですね」


別。


「お客様ですから」


「それで済ませないで」


真意ちゃん。


深く。


息。


「理由」


カードを見る。


「理由は」


五人。


冥理ちゃん。


見ている。


「私が」


言葉。


探す。


慎重に。


「そう判断したから」


カード。


揺れる。


根拠不足。


「知ってる」


真意ちゃん。


虫眼鏡を。


構えない。


「でも」


カードを見る。


「あなたは」


観客。


どこかにいる。


「私の納得が正答条件なんでしょう」


沈黙。


真意ちゃん。


「なら」


一歩。


「私が納得してる」


カード。


文字。


止まる。


「タグじゃない」


冥理ちゃんを見る。


「能力でもない」


「起源でもない」


「元かどうかでもない」


「一人かどうかでもない」


冥理ちゃんたち。


静か。


「私は」


真意ちゃん。


「この五人を見て」


言う。


「全部、冥理ちゃんだと思った」


カード。


一文字。


現れる。


なぜ?


真意ちゃん。


目を細める。


「知らない」


回答してください。


「知らない」


根拠を。


「ない」


論理的根拠を。


「ないって言ってるでしょう」


虫眼鏡を。


机に置く。


「何でも」


真意ちゃん。


少し。


怒る。


「全部、理由が見えると思うな」


カード。


止まる。


真意ちゃん。


「私が」


冥理ちゃんを見る。


「冥理ちゃんを冥理ちゃんだって判断するのに」


一拍。


「毎回タグを読んでると思う?」


冥理ちゃんの。


一人が。


目を丸くする。


真意ちゃん。


「私は調べる」


「疑う」


「裏を見る」


「矛盾を探す」


「でも」


五人を見る。


「それだけで」


少し。


声。


柔らかくなる。


「誰かを知ってるわけじゃない」


静寂。


カード。


揺れる。


文字。


全部。


消える。


第六問。


消える。


代わり。


正解


真意ちゃん。


「……」


冥理ちゃん五人。


「おお」


「正解!」


「おめでとうございます!」


「さすが!」


「拍手!」


五人。


拍手。


ぱちぱち。


真意ちゃん。


「やめて!」


その瞬間。


六つ目。


拍手。


パチン。


一回。


冥理ちゃんたち。


止まる。


真意ちゃんも。


止まる。


見えない。


観客。


いる。


そして。


カード。


新しい文字。


学習しました。


真意ちゃんの。


表情が。


変わる。


「……何を」


カード。


個体識別に、客観的根拠は必須ではない。


「違う」


関係性による認識を追加します。


「違う!」


真意ちゃん。


カードを。


掴む。


「そういう意味じゃない!」


冥理ちゃん。


一人。


「真意ちゃん」


カード。


次。


次回より適用します。


「何に!?」


答え。


なし。


カード。


白紙。


その瞬間。


五人の冥理ちゃん。


一斉に。


消えた。


「冥理ちゃん!」


真意ちゃん。


周囲。


誰もいない。


椅子。


五つ。


空。


「……」


真意ちゃん。


虫眼鏡。


床。


残留。


なし。


空間。


異常。


なし。


「冥理ちゃん!」


返事。


ない。


真意ちゃん。


会議室を。


飛び出す。


廊下。


走る。


角。


厨房。


「冥理ちゃん!」


いない。


外商区画。


いない。


休憩室。


いない。


第七舞台。


扉。


開ける。


誰も。


いない。


白い椅子すら。


ない。


「……」


真意ちゃん。


息。


乱れる。


「冥理ちゃん」


静寂。


虫眼鏡。


劇場。


何も。


「冥理ちゃん!」


声。


反響。


返事。


ない。


「冥理ちゃん!!」


パチン。


拍手。


一回。


背後。


真意ちゃんが。


振り返る。


誰もいない。


「返して」


沈黙。


「聞こえてるんでしょう」


真意ちゃん。


虫眼鏡を。


握る。


「返して!」


舞台。


中央。


白いカード。


落ちる。


真意ちゃん。


拾う。


一行。


冥理は存在しています。


「どこに」


文字。


増える。


あなたが冥理と認識できる場所に。


「……」


真意ちゃん。


顔。


青ざめる。


「何をした」


カード。


学習結果を適用しました。


「何を!」


その時。


廊下。


遠く。


声。


「真意ちゃーん?」


真意ちゃん。


顔を上げる。


走る。


第七舞台。


出る。


廊下。


向こう。


冥理ちゃん。


一人。


紙袋。


持って。


歩いてくる。


「こんなところにいたんですか?」


真意ちゃん。


止まる。


「……」


冥理ちゃん。


近づく。


「会議室にいたと思ったら」


首。


傾げる。


「気付いたら外商先だったんですよ」


真意ちゃん。


虫眼鏡。


【冥理】


【外商クルー】


【奇術師】


【因果の奇術】


普通。


「真意ちゃん?」


冥理ちゃん。


「どうしました?」


真意ちゃん。


答えない。


近づく。


顔。


見る。


帽子。


赤いリボン。


笑い方。


声。


仕草。


「……冥理ちゃん?」


「はい?」


即答。


真意ちゃん。


少し。


息を吐く。


「……」


冥理ちゃん。


「本当にどうしたんです?」


真意ちゃん。


一歩。


近づく。


「朝」


「はい」


「何食べた?」


「焼き菓子です」


真意ちゃん。


止まる。


朝。


自分と。


サンドイッチを。


食べた冥理ではない。


「……」


冥理ちゃん。


「真意ちゃん?」


でも。


第五話。


どちらが元だったか。


分からなかった。


今。


どの冥理が。


残ったか。


また。


分からない。


冥理ちゃん。


心配そうに。


顔を覗く。


「大丈夫です?」


真意ちゃん。


長く。


見る。


そして。


「……大丈夫」


「そうですか?」


「冥理ちゃん」


「はい」


真意ちゃん。


「戻ろう」


冥理ちゃん。


笑う。


「はい!」


二人。


歩き出す。


真意ちゃん。


虫眼鏡。


しまう。


振り返らない。


第七舞台。


扉。


閉じる。


---


夜。


調査室。


真意ちゃん。


記録。


【公演記録 No.008】


第六問。


冥理を、どこまで冥理と呼ぶか。


回答:


