EP 6
ファミレスのサラダで神々の魔力が大暴走!?〜気弱な農夫、無自覚に世界の最高位(調停者)たちの胃袋を鷲掴みにする〜
ルナミスキング・ポポロ支店、通称『ルナキン』。
広々とした店内は、冒険者や商人、非番の兵士たちで賑わっていた。
僕は案内された端っこのテーブル席に座り、ドリンクバーで注いできたメロンソーダをストローでちゅうちゅうと吸っていた。
「ふぅ……。農作業の後の炭酸は体に染みるなぁ」
メニューを眺めながら、自分へのご褒美に『ルナミスバーガーセット』でも頼もうかと考えていると、店内の奥――少し隔離された豪華な『VIP席』の方から、何やら騒がしい声が聞こえてきた。
◇ ◇ ◇
同じ頃、ルナキンのVIP席。
そこには、アナスタシア世界における最強の存在、『調停者』の三柱が顔を揃えていた。
「あーもう、やってらんないわよ! なんで不死鳥の私が、魔物の間引きから人間同士の小競り合いの仲裁までワンオペでやらなきゃいけないの!? 過労死しちゃうわよ!」
美しい赤髪を振り乱し、テーブルに突っ伏して愚痴をこぼしているのは、不死鳥フレア(自称・永遠の十七歳、実態は過労気味のシングルマザー)。
「うるせぇなババア。文句があるならルチアナ(女神)に言えよ。俺はこれからパチンコ『CR異世界王道トラックでドン!』の確変を打ちに行かなきゃならねえんだ。時間が惜しい」
マルボロ・アイスブラストを吹かしながら、気怠そうにスマホをいじっているのは、銀髪の青年――狼王フェンリル。
「ふん、貴様ら相変わらず俗物極まりないな。我を見ろ、豚骨スープの乳化具合に全精力を注ぐため、信者からの祈りなど全て着信拒否にしているぞ」
腕を組み、堂々と己の職務放棄を宣言するのは、イケオジの姿をした竜王デューク。
世界のバランスを保つべき調停者たちは、揃いも揃って職務怠慢と疲労の極致にあった。
そんな彼らのテーブルに、ルナキンの店長が恭しく巨大なサラダボウルを運んできた。
「お待たせいたしました。本日の特別裏メニュー、『月見大根とネタキャベツの特製シャキシャキサラダ・太陽芋のポテサラ添え』でございます」
「あら、サラダ? 私、最近お肌の調子が最悪だから、ビタミン取らないと……」
フレアは気怠げにフォークを取り、ネタキャベツの葉と月見大根を刺して、口に運んだ。
シャキッ。
新鮮な野菜が、口の中で弾ける。
――その瞬間。
「……え?」
フレアの瞳孔が、カッと見開かれた。
口いっぱいに広がる、暴力的なまでの『旨味』と『生命力』。
ネタキャベツの極上の甘み、月見大根の瑞々しさ、そして太陽芋の濃厚なコク。
それだけではない。野菜を咀嚼し、飲み込んだ瞬間――フレアの枯渇していた魔力が、爆発的な勢いで回復し始めたのだ。
「な、な、何よこれえええええっ!?」
ボォォォォォォッ!!
