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追放された気弱な氷魔法剣士、辺境で農業無双~絶対零度と極上野菜で、なぜか神々や最強女子たちから溺愛されています~  作者: 月神世一


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EP 11

絶対零度(アブソリュート・ゼロ)〜三徳包丁から放たれる、音のない氷の芸術〜

 パキパキパキパキィンッ……!!

 僕が引き抜いた『三徳包丁』の刃先から、大気中の水分が白煙を上げて凝固していく。

 瞬く間に氷の結晶が連なり、1メートルを超える白銀のロングソードへと変貌を遂げた。

 刀身から放たれる極寒の冷気が、周囲の空間そのものを凍てつかせる。

『ギジジジィィィィッ!!』

 群れの奥に控えていた『合成死蟲将軍機(ネクロキメラ・ジェネラル)』が、不気味な機械音を響かせた。

 カマキリのような巨大な鎌を持つその機体は、腹部に内蔵された高圧のエネルギー炉を臨界まで高めている。

 赤い光が腹部から溢れ出し、周囲の空気が歪むほどの熱量が放射されていた。

 このまま村を道連れに自爆する気だ。

「ユリウス! ダメだ、あれはもう爆発する! 早く逃げろッ!!」

 後方からマンミアさんの悲痛な叫びが聞こえる。

 でも、ここで僕が逃げたら、ポポロ村はクレーターになってしまう。キャルルさんも、リーザさんも、ネギオも、みんな死んでしまう。

 それに、あの機械の油や有毒ガスが撒き散らされたら、この土地の土壌は二度と元に戻らない。

「……逃げませんよ。僕の畑(りょうど)ですから」

 僕は『氷結晶創剣・三徳』を正眼に構えた。

 父上(ガレオン)から叩き込まれた、一切の無駄を省いた剣の型。

 そこに、僕自身の持つ規格外の魔力を、惜しみなく注ぎ込む。

 ――ズズゥンッ!!

 合成死蟲将軍機の腹部から、極太の熱線(ビーム)が放たれた。

 すべてを灰にする数千度の破壊の光が、僕に向かって一直線に迫り来る。

「(怖い。すごく怖い。でも……守るんだ)」

 僕は恐怖を押し殺し、熱線に向かって真っ向から踏み込んだ。

「――氷華一閃」

 白銀の刃を一振り。

「『絶対零度(アブソリュート・ゼロ)』」

 音もなく。

 本当に、一切の音もなく。

 僕の剣の軌道上が、青白い光に包まれた。

 迫り来ていた数千度の熱線が、剣と衝突した瞬間に『結晶化』していく。

 エネルギーの奔流が、爆発の熱が、光の粒子すらもが、絶対的な冷気によって一瞬にして『凍結』させられたのだ。

「……なっ!?」

 後ろで見ていたマンミアさんが、息を呑む音が聞こえた。

 凍りついた熱線の軌道を逆流するように、僕の放った絶対零度の斬撃が、合成死蟲将軍機の巨体を両断した。

 パァァァァンッ!!

 真っ二つに裂けた鋼鉄の機体が、爆発する間もなく分厚い氷に覆われる。

 それだけではない。

 僕の剣から放たれた極寒の冷気は、巨大な樹木に拘束されていた数万の死蟲機の群れにも伝播していった。

 ピキピキピキッ……!

 空で藻掻いていた死蜂機も、大地で蠢いていた死蟻機も。

 戦場にいたすべての死蟲機が、一瞬にして青白い氷の像へと変わっていく。

 細胞も、機械の駆動音も、爆発のエネルギーも。

 すべてが傷一つなく、完全に活動を停止した。

 ――静寂。

 圧倒的で、絶対的な静けさ。

 数万の群れが起こしていた喧騒は嘘のように消え去り、そこにはただ、太陽の光を浴びてキラキラと輝く『氷のオブジェの森』だけが広がっていた。

「ふぅ……よしっ」

 僕は魔力の供給を止めた。

 サラサラ……と氷の刀身がダイヤモンドダストとなって霧散し、手元にはただの『濡れた三徳包丁』だけが残る。

 僕は包丁を腰のホルダーに戻し、大きく深呼吸をした。

「よかったぁ……。ギリギリでしたけど、なんとか自爆を止められました」

 僕は安堵の溜め息をつきながら、振り返った。

 土壌への汚染は防げたし、村への被害も最小限で済んだはずだ。

「あ、あの……マンミアさん? キャルルさん? 大丈夫でしたか?」

 僕がオドオドと愛想笑いを浮かべながら声をかけると。

「……………………」

「……………………」

 キャルルさんも、マンミアさんも。

 自警団の兵士たちも、リーザさんも、ネギオも。

 全員が、腰を抜かしたまま、信じられないものを見るような目で僕を見つめていた。

 彼らの顔には、敵の大群を退けた安堵よりも、はるかに大きな『戦慄』と『恐怖』が張り付いているように見えた。

「え、えっと……?」

「ユリウス……お前、今の……」

 マンミアさんが、震える声で指を差した。

 その先にあるのは、見渡す限りの『氷の森』。

 僕が一瞬で作り上げた、敵を生かしたまま完全に封じ込めた平和的な(?)オブジェの群れだ。

「あっ! す、すみませんっ!」

 僕はハッとして、慌てて両手を合わせて頭を下げた。

「敵の装甲まで全部凍らせちゃって……これ、片付けるの大変ですよね! まさか『器物損壊』とかで弁償しろって言われませんよね!? ごめんなさい、すぐに溶かしてドワーフさんに修理出しますからっ!」

「……は?」

「(……殺した方がマシなレベルの悪魔だ……っ!)」

 僕が必死に弁解(?)する中、周囲の村人たちの間に、なんとも言えない絶望的な沈黙が流れた。

 誰も死ななくて本当によかったのに、なぜかみんなの顔が青ざめている。

 僕は、何か間違えたのだろうか?

最後までお読みいただき、ありがとうございます!

「熱線(ビーム)ごと凍らせる絶対零度!」

「包丁に戻ってからの、安定の『器物損壊』勘違いww」

「無自覚なサイコパス(本人は至って優しい)の誕生!」

と少しでも笑っていただけましたら、

ぜひページ下部にある【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】に押して応援していただけると、執筆のモチベーションが爆上がりします!

(皆様の星とブックマークが、ユリウスの弁償代の足しになります!)

次回、「敗北者たちと熱狂〜炎上神の台パンと、親父の絶望、そして神々の狂喜乱舞〜」。

明日も更新予定ですので、ぜひ【ブックマーク】をしてお待ちください!

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