一意に定義不能。


複数の冥理が同時に存在した場合も、個々を冥理として認識可能。


ただし。


この回答から。


「観客」は。


客観的属性だけでなく。


人物間の認識関係を。


判定材料として学習した可能性がある。


真意ちゃん。


ペン。


止める。


さらに。


書く。


重大な懸念


これまで。


観客は。


冥理の奇術を。


模倣していた。


次に。


真意の認識を。


模倣し始めた。


つまり。


学習対象は。


冥理だけではない。


「……」


真意ちゃん。


昨日。


自分が。


次の出演者に。


選ばれた意味。


ようやく。


理解する。


あれは。


冥理から。


真意へ。


興味が。


移ったのではない。


学習対象が増えた。


真意ちゃん。


その一文を。


二重線で囲む。


そして。


さらに。


書く。


観客は何を目的として学習している?


返事。


ない。


今回は。


カードも。


出ない。


拍手も。


ない。


静か。


真意ちゃん。


少し。


安心。


ノート。


閉じる。


立つ。


照明。


消す。


部屋。


出る。


扉。


閉じる。


誰もいない。


調査室。


机。


ノート。


閉じたまま。


その表紙へ。


文字。


浮かぶ。


第七問


少し。


間。


真意を、どこまで真意と呼びますか?


さらに。


その下。


選択肢。


A:真意が自分を真意だと思っている限り


B:冥理が真意を真意だと思っている限り


C:観客が真意を真意だと思っている限り


一行。


空白。


四つ目。


D:どれでもよい


文字。


止まる。


だが。


問題は。


それで終わらない。


さらに。


小さな一文。


回答者:冥理


---


同じ頃。


冥理ちゃん。


楽屋。


帽子。


机。


置く。


鏡。


まだ。


布。


かかったまま。


「いやあ」


伸び。


「今日は妙に疲れましたねえ」


椅子。


座る。


机。


紙袋。


朝。


外商先で買った。


焼き菓子。


一つ。


取り出す。


「いただきます」


手。


伸ばす。


止まる。


焼き菓子の。


下。


カード。


一枚。


「……」


冥理ちゃん。


拾う。


表。


白紙。


裏。


問題。


真意を、どこまで真意と呼びますか?


冥理ちゃん。


読む。


しばらく。


黙る。


その下。


選択肢。


A。


B。


C。


D。


「……」


冥理ちゃん。


笑う。


「なるほど」


カードを。


机へ。


置く。


答えない。


焼き菓子を。


一口。


「真意ちゃんに」


もぐもぐ。


「答えるなって言われましたからねえ」


カード。


文字。


増える。


回答しない場合、「無回答」を選択したものとします。


冥理ちゃん。


「知ってます」


食べる。


無回答も回答です。


「それも知ってます」


カード。


では、どうしますか?


冥理ちゃん。


焼き菓子。


食べ終える。


指。


払う。


カード。


見る。


いつもの。


笑顔。


「簡単ですよ」


カード。


待つ。


冥理ちゃん。


帽子を。


被る。


「私は」


少し。


間。


「真意ちゃんを」


カード。


文字。


揺れる。


「真意ちゃんと呼びたい時に」


立ち上がる。


「真意ちゃんと呼びます」


沈黙。


カード。


何も。


書かれない。


冥理ちゃん。


「それだけです」


しばらく。


何も起きない。


やがて。


カードの。


選択肢。


A。


消える。


B。


消える。


C。


消える。


D。


消える。


問題文だけ。


残る。


真意を、どこまで真意と呼びますか?


それも。


ゆっくり。


消える。


最後。


一行。


回答不能


冥理ちゃん。


眉を上げる。


「おや」


その下。


新しい文字。


学習できませんでした。


冥理ちゃん。


にこり。


「それは」


帽子を。


軽く。


持ち上げる。


「残念でしたね」


パチン。


拍手。


一回。


冥理ちゃん。


今度は。


頭を下げなかった。


ただ。


笑う。


「ですが」


誰もいない部屋。


見えない何かへ。


「手品というのは」


カードを。


裏返す。


「全部タネが分かったら」


一拍。


「つまらないでしょう?」


照明。


消える。


部屋。


暗くなる。


カード。


最後。


一度だけ。


文字。


浮かぶ。


理解不能を記録しました。


その下。


さらに。


保存します。


---


【公演記録 No.008・最終追記】


観客は。


冥理の奇術を学習した。


真意の認識方法を学習した。


しかし。


冥理による真意の認識については。


学習に失敗した。


原因:


不明。


仮説:


冥理の回答には。


客観的な判定条件。


固定された因果。


再現可能な境界。


いずれも存在しなかった。


それでも。


冥理は。


真意を真意と認識できる。


したがって。


本公演で初めて。


「観客」が。


再現できないものが確認された。


それが。


奇跡なのか。


ただの曖昧さなのか。


友情なのか。


習慣なのか。


あるいは。


もっと別の何かなのか。


現時点では。


判別不能。


本物だったか:


__________


その空欄だけは。


今回。


最後まで。


誰にも埋められなかった。

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