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追放された気弱な氷魔法剣士、辺境で農業無双~絶対零度と極上野菜で、なぜか神々や最強女子たちから溺愛されています~  作者: 月神世一


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EP 4

ポポロコーポの怪異〜不法侵入アイドルと、死の荒野を任された気弱な農夫〜

「……な、何をしてるんですか?」

 僕は浴室の扉を半開きにしたまま、目の前の信じられない光景に問いかけた。

 僕に割り当てられたポポロコーポA301号室の浴室。その洗い場の隅に原木がズラリと並べられ、芋ジャージ姿のリーザさんが霧吹きでせっせと水をかけているのだ。

「何って、見ればわかるでしょう? 椎茸の栽培ですわ」

「見ればわかりますけど! ここは僕のお風呂ですよ!? 椎茸栽培なんて即刻却下です! というか、どうやって部屋の中に入ったんですか! 鍵は確りかけていたはずですが!」

 僕がパニックになりながら問い詰めると、リーザさんは悪びれる様子もなく、胸を張ってドヤ顔を決めた。

「ふふんっ。さっきユリウス様が部屋を案内された時、鍵をテーブルの上に置きましたわよね? あの隙に、私が持っていた『固形石鹸』に鍵をギュッと押し付けて型を取り、その辺に落ちていた『釘』を削って合鍵を作ったんですの!」

「……は?」

「アイドルたるもの、どんな過酷な環境でも生きていけるサバイバル技術(ポイ活や試食品強奪など)が必須なんですわ!」

 恐ろしい才能だ。

 この地下アイドル人魚姫、生命力と図太さがゴキ……いや、ネクロバグ並みじゃないか。

「ユリウス様のご飯係としての手腕を見込んで、しばらくここに居候させていただきますわ。家賃は払えませんが、代わりに私のお腹をいっぱいにさせてあげる権利を授けますの!」

「それ、僕にとって何のメリットもないですよね……」

 ため息をつきつつも、僕はリーザさんを追い出すことができなかった。

 だって、彼女から鳴り響く腹の虫の音が、あまりにも悲痛だったからだ。

「……仕方ないですね。椎茸は片付けますから、とりあえず何か作りますよ」

「やったあぁぁぁっ! ユリウス様、一生ついていきますわ!」

 結局、僕は彼女のために『米麦草のチャーハン』を作ってやる羽目になった。

 バクバクと凄まじい勢いで食べるリーザさんを見ながら、僕は(まぁ、一人でご飯を食べるよりは賑やかでいいか)と、すっかりオカン目線になっていたのだった。

    ◇ ◇ ◇

 翌朝。

 僕はポポロ村の村長室(というか、村の集会所)に呼ばれていた。

「おはよう、ユリウス君! よく眠れた?」

「あ、キャルルさん、おはようございます。おかげさまで」

 満面の笑みで迎えてくれるウサ耳村長のキャルルさん。

 しかし、彼女の案内でやってきた『僕に割り当てられた畑』を見て、僕は絶句することになった。

「えっと……キャルルさん。ここが、僕の畑ですか?」

「そうよ! 期待の大型新人であるユリウス君に、特別に用意した特区よ!」

 目の前に広がっていたのは、見渡す限りの『死の荒野』だった。

 赤茶けたヒビ割れた大地。ところどころにゴツゴツとした岩が転がり、雑草一本生えていない。

 どう見ても、農地として機能する要素がゼロの不毛地帯だ。

「……あの、これはどう見ても作物が育つ環境じゃないと思うんですが」

「うん、実はここね、昔、毒を持った魔獣の群れが暴れまわったせいで、土の栄養が完全に死んじゃってるの。村の農家もみんな匙を投げた呪われた土地なんだけど……」

 キャルルさんは僕に顔を近づけ、上目遣いでじっと見つめてきた。

「ユリウス君なら、なんとかしてくれるんじゃないかなーって。……ダメ、かな?」

「(ひぃっ! 村長からの重すぎるプレッシャー!)」

 ここで「無理です」なんて言ったら、昨日せっかく入れてもらった村から叩き出されるかもしれない。

 それに、前世から農学部で土いじりに命を懸けてきた僕の血が、この死んだ土を見て騒いでいるのも事実だった。

「……わかりました。やれるだけ、やってみます」

「本当!? やったぁ! ありがとうユリウス君! やっぱり私の目に狂いはなかったわ!」

 キャルルさんはピョンピョンと跳ねて喜び、村の仕事に戻っていった。

「さて……やるか」

 僕は麦わら帽子を深く被り直し、オーバーオールの袖をまくった。

 周囲には誰もいない。

 僕は、ひび割れた大地に両手をついた。

「ユニークスキル――【豊穣の神】」

 僕の魔力が、大地へと染み込んでいく。

 通常、土壌改良には気の遠くなるような時間と労力が必要だ。

 しかし、僕のスキルは文字通り『神格級の生産権能』である。

「『超神速育成(ハイ・グロース)』……発動」

 ズズズズズッ……!!

 僕の手を中心に、地響きのような音が鳴り始めた。

 赤茶けた死の土が、まるで波打つようにうねり、一瞬にしてふかふかの『極上の黒土』へと変色していく。

 毒素は完全に浄化され、魔力が土壌の微生物を活性化させ、最強の肥料へと変化したのだ。

「よし、土は完璧だ。次は種まきだな」

 僕はマジックボックスから、『月見大根』や『太陽芋』、そして『ネタキャベツ』の種を取り出し、黒土にパラパラと撒いていく。

 本来なら収穫まで数ヶ月かかる作物たち。

 しかし、僕が再び魔力を流し込むと――。

 ポンッ! ポポポンッ! ドバババババッ!!

 撒いた種が瞬く間に芽吹き、茎を伸ばし、葉を広げ、たった数秒で巨大な実をつけ始めた。

 満月のように丸々と太った月見大根。

 太陽の光をたっぷり浴びて黄金に輝く太陽芋。

 そして、青々とした葉を何重にも巻いた極上のネタキャベツ。

「ふぅ……。とりあえず、朝の作業はこんなもんかな」

 見渡す限りの死の荒野が、たった数分で『大陆一の豊穣な大農園』へと変貌を遂げた。

 僕は満足げに額の汗を拭った。

 ――しかし、僕はこの時気づいていなかった。

「……おい、嘘だろ……」

 畑の端の木陰で。

 ドンガン地下帝国鍛冶師通信講座1級の資格を持つ変異ポーン(植物系アンドロイド)の『ネギオ』が、僕の規格外の御業を、目をひん剥いて一部始終目撃していたことに。

「あの魔力操作……俺のネギカリバーより鋭く、深く、繊細だ。死の荒野を一瞬で神の庭に変えやがった……ッ! アイツ、本物のバケモノ(マスター)じゃねえか……!」

 僕がただの「ちょっとお人好しな新人農夫」として平和に暮らす計画は、すでにこの時点で音を立てて崩れ始めていたのだった。


最後までお読みいただき、ありがとうございます!

「リーザのサバイバル力(合鍵錬成)がヤバすぎるww」

「キャルルの無茶振りに、チートで完全回答!」

「ネギオ(変異ポーン)が早くもドン引きしている……」

と少しでも楽しんでいただけましたら、

ぜひページ下部にある【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】に押して、ユリウスの畑の作物を応援していただけると嬉しいです!

(皆様の星とブックマークが、ネギオの畏敬の念に変わります!)

次回、「【豊穣の神】の真価と、ルナキンでのメシテロ騒動」。

明日も更新予定ですので、ぜひ【ブックマーク】をしてお待ちください!

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