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追放された気弱な氷魔法剣士、辺境で農業無双~絶対零度と極上野菜で、なぜか神々や最強女子たちから溺愛されています~  作者: 月神世一


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10/29

EP 10

蹂躙される畑と、気弱な農夫の静かなる怒り〜「そこから先は、僕の領土です」〜

 グチャリ。

 無機質な鉄の足が、僕の畑を踏み荒らしていく。

「あ……」

 僕が手塩にかけて育てた『太陽芋』の葉が引きちぎられる。

 丸々と太った『月見大根』が、無惨にも真っ二つにへし折られる。

 そして、今朝収穫しようと思っていた極上の『ネタキャベツ』が、死蟻機(ネクロアント)の巨大な顎でミンチのようにすり潰されていく。

『ギャアァァァッ……(村長は寝る時、お腹冷やさないように毛糸のパンツを……)』

 断末魔の特ダネと共に、ネタキャベツが泥に沈んだ。

「ユリウス! ダメだ、早く逃げろッ!!」

 前線でパイルバンカーを振るうマンミアさんが、血を吐くような悲鳴を上げた。

 キャルルさんもダブルトンファーで死蟲機を弾き飛ばしているが、多勢に無勢。彼女たちの体にも、無数の切り傷が刻まれ始めている。

 逃げなきゃ。

 普段の僕なら、間違いなく「ひぃぃっ!」と情けない声を上げて、全速力で安全な場所へ隠れていただろう。

 争い事は嫌いだ。痛いのも怖い。

 

 ――でも。

「……お願いですから」

 僕の口から出たのは、悲鳴ではなく、ひどく静かな声だった。

「僕の畑を、踏み躙らないでください」

 その声は、爆音の響く戦場にあって、なぜか全員の耳に不気味なほどはっきりと届いた。

 キャルルさんが、ハッとしてこちらを振り向く。

「ユリウス君……? ダメ、そっちに行っちゃッ――」

 僕の目の前に、三匹の死蟻機が躍り出た。

 強酸をポタポタと滴らせる巨大な顎が、僕の頭上へ振り下ろされる。

 リーザさんが「ユリウス様ぁっ!」と目を覆った。

 ガキンッ!!

 鈍い金属音が響き渡った。

 死蟻機の顎は、僕の頭に届いていなかった。

「……え?」

 キャルルさんが呆然と声を漏らす。

 僕の頭上には、いつの間にか大地から突き出した『極太の木の根』が、鋼鉄の盾のように幾重にも絡み合い、死蟲機の顎を完全に受け止めていたのだ。

「……せっかく、みんなで美味しいご飯を食べようと思ってたのに」

 僕はゆっくりと顔を上げた。

 恐怖は、もうない。

 あるのはただ、丹精込めて作った作物をゴミのように扱われたことへの、絶対的な『怒り』だけだった。

「土作りからやり直すのは、すごく大変なんですよ」

 僕が静かに右手を上げると、足元の『極上の黒土』が、まるで心臓の鼓動のようにドクン、と大きく脈打った。

 ユニークスキル【豊穣の神】。

 その力は、作物を育てるだけの平和なスキルではない。

 大地と植物の生命力を意のままに操る、神格級の『環境支配権能』だ。

「――『緑樹の絶対使役(プラント・ドミネーション)』」

 僕がその名を口にした瞬間。

 ゴゴゴゴゴゴゴゴッ……!!!!

 ポポロ村の大地が、爆発した。

 僕の足元から、大蛇か竜のような『巨大な樹木の根』が数千本、数万本と一斉に飛び出したのだ。

「な、なんだこれはァッ!?」

 マンミアさんが驚愕の声を上げる。

 彼女たち自警団を襲っていた死蟲機の群れの足元から、無数の根が槍のように突き出し、その鋼鉄の体を次々と空高く串刺しにしていく。

『ギ、ギジィィィィッ!?』

 空を覆っていた死蜂機(ネクロワスプ)の群れに対しても、大地から射出された無数の『茨の鞭』が空気を裂いて襲い掛かった。

 鞭は正確に死蜂機の羽を絡め取り、そのまま地面へと激しく叩きつけて粉砕する。

「うそ……っ、これ、全部ユリウス君が……!?」

 キャルルさんが、へなへなとその場に座り込んだ。

 たった数秒。

 村を絶望の底に突き落としていた数万の死蟲機の大群は、完全に僕の操る『森』に飲み込まれていた。

 すべての機械蟲が、空中で太い樹木に絡め取られ、ギリギリと締め上げられている。

 生きているのか死んでいるのかわからない鉄の塊たちが、不快な駆動音を立ててもがいていた。

「マスター……やりすぎだぜ」

 ネギオが引きつった笑いを浮かべながら、ネギカリバーを肩に担いで呟く。

 しかし、僕の怒りはまだ収まっていなかった。

「……害虫は、きちんと駆除しないといけませんね。でも、ここでただ潰して殺すだけだと、機械の油や変な体液で、せっかくの土が汚れてしまいます」

 僕は、無数の巨大な樹木が蠢く戦場の中央を、ゆっくりと歩き出した。

 目指すのは、群れの後方に控えている、一際巨大な機体。

 炎上神ワイズが仕込んだと思われる、『合成死蟲将軍機(ネクロキメラ・ジェネラル)』だ。

 そいつは、拘束されながらも、腹部から村ごと吹き飛ばすような超高圧の熱線を放とうと、赤い光を充填し始めていた。

「ユリウス様! あれはヤバいですわ! 自爆する気ですの!」

 リーザさんの悲鳴が聞こえる。

 確かに、あんな巨大なエネルギーの塊が爆発したら、いくら僕の樹木でも防ぎきれないかもしれない。村の被害も甚大だ。

 だから、爆発させる前に――『生きたまま』止める。

「――次は、凍らせます」

 僕は腰のホルダーに手を伸ばし、愛用の『三徳包丁』を静かに引き抜いた。

 大気中の水分が、急速に温度を奪われていく。

 周囲の空気が一瞬にして凍りつき、ダイヤモンドダストがキラキラと舞い散る。

 パキッ……。

 甲高い氷結音が、静まり返った戦場に響き渡った。


最後までお読みいただき、ありがとうございます!

「ついにユリウスがブチギレた!」

「農業チートの本当の恐ろしさ(広域制圧)!」

「そして、抜かれる三徳包丁……次回、絶対零度の無双劇!」

と少しでもワクワクしていただけましたら、

ぜひページ下部にある【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】に押して応援していただけると、執筆のモチベーションが爆上がりします!

(皆様の星とブックマークが、ユリウスの魔力供給源になります!)

次回、「絶対零度(アブソリュート・ゼロ)〜気弱な農夫の、音のない氷の芸術〜」。

明日も更新予定ですので、ぜひ【ブックマーク】をしてお待ちください!

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