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6/11

第6話「見ているのは、どちらでしょう?」

【公演記録 No.006】


演目:観客参加型・当てもの奇術

会場:ぱんでむ・劇場区画 第七舞台

観客:1名

出演者:冥理

立会人:真意

使用トリック:CausalitySleight / MetadataVision

被害:なし


本人の認識:手品


本物だったか:


__________


備考:


本公演では、観客を募集していない。


追記:


それでも観客は来場した。


追加追記:


「来場した」という表現が正しいかは、現在も確認できていない。


---


翌日。


第七舞台の扉には。


大きな紙が貼られていた。


本日休演


その下。


さらに大きな文字。


絶対に開けないこと


その下。


赤字。


冥理ちゃんも開けないこと


「名指し!」


廊下に。


冥理ちゃんの声が響いた。


「ひどくありません!?」


「あなた向けよ」


真意ちゃんが。


鍵を三つ。


順番に確認している。


「どうして私だけ!」


「昨日、封鎖した劇場に勝手に入ったでしょう」


「私の劇場ですから」


「ぱんでむの劇場よ」


「細かいことを」


「細かくない」


冥理ちゃんは。


帽子を押さえて。


扉を見る。


「でも」


「何」


「昨日のお客様」


真意ちゃんの手が止まる。


「まだ中にいらっしゃるんですよね?」


「……」


白い椅子。


一脚。


昨夜。


劇場を封鎖した時点でも。


座面は沈んだままだった。


真意ちゃんは。


何も答えない。


冥理ちゃんが。


にこにこする。


「なら」


「駄目」


「まだ何も言ってませんよ?」


「公演するつもりでしょう」


「なぜ分かったんです?」


「あなたが帽子を被ってるから」


「いつも被ってます!」


「ステッキも持ってる」


「外商クルーの嗜みです」


「背中に『本日の演目』って書いた看板を背負ってる」


冥理ちゃんが。


振り返ろうとする。


「えっ」


「自分で背負ったんでしょう」


「そうでした!」


看板。


本日の演目


『あなたは誰でしょう?』


真意ちゃんが。


額を押さえた。


「帰って」


「真意ちゃん」


「帰って」


「でもですね」


冥理ちゃんは。


扉の向こうへ。


耳を寄せた。


「お客様を」


少し。


声が小さくなる。


「待たせるのは、失礼です」


その瞬間。


扉の向こうから。


パチン。


拍手。


一回。


二人とも。


黙った。


---


第七舞台。


封鎖解除。


真意ちゃんは。


結局。


鍵を開けた。


「言っておくけど」


「はい」


「公演はしない」


「はい」


「調査だけ」


「はい」


「絶対に何もしない」


「はい」


「その返事、信用してないから」


「悲しい!」


扉が。


開く。


劇場。


昨日と。


ほとんど同じ。


舞台。


赤い幕。


二つの赤い箱。


客席。


そして。


最前列の中央。


白い椅子。


一脚。


座面。


沈んでいる。


誰もいない。


「……まだいる」


真意ちゃんが。


虫眼鏡を構える。


【椅子】


【白色】


【使用中】


その上。


空間。


【観客】


さらに。


昨日と同じ。


【観測対象:____】


空欄。


真意ちゃんの眉が動く。


「昨日は私だった」


「何がです?」


「観測対象」


冥理ちゃんが。


白い椅子を見る。


「今日は?」


「空欄」


「なるほど」


「何がなるほどなの?」


「まだ決めていないんでしょう」


真意ちゃんが。


冥理ちゃんを見る。


「誰が?」


「お客様が」


「何を?」


「誰を見るか」


沈黙。


冥理ちゃんは。


嬉しそうだった。


真意ちゃんは。


全然嬉しくなかった。


「……帰るわよ」


「まだ入ったばかりですよ!?」


「十分調べた」


「三十秒です!」


「昨日より悪い」


「どこが?」


「昨日は観測対象が決まっていた」


真意ちゃんは。


白い椅子を見る。


「今日は選んでる」


その瞬間。


タグ。


【観測対象:____】


文字が。


一度。


揺れた。


そして。


【観測対象:冥理】


「……」


真意ちゃんが。


息を止める。


