EP 13
神格化〜エビ天大宴会でスローライフを満喫していたら、空から『神様任命通知』が降ってきました〜
ジュワァァァッ!
ポポロ村の広場に、香ばしいごま油の匂いが立ち込める。
僕が手際よく油の海に放り込んでいるのは、先ほどまで村を絶望に陥れていた最凶の古代生物兵器『死蟲機』の装甲から取り出した、純白の身(エビ味)だ。
「はい、死蟻機の特大天ぷら、揚がりましたよ! 熱いうちに食べてくださいね!」
「わぁぁっ! いただきまーすの!」
芋ジャージ姿のリーザさんが、揚げたての天ぷらにかぶりつく。
サクッという小気味良い音と共に、彼女の顔がぱぁぁっと輝いた。
「んんんん〜〜っ! 外はサクサク、中はプリップリで甘いですわーっ! ユリウス様、もう十個おかわりですの!」
「こらリーザ、あんたばっかり食べないの! ……はい、ユリウス君。あーん♡」
ウサ耳村長のキャルルさんが、僕の口元に天ぷらを運んでくる。
その瞳には、先ほどから一貫して『愛する夫の帰りを待つ新妻』のような、甘ったるい(そして少し重い)光が宿っていた。
「あ、ありがとうございますキャルルさん。でも僕、今揚げてる最中なので……」
「いいから、あーん♡ ……それとも、私の手からは食べられないって言うの?」
「た、食べます! あむっ!」
僕は逃げられないと悟り、大人しく天ぷらを口に含んだ。うん、美味しい。僕が魔法で育てた太陽芋から絞った特製油が、最高にマッチしている。
「ふふっ。美味しい? ユリウス君が私の村にずっといてくれるなら、毎日あーんしてあげるからね♡」
キャルルさんが僕の腕にギュッと抱き着いてくる。タローマン製のオーバーオール越しでも伝わる温もりに、僕の顔は真っ赤になってしまった。
「キャ、キャルル様! ユリウスにひっつくのはずるいぞ! 私だって……その、天ぷらをもらいたいのだが……」
モジモジしながら近づいてきたのは、ケンタウロス種の自警団長マンミアさんだ。
顔を朱に染め、パイルバンカーを背中に回して乙女モードになっている。
「はい、マンミアさんもどうぞ。いっぱい食べて、自警団の疲れを癒してくださいね」
「あっ……う、うむ! ユリウスの愛(天ぷら)、確かに受け取った! むぐっ……うまい! なんという旨味だ……これが古代兵器だとは到底信じられん!」
広場では、村人たちが死蟲機の天ぷらを肴に、イモッカ(芋酒)で大宴会を繰り広げている。
誰も死なず、村の被害も最小限。
僕は揚げ物をしながら、夜空に浮かぶ丸い月を見上げた。
「(……よかった。実家の帝国から追放された時はどうなるかと思ったけど)」
父上からは無能だと見下され、理不尽に追い出された。
けれど、あのまま実家で『誰かを傷つけるための剣』を振るい続けるより、ここでこうして『美味しいご飯を作るための包丁』を握っている方が、何百倍も幸せだ。
ふかふかの土があって、美味しい野菜が育って。
ちょっと個性的(ヤンデレだったり地下アイドルだったり)だけど、優しくて愉快な村のみんながいて。
「マスター、油の温度下がってきてるぜ」
「あ、すみませんネギオさん。今、火力を上げますね」
横でネギカリバーを器用に使って天ぷらをひっくり返すネギオに笑いかける。
うん。ここが僕の居場所だ。
このポポロ村なら、僕の夢だった『平穏な農業スローライフ』が、きっと叶うはずだ。
もう、争い事なんてごめんだ。これからは、土と野菜だけを相手に、静かに暮らしていこう――。
僕が心からそう決意し、安らかな微笑みを浮かべた、その時だった。
◇ ◇ ◇
――ピロリンッ!!
