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追放された気弱な氷魔法剣士、辺境で農業無双~絶対零度と極上野菜で、なぜか神々や最強女子たちから溺愛されています~  作者: 月神世一


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EP 5

【豊穣の神】の真価と、変異ポーンの敗北〜死の荒野を一瞬で神の庭に変える農夫〜

 たった数分で、見渡す限りの荒野が極上の大農園へと変貌した。

 丸々と太った『月見大根』、黄金色に輝く『太陽芋』、そして新鮮な『ネタキャベツ』が、ふかふかの黒土から顔を覗かせている。

「よしよし、みんな立派に育ったな。これなら村長さん(キャルルさん)も喜んでくれるだろう」

 僕は腰を下ろし、一番大きなネタキャベツを手に取って収穫しようとした。

『ヒッ……! や、やめてくれ! 俺を食べないでくれぇ! そうだ、村長のキャルルが昨日の夜、自室のベッドで「ユリウス君……えへへ……♡」って言いながら、人参柄の抱き枕に頬擦りしてたって特ダネを教えるから!』

「…………」

 ネタキャベツが、いきなり強烈な三面記事(しかも村長のプライベート)を大声で暴露し始めた。

 これが噂に聞くネタキャベツか。美味しいネタ(スキャンダル)を喋るほど、葉の甘みが増すという魔界の野菜。

「(キャルルさん、そんなことしてるのか……いや、聞かなかったことにしよう。うん)」

 僕はキャベツの悲鳴を無視して、サクッと根元を切り落とした。

 ネタキャベツは「ぎゃあぁぁ……」と断末魔を上げ、それと同時に葉がツヤツヤと輝き、極上の甘み成分が全体に行き渡った。

「さて、次は……」

 僕が次の作業に移ろうとした、その時だった。

「……おい、新入り」

 背後から、低くドスの利いた声がした。

 振り返ると、そこには全身を植物の蔓や葉で覆われた、人型の存在が立っていた。

 手には、金属の光沢を放つ恐ろしく鋭利な『巨大なネギ』を握っている。

「ひぃっ!? ま、魔獣!?」

「魔獣じゃねえ、ネギオだ。世界樹の端末であるポーンの突然変異体、そしてこの村で一番の知恵者にして農家兼教師……って、今はそんなこたぁどうでもいい」

 ネギオと名乗った植物人は、手にした巨大なネギ――『ネギカリバー』の切っ先を、僕の鼻先に突きつけてきた。

 ヒュッ、と空気が鳴る。鋼鉄すら斬り裂くというネギの刃先から、凄まじいプレッシャーが放たれていた。

「あわわわ……っ! な、何か僕、怒らせるようなことしましたか!? 勝手に村の土を弄ったから!? すみません、ちゃんと元に戻しますから命だけは……っ!」

「馬鹿野郎、ちげえよ」

 ネギオは、信じられないものを見るような目で、僕の足元の黒土を見下ろした。

「お前……さっき、何をした?」

「えっ?」

「とぼけんじゃねえ。この土地は、過去に猛毒の魔獣が死んだせいで、土壌の魔力循環が完全に死滅した『死の荒野』だ。俺たちポーンの植物操作能力をもってしても、百年は浄化にかかると言われていたんだぞ」

 ネギオはギリッと歯を食いしばり、言葉を絞り出すように言った。

「それを、お前は……たった数分、指を鳴らしただけで極上の黒土に変えやがった。しかも、魔力を注ぐだけで種から収穫までを完了させる『超神速育成』……。そんな芸当、ただの魔法やスキルじゃ不可能だ」

「あ、えっと、それは僕のユニークスキルでして……」

「わかってる。わかってるさ。俺は世界樹の端末だ。お前から放たれる魔力の波長が、ただの人間のものではないことぐらいな」

 ネギオはゆっくりとネギカリバーを下ろし、そして――。

 ドサッ。

 なんと、僕の目の前で、両膝を突いて深く頭を下げたのだ。

「ええええっ!? ちょ、ちょっとネギオさん!? どうしたんですか!?」

「……完敗だ。農夫としても、魔力操作の精度としても、俺はお前の足元にも及ばねえ」

 ネギオの声には、悔しさと、それ以上の深い畏敬の念が混じっていた。

「俺のネギカリバーは鋼鉄を斬る。だが、お前のその『生み出す力』は、死んだ大地すら生き返らせる。……アンタ、本物の『バケモノ』だぜ。いい意味でな」

「いや、バケモノって……僕はただ、美味しい野菜が食べたいだけで……」

 僕がオロオロしていると、ネギオは顔を上げ、ニヤリと笑った。

「今日から、アンタを『マスター』と呼ばせてもらうぜ。俺はこの村の教師もやってるが、アンタからは学ぶことが多そうだ。よろしく頼むぜ、マスター・ユリウス」

「ひぃぃ、マスターとかやめてください! ただのユリウスでいいですから!」

 こうして、僕のポポロ村での農業ライフに、毒舌だけど妙に義理堅い変異ポーンのネギオが相棒として加わることになった。

    ◇ ◇ ◇

 その日の夕方。

 僕は収穫したばかりの野菜を荷車に積み、ポポロ村の中央にある巨大な施設へと向かっていた。

『ルナミスキング・ポポロ支店』。

 通称、ルナキン。二十四時間営業で、冒険者から村人、さらには神々(?)までが集う、この世界で最もカオスなファミレスだ。

 僕は、ここで収穫した野菜を買い取ってもらおうと考えていた。

 村長のキャルルさんに許可をもらい、ルナキンの厨房の裏口から声をかける。

「すみません、野菜の納品に来ました。ユリウスと申します」

「おお、待ってたぞ新入り! キャルル村長から『凄腕の農夫が来る』って聞いてたんだ!」

 厨房から出てきたのは、恰幅の良い店長だった。

 彼は僕の荷車を見るなり、目を丸くした。

「おいおい……なんだこの野菜は。月見大根ははち切れんばかりに太ってるし、太陽芋は魔力の光を帯びてるじゃねえか。それにこのネタキャベツ、葉のツヤが尋常じゃねえ……」

「あの、どうでしょうか? 買い取ってもらえそうですか?」

「買い取るなんてレベルじゃねえ! これは国宝級の食材だぞ! よし、特別価格で買い取らせてもらう。おい、すぐにこれを調理して、VIP席のお客に出すんだ!」

 店長の指示で、僕の野菜たちはあっという間に厨房へと運び込まれていった。

 手元には、予想の数倍の銀貨が支払われた。

「わぁ……これなら、リーザさんの食費も当分は賄えそうだな」

 僕はホッと胸を撫で下ろし、せっかくだから自分も夕飯を食べていこうと、ルナキンの客席へと足を向けた。

 しかし、僕はまだ知らなかったのだ。

 ルナキンの『VIP席』に、この世界の頂点に君臨する『調停者(神様)』たちが、偶然にも顔を揃えていたということを。

 そして、僕の作った野菜が、彼らの味覚と魔力を根底から狂わせてしまうということを。

最後までお読みいただき、ありがとうございます!

「キャルル村長の黒歴史を暴露するネタキャベツww」

「ネギオ、開始数分で完全敗北からの弟子入り!」

「次回、ルナキンで神々(調停者)にメシテロ炸裂!」

と少しでも楽しんでいただけましたら、

ぜひページ下部にある【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】に押して応援していただけると、執筆のモチベーションが爆上がりします!

(皆様の星とブックマークが、ネギオの忠誠心に変わります!)

次回、「ルナキンでのメシテロと神々の邂逅」。

明日も更新予定ですので、ぜひ【ブックマーク】をしてお待ちください!

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