「決まった」


「私ですか?」


「何で分かるのよ」


「真意ちゃんの顔」


「……」


冥理ちゃんが。


白い椅子へ。


深々と頭を下げた。


「ご指名ありがとうございます!」


「喜ぶな!」


---


「では!」


「公演しないって言ったでしょう!」


「調査です!」


「ステッキを振る調査がある?」


「ございます!」


舞台中央。


冥理ちゃん。


客席。


真意ちゃん。


そして。


白い椅子。


観客。


一名。


たぶん。


「まず」


冥理ちゃんは。


帽子から。


三枚のカードを取り出した。


「簡単な当てものをしましょう」


「しない」


「三枚のうち一枚だけ」


「聞いてる?」


「ジョーカーです」


三枚。


裏向き。


「私が混ぜます」


「聞いてない」


「お客様には」


冥理ちゃんが。


白い椅子を見る。


「どれがジョーカーか、当てていただきます」


真意ちゃんが。


立ち上がる。


「冥理ちゃん」


「はい?」


「相手が何なのか分からない」


「お客様です」


「それはタグでしょう」


「十分では?」


「十分じゃない」


真意ちゃんの声が。


低くなる。


「人間かも分からない」


「はい」


「意思があるかも分からない」


「はい」


「昨日から何をしているのかも分からない」


「はい」


「なのに参加させるの?」


冥理ちゃんが。


少し考えた。


「逆です」


「何が」


「分からないから」


カードを。


三枚。


机へ置く。


「手品をするんです」


真意ちゃんが。


黙る。


「言葉が通じるか分からない」


冥理ちゃん。


一枚目。


指で叩く。


「姿も見えない」


二枚目。


「触れるかも分からない」


三枚目。


「でも」


冥理ちゃんは。


笑った。


「手品なら」


ステッキを。


三枚の上へ。


横たえる。


「見ていれば参加できます」


真意ちゃんは。


何も言わなかった。


冥理ちゃんが。


三枚を混ぜる。


右。


左。


中央。


高速。


カードが。


舞台を滑る。


最後。


三枚。


横一列。


「さて!」


冥理ちゃんが。


両手を広げた。


「ジョーカーはどれでしょう!」


沈黙。


白い椅子。


動かない。


「……」


十秒。


「反応ないわよ」


「考えているんです」


二十秒。


「帰る?」


「まだです」


三十秒。


その時。


真ん中のカードが。


一センチ。


前へ出た。


誰も。


触れていない。


真意ちゃんが。


虫眼鏡。


カード。


【選択済】


「……真ん中」


「では!」


冥理ちゃんが。


カードをめくる。


ジョーカー。


「大正解!」


パチン。


拍手。


一回。


冥理ちゃんが。


満面の笑顔になる。


「素晴らしい!」


真意ちゃんは。


笑っていない。


虫眼鏡を。


カードへ向けたまま。


固まっていた。


「真意ちゃん?」


「……おかしい」


「正解ですよ?」


「だからよ」


「はい?」


真意ちゃんは。


三枚を見る。


「あなた」


「はい」


「いつジョーカーの位置を決めた?」


「混ぜ終わった時です」


「違う」


真意ちゃん。


虫眼鏡。


ジョーカー。


【カード】


【選択済】


【選択時刻:十七秒前】


さらに。


【ジョーカー指定時刻:十六秒前】


冥理ちゃんの。


笑顔が止まる。


「……」


真意ちゃんが言う。


「順番が逆」


観客が。


真ん中を選んだ。


その一秒後に。


そのカードが。


ジョーカーになっている。


「当てたんじゃない」


真意ちゃん。


「選んだものが、正解になった」


---


冥理ちゃんが。


三枚のカードを見つめる。


「……」


真意ちゃんが。


横を見る。


「冥理ちゃん?」


返事がない。


珍しい。


冥理ちゃんが。


黙っている。


「あなたの仕業?」


「違います」


即答。


「RealityTrick?」


「違います」


「因果の奇術?」


「使っていません」


真意ちゃんは。


冥理ちゃんを見る。


「本当に?」


「はい」


冥理ちゃんは。


ジョーカーを拾った。


表。


道化師。


裏。


普通。


「私の手品なら」


指で。


カードをくるくる回す。