突如、ポポロ村の上空から、陽気で甲高い電子音が鳴り響いた。
夜空が真昼のように明るく発光し、雲を割って『黄金の光の柱』が、僕の真上へと一直線に降り注いだのだ。
「な、なんだ!?」
「敵襲かッ!?」
マンミアさんたちが武器を構え、宴会が騒然となる。
しかし、光の柱の中から現れたのは、敵や魔獣ではなかった。
それは、空中に浮かぶ超巨大な『半透明のシステムウインドウ』だった。
「え……?」
僕が呆然と見上げる中、システムウインドウには、煌びやかな虹色の文字が次々とタイプされていく。
『祝・ゴッドチューブ同時接続数 5億人突破!!』
『累計魔力還元額、銀河系ランキング第一位を達成しました!』
「ごっどちゅーぶ……? すぱちゃ……?」
僕が前世のネット用語らしき単語に首を傾げていると、システムウインドウはさらに『ファンファーレの音』と共に、デカデカとした金色の文字を映し出した。
『世界運営予算への多大なる貢献を評価し、大宇宙行政組織GOD(主神オリン)の特例措置により、貴方のステータスをアップデートします!』
『ユリウス・レオパルド。貴方を【第4種惑星創造神格公務員見習い】に任命します!』
ポンッ。
間抜けな音と共に、僕の頭の上に、光り輝く『初心者マーク(神様見習いの証)』が浮かび上がった。
「……………………は?」
静まり返る広場。
僕の頭の上にフワフワと浮いている初心者マークと、空に輝く『神格公務員任命』の文字。
村人たちが、全員揃ってあんぐりと口を開けている。
「神……様……?」
「ユ、ユリウス君が、人間の枠を通り越して、神様に……!?」
キャルルさんが震える手で口元を覆い、マンミアさんがパイルバンカーを取り落としてガシャァンと音を立てる。
ネギオに至っては、「マスター……ついに世界樹の主神と同格になっちまったのかよ……」と白目を剥いて天を仰いでいた。
違う。違う。違う!
僕はただの人間だ! 農学部出身の、ちょっと魔力が多いだけの村人Aだ!
なんだ神格公務員って! なんで僕のステータス画面が勝手に全宇宙の神界と直結してるんだ!
「お、王子様どころか……ゴッド・ユリウス様ですわぁぁぁぁっ!!」
「ははぁーっ!! 神様、どうか今年の豊作をぉぉっ!」
リーザさんが真っ先に土下座をかまし、それに釣られるようにして、村人たちが一斉に僕に向かってひれ伏し、祈りを捧げ始めた。
やめて! 僕を拝まないで! 僕はただの農夫だから!
「い、いやぁぁぁぁぁぁっ!! 僕の、僕の平穏なスローライフがああああぁぁぁっ!?」
絶望のあまり頭を抱えて絶叫する僕の声は、村人たちの熱烈な祈り(と、頭上の初心者マークが放つ神々しい後光)にかき消されていく。
気弱な氷魔法剣士が、ただの農夫として平穏に暮らすはずだった辺境の村。
しかし、天界の予算難とダメ神たちのオタ活の犠牲となり、図らずも【神様】へと昇格させられてしまった僕の、本当の『規格外な日常』は、ここから幕を開けるのだった。
(第一章 完)
『追放された気弱な氷魔法剣士、辺境で農業無双〜絶対零度と極上野菜で、なぜか神々や最強女子たちから溺愛されています〜』
これにて第一章、完結です!
最後までお付き合いいただき、本当にありがとうございました!
「スローライフしたいのに、強制的に神様にされて草」
「村人から拝まれて絶望するユリウスww」
「ここからが本当の無自覚無双の始まりだ!」
と少しでも楽しんでいただけましたら、
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(※第二章も明日から連載開始予定です。ぜひ【ブックマーク】を忘れずにお願いいたします!)