フレアの全身から、制御を失った不死鳥の『紅蓮の炎』が間欠泉のように噴き上がった。
疲労困憊だった身体が羽毛のように軽くなり、徹夜明けの肌荒れが一瞬でツヤツヤのプルプルに生まれ変わる。
「おいコラ、店内で火を出すな熱ぃ……ッ!?」
文句を言おうとしたフェンリルが、つられてサラダを一口食べた途端、彼の体からも絶対零度の『氷のオーラ』が猛吹雪のように吹き荒れた。
「ガァッ!? なんだこの魔力含有量は!? 細胞の隅々まで力が漲ってきやがる……!」
「貴様ら、はしたないぞ。たかが草風情で……ぬぉぉぉぉぉっ!?」
デュークもまた、太陽芋のポテサラを口にした瞬間、瞳を黄金に輝かせ、凄まじい『竜の覇気』を撒き散らし始めた。
ユリウスのユニークスキル【豊穣の神】がもたらす隠し効果、『神気還元』。
彼が育てた野菜は、食べるだけで対象のHP・MPを限界突破して全回復させ、さらには強烈なバフを付与する『神の霊薬』そのものだったのだ。
「て、店長ぉっ!!」
魔力暴走を撒き散らしながら、フレアがバンッ!とテーブルを叩いて立ち上がった。
「このサラダ、一体どこで仕入れたの!? こんなの、世界樹の葉っぱを丸かじりするより魔力が回復するじゃない! どこのバケモノ農家が作ったのよ!」
「ひぃぃっ! あ、あの端っこの席でメロンソーダを飲んでいる、新入りの農夫さんです!」
店長が震える指で示した先。
そこには、ドリンクバーのグラスを両手で持ち、ストローを咥えたままオドオドしている一人の青年の姿があった。
◇ ◇ ◇
「(なんか、VIP席ですごいオーラが爆発してるんだけど……。やっぱり都会(?)のファミレスは治安が悪いなぁ)」
僕は極力目を合わせないようにして、メロンソーダをちゅうちゅう吸っていた。
すると、ズシン、ズシン、と重い足音がこちらへ向かってくる。
「おい、そこのお前」
「ひぃっ!?」
顔を上げると、そこにはヤンキーのような目つきの銀髪の青年と、威圧感たっぷりのイケオジ(デューク)、そして無駄に色気のある赤髪の美女が、僕のテーブルを囲むように見下ろしていた。
三人とも、全身から凄まじいオーラ(覇気)を放っている。
前世の知識で言えば、完全に『路地裏でカツアゲしてくるヤカラ』の構図だ。
「あ、あ、あのっ! お金ならありません! さっき野菜を売ったお金は、リーザさんの食費にしないと……っ!」
「金なんか要らねえ。お前、あのサラダの野菜を『作った』ってのはマジか?」
銀髪の青年が、テーブルに両手をついて僕に顔を近づけてくる。
タバコ(アイスブラスト)の匂いがした。怖い。
「は、はい……。もしかして、虫でも入ってましたか!? すみません、まだ農業始めたばかりで無農薬なもので……!」
「虫ィ!? 違うわよ!」
赤髪の美女が、ドンッ!とテーブルを叩く。
「あんなの、ただの野菜じゃないわ! あんた、一体自分の畑にどんな魔法をかけたの!? おかげで私の徹夜の疲労と肌荒れが、一瞬で完全回復しちゃったじゃないの!」
「……え? 美味しい野菜を作ったら、健康になるのは当たり前では……?」
僕が首を傾げると、イケオジが「馬鹿な……」と呟いて額に手を当てた。
「(この男……自分の異常性に気づいていないのか? いや、それよりも……)」
三人の調停者たちは、至近距離で僕を観察し、一様に息を呑んだ。
「(なんだ、この深淵のような魔力は……。一見するとただの気弱な農夫にしか見えない。だが、その魂の奥底には、我々『調停者』すら凌駕するほどの、絶対的な神の力が眠っている……!)」
勝手に冷や汗を流し始める三人。
僕はただ、彼らが僕の野菜を食べて元気に(?)なってくれたのなら、それでいいやとホッとしていた。
「あの……お口に合ったのなら、良かったです。また明日も納品に来ますので、よければ食べてくださいね」
僕がオドオドしながら愛想笑いを浮かべると、三柱の神々はゴクリと喉を鳴らし、なぜか居住まいを正して深く頭を下げた。
「……あ、ああ。楽しみにしている」
「アンタの野菜、また買わせてもらうぜ」
「明日も絶対来るから! なんなら毎日通うわ!」
「えっ、あ、はい。ありがとうございます……?」
なんでこの人たち、急に敬語っぽくなったんだろう。
まあいいか。お客さんが増えるのはいいことだ。
僕は残りのメロンソーダを飲み干し、ルナキンを後にした。
――しかし。
このルナキンの店内の一部始終が、天界が管理する動画配信プラットフォーム『ゴッドチューブ』の隠しカメラによって、世界中の神々へ向けてリアルタイムで配信されていたことを、僕はまだ知る由もなかったのだ。
最後までお読みいただき、ありがとうございます!
「VIP席の神々、サラダ一口で大暴走ww」
「主人公、不良に絡まれていると勘違いしてペコペコ」
「調停者たち、ユリウスの底知れぬ力に戦慄!」
と少しでも楽しんでいただけましたら、
ぜひページ下部にある【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】に押して応援していただけると、執筆のモチベーションが爆上がりします!
(皆様の星とブックマークが、ゴッドチューブのPV(再生数)に繋がります!)
次回、「【神界視点】ゴッドチューブ大バズり〜天界の神々がスパチャを投げまくる〜」。
明日も更新予定ですので、ぜひ【ブックマーク】をしてお待ちください!