「選ばせる前に、正解を用意します」


「そうね」


「あるいは」


カードが。


一瞬。


鳩になる。


ばさばさ。


「正解をすり替えます」


もう一度。


カード。


「でも」


冥理ちゃんは。


白い椅子を見る。


「今のは」


少し。


嬉しそうに。


「私より手品が下手です」


「そこ?」


「だって」


冥理ちゃんが笑う。


「選んだ後に正解を変えたら」


ステッキを振る。


「タネが丸見えでしょう?」


真意ちゃんが。


小さく息を吐く。


「あなた基準ではね」


「はい!」


「褒めてない」


---


第二演目。


真意ちゃんは。


止めなかった。


今度は。


五つの紙コップ。


そのうち一つに。


赤い玉。


「位置を当ててください!」


混ぜる。


観客。


右端を選ぶ。


その後。


赤い玉が。


右端へ移動した。


第三演目。


箱。


二つ。


片方に。


鳩。


観客が。


左を選ぶ。


その後。


鳩の存在履歴が。


左の箱へ発生した。


第四演目。


数字当て。


冥理ちゃんが。


紙に。


一から百までの数字を書く。


伏せる。


「何番でしょう!」


紙の前に。


小さな黒い染み。


一つ。


真意ちゃんが。


虫眼鏡。


【選択:42】


冥理ちゃんが。


紙をめくる。


42。


「正解!」


「違う」


真意ちゃんが。


紙を奪う。


【筆記内容:42】


【筆記時刻:現在】


「冥理ちゃん」


「はい」


「あなた、何を書いた?」


「42です」


「書いた時は?」


「……」


冥理ちゃんが。


少し。


首を傾げる。


「42」


「本当に?」


「はい」


「絶対?」


「……」


冥理ちゃんの。


表情から。


少しずつ。


笑みが消える。


「……あれ?」


「何」


「私」


紙を見る。


「何を書きましたっけ」


真意ちゃんが。


立ち上がった。


「終了」


「待ってください」


「終了」


「真意ちゃん」


「これはあなたの手品じゃない」


「分かっています」


「なら」


「だからです」


冥理ちゃんは。


初めて。


白い椅子から。


目を逸らさなかった。


「もう一回だけ」


「駄目」


「確認したいことがあります」


「何を?」


冥理ちゃんが。


帽子を脱ぐ。


中へ。


手を入れる。


取り出したもの。


一枚の。


白紙。


「次は」


冥理ちゃんが言う。


「正解を作りません」


---


白紙。


何も書いていない。


「問題も出しません」


冥理ちゃん。


白紙を。


舞台中央へ置く。


「選択肢もありません」


真意ちゃんが。


虫眼鏡を構える。


「何をするの?」


「何もしません」


「……」


「お客様に」


冥理ちゃんが。


白い椅子を見る。


「好きなものを、選んでいただきます」


沈黙。


「選択肢がないでしょう」


「だからです」


冥理ちゃんが。


笑う。


「何を選ぶんでしょうね?」


真意ちゃんが。


白紙を見る。


タグ。


【紙】


【白紙】


【未使用】


十秒。


何も起きない。


二十秒。


何も。


三十秒。


「……」


冥理ちゃんも。


黙っている。


一分。


白紙。


変化なし。


真意ちゃんが。


少し。


肩の力を抜く。


「何も選べない」


「そうみたいですね」


「選択肢が必要なのかも」


「あるいは」


冥理ちゃんが。


白紙へ近づく。


「正解が必要なのかも」


「どういう意味?」


「さっきのお客様は」


カード。


カップ。


箱。


数字。


全部。


「当てたんじゃありません」


冥理ちゃんが。


白紙を拾う。


「正解を作った」


真意ちゃんが。


目を細める。


「それは分かってる」


「では」


冥理ちゃんが。


真意ちゃんを見る。


「正解が存在しない問題では?」


白紙。


何も起きない。


「何もできない」


「そうです」


冥理ちゃんが。


嬉しそうに笑った。


「タネが分かりました!」


真意ちゃんが。


即座に。


「違う」


「えっ」


「まだ仮説」


「厳しい!」


「一回だけでしょう」


「では検証しましょう!」


「その元気が嫌」


---


検証。


問題。


この箱の中に何が入っているでしょう?


