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君への愛を世界に叫ぶ

   15


 研究塔の在った場所から一区画離れた場所に建つ建物、その屋上に複数の非武装のヘリが鎮座していた。

 パガニーニが駆け寄り、左の機長席へと乗り込む。

ヴァンは左の副操縦士席へ。メディアは後ろの席へと座った。

 ――急に夜の闇が薄れる。まるで時間を間違えて、地平線に太陽が顔を覗かせたみたいだ。

 ヴァンは反射的に光源を求め視線を走らせた。――数キロ離れた場所を這っていた復讐の女神(ネメシス)が動きを止めている。

その十三個の頭が相談事をするように距離を近づけていた。吐息がかかる距離に、直径数十メートルの稲妻の塊を生み出している。

 ……復讐の女神(ネメシス)の目線は明らかにこちらを捉えていた。

そのことに、ゾッとヴァンの鳥肌が立つ。

 時間にして数秒。その間、ヴァンは動けなかった。アンジェラの豊富な知識を受け継ぎ、ヘリの操縦さえ可能だったにも係わらず……

 ただ、軍事用オートマータとして幾多の死線をくぐり抜けてきたパガニーニだけが、マスタースイッチをオン、エンジンを始動させ飛行機であれば操縦桿にあたるコレクティブ・スティックを操作。

 だが、間に合わないのは目に見えていた。

 ――空の星すべてが流星となって降ってきたように、閃光の奔流が飛来。荷電粒子ビームが放たれたのだ。パガニーニが放つのものとは、手榴弾と核化爆弾の爆発ほど規模が違う。

 刹那、動きを完全に停止させていたはずのアトラスが動く。


      †


「コンド、コソォ、マモルゥゥ!」

 最早、意思と呼べるようなものは残っていなかった。切れかけの電球が放つ最期の瞬きに過ぎない。

ベルフェゴールの中で、エリオットとメディアの違いがつかなくなっていた。

年齢には開きがあり、性別さえ違うというのに、一緒の組織に所属し、戦争に加担する己の研究に対し後ろめたさを感じていたという共通点だけで、主の姿を重ねていた――その思念が、エリオットを守りたかったという慙愧(ざんき)と混ざり合いベルフェゴールを突き動かしている。

 アトラスを操作、荷電粒子ビームとヴァンたちの間に軀を割り込ませる。強烈なエネルギーが荒れ狂い、アトラスを押しのけようとした。

 自分に残されたすべてを注ぎ込み、アトラスを踏ん張らせその場に留まらせる。

「ニゲロ!」スピーカーから漏れた音声は、ひび割れていた。

 その言葉に背中を押されたかの如く、ヘリが空に舞い上がる。空を()け、都市の外縁――そして、外へと向かった。

 その後ろ姿に、彼の心は満たされる。

 ついに、荷電粒子ビームがアトラスの軀を打ち砕いた。……崩壊する瓦礫と同調するように、ベルフェゴールの衝動も静かに霧散する。


      †


 荷電粒子ビームの射程範囲から外れ、そして復讐の女神(ネメシス)の姿も見えなくなった。

「なんでかな?」ぽつり、とヴァンは独語を漏らす。

「――多分、大事な人と私を重ねてたんだと思う」

 それに、メディアが応えた。

 冥福を祈るように目を閉じた彼女の顔を、ヴァンは一瞥する。

(そうか。最期に望みを叶えられたんだ……)

 哀れなオートマータの死が絶望でなかったことを知り、亡くなった師に代わりに彼は静かに喜んだ。


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