ただし。


箱は。


空。


正解なし。


観客。


反応なし。


次。


赤と青、どちらが正しいでしょう?


正しい条件。


設定なし。


反応なし。


次。


右と左、どちらが勝ちでしょう?


勝敗条件。


なし。


反応なし。


冥理ちゃんが。


両腕を広げた。


「ほら!」


「……」


真意ちゃんも。


認めざるを得なかった。


観客は。


何でも現実化できるわけではない。


「正解」が存在する問い。


あるいは。


正解という枠が。


先に提示された問い。


その中でだけ。


選んだものを。


正解へ変える。


「つまり」


真意ちゃんが。


ノートへ書く。


「選択ではなく」


「はい」


「正解の事後生成」


「はい!」


「原因と結果の順序を」


「手品みたいに入れ替えている」


冥理ちゃんが。


にこにこする。


真意ちゃんのペンが。


止まる。


「……」


「どうしました?」


「冥理ちゃん」


「はい」


「それ」


「何がです?」


「あなたの能力と似てる」


沈黙。


冥理ちゃんが。


笑った。


「そうですか?」


「因果を手品として扱う」


「はい」


「結果から原因を作る」


「はい」


「現実を、演目の都合に合わせる」


「……」


冥理ちゃんが。


白い椅子を見る。


座面。


沈んでいる。


「似ていますねえ」


初めて。


その声に。


楽しさがなかった。


---


パチン。


拍手。


一回。


冥理ちゃんが。


反射的に。


頭を下げる。


「ありがとうございます」


真意ちゃんは。


虫眼鏡を。


白い椅子へ向けた。


【観客】


【観測対象:冥理】


その下。


新しいタグ。


【学習中】


「……」


真意ちゃんの。


顔色が変わる。


「冥理ちゃん」


「はい?」


「帰る」


「もうですか?」


「今すぐ」


「でも」


「今すぐ!」


声。


大きい。


冥理ちゃんが。


驚く。


「真意ちゃん?」


「公演終了」


真意ちゃんが。


舞台へ上がる。


冥理ちゃんの腕を掴む。


「何が見えたんです?」


「後で話す」


「今では?」


「ここでは駄目」


「なぜ」


真意ちゃんは。


白い椅子を見る。


【学習中】


その下。


文字。


増える。


【対象:因果の奇術】


「……」


真意ちゃんが。


冥理ちゃんを。


強く引く。


「あなたの手品を見せないで」


「え?」


「もう一回も」


「でも」


「見せるたびに」


真意ちゃん。


「覚えてる」


冥理ちゃんの。


笑顔が。


消えた。


その瞬間。


白い椅子から。


拍手。


パチン。


パチン。


二回。


まるで。


正解。


と言うように。


---


劇場を出る。


扉。


閉める。


鍵。


一つ。


二つ。


三つ。


真意ちゃんが。


息を吐く。


冥理ちゃんは。


珍しく。


何も言わない。


しばらくして。


「真意ちゃん」


「何」


「一つだけ」


「駄目」


「まだ聞いてません」


「どうせ開けたいんでしょう」


「違います」


冥理ちゃんは。


扉を見る。


「もし」


少し間。


「私の手品を覚えているなら」


「……」


「お客様は」


帽子のつばを。


指で直す。


「私の真似をしているんでしょうか」


真意ちゃんが。


答えない。


「それとも」


冥理ちゃんが。


笑う。


いつもの。


舞台用の笑顔。


ただ。


少しだけ。


硬い。


「私が」


続ける。


「お客様の真似をしていたんでしょうか?」


真意ちゃんが。


冥理ちゃんを見る。


「どういう意味?」


「さあ?」


「冥理ちゃん」


「手品師ですから」


「誤魔化さないで」


「誤魔化してませんよ」


「なら説明して」


冥理ちゃんが。


しばらく。


黙る。


「私」


ぽつり。


「いつから手品ができるようになったんでしょうね」


真意ちゃんの。


表情が止まる。


「……何?」


「覚えてないんです」


冥理ちゃんは。


笑っている。


「最初の手品」


「……」


「最初に鳩を出した日」


「……」


「最初に物を消した日」


「……」


「最初に」


指を鳴らす。


何も起こらない。


「世界が」


もう一度。


指。


「手品になった日」


何も。


「覚えてないんですよ」


真意ちゃんが。


何か言おうとした。


その時。


扉の向こう。


パチン。


拍手。


一回。


冥理ちゃんが。


ゆっくり。


扉を見る。


真意ちゃんも。


見る。


そして。


廊下の。


二人の背後から。


パチン。


拍手。


一回。


二人とも。


動かなかった。


劇場の中。


一人。


廊下。


一人。


真意ちゃんが。


虫眼鏡を。


ゆっくり。


背後へ向ける。


誰もいない。


タグ。


なし。


さらに。


深く。


文字。


一つ。


【観客】


「……」


冥理ちゃんが。


前を向いたまま。


小さく言う。


「増えました?」


真意ちゃんは。


答えない。


「真意ちゃん」


「……」


「何人です?」


沈黙。


冥理ちゃんが。


少しだけ。


笑う。


「まあ」


帽子を押さえる。


「満席になるまでは」


真意ちゃんが。


遮る。


「言わないで」


冥理ちゃんが。


黙る。


「今」


真意ちゃん。


「選択肢を作らないで」


「……」


「何人になるか」


虫眼鏡の向こう。


【観客】


その下。


【人数:____】


空欄。


「決めさせないで」


冥理ちゃんは。


今度こそ。


何も言わなかった。


---


【公演記録 No.006・終了後追記】


本日の公演において、観客は「正解」を選択した。


選択後、現実側が修正され、その選択が正解となった。


確認された順序:


選択

現実改変

正解成立


冥理の通常の奇術:


意図

奇術

現実改変

結果


両者には類似性が認められる。


ただし。


冥理本人は。


自身が最初に奇術を行った時期を。


記憶していない。


追記:


劇場外で、新たな「観客」タグを確認。


白い椅子は確認されていない。


したがって。


椅子は観客の本体ではない。


追加追記:


「観客」という名称も。


真意が便宜上そう読んでいるだけである。


それが本当に。


観客なのかは。


まだ。


誰にも分からない。


本物だったか:


__________


---


深夜。


誰もいない。


第七舞台。


白い椅子。


一脚。


座面。


沈んでいる。


舞台中央。


今日。


冥理ちゃんが使った。


三枚のカード。


そのうち。


ジョーカーだけが。


表向き。


残されている。


しばらく。


何も起きない。


やがて。


カードが。


裏返る。


裏面。


文字。


一行。


«正解です。»


その下。


もう一行。


«次の問題をどうぞ。»


少し。


間。


さらに。


文字。


«問題がない場合はこちらで用意します。»


舞台上。


誰もいない。


それでも。


赤い幕が。


ゆっくり。


左右へ開いた。


幕の向こう。


何もない。


ただ。


暗闇。


その中央に。


いつの間にか。


一枚のカード。


表。


ジョーカー。


裏。


問い。


«冥理は、どちらでしょう?»


その下。


選択肢。


«A:手品をする者»


«B:手品によって作られた者»


そして。


誰も見ていない舞台で。


三つ目の選択肢が。


ゆっくり。


書き足された。


«C:どちらも正解»


パチン。


拍手。


一回。


選択されたのが。


どれだったのか。


翌朝。


カードを発見した真意ちゃんにも。


分からなかった。


なぜなら。


三つの選択肢は。


すべて。


丸で囲まれていたからだ。


【公演記録 No.006・最終追記】


«正解が複数存在する場合でも、観客は選択できる。»


«選択された正解同士が矛盾する場合については、未検証。»


その下。


真意ちゃんの字ではない筆跡。


«検証を開始しました。»


本物だったか:


__________

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