第46話 偽称
これまではずっと速度低下を使って『大落下』を発動したけれど、僕の動き自体が遅くなってしまい使い勝手が悪かった。そこで改めて『大落下』を発動でき、かつ動きを制限されない方法を僕なりに考えてみた。
僕の仮説によると、『大落下』は僕の基礎能力や体調、それに加えて物理的な落下や転落などに反応し、発動させることができる。対象になる事象は意外なほど多く、自分自身にデバフをかけることでも発動してくれるみたい。
そこで動きが遅くなることで発動するなら、ほかの何らかな能力低下でも発動するんじゃないかと考えた僕は、数あるスキルの中からこれだというものを幾つかピックアップし習得した。その中の一つが魔力防御低下だ。
再び突進してきたスライムに手のひらを向けた僕は、正面から攻撃を受け止めた。すると直後、スライムの攻撃力が反転し、まるでプリンのように身体が弾けて離散した。
「うん、いい感じ。でもやっぱり魔力防御低下だと威力はイマイチだなぁ。僕の魔力分を上乗せしても、ほぼ等倍ってところかな」
スライムが落とした晶石を拾いながら呟く。やはり『大落下』の効果も発動する状態や状況、スキルの内容で効果が増減するらしく、魔力防御低下で得られる力は微々たるものらしい。
「ウタのその変なスキル、ホンマ便利やな。大落下やったっけ?」
「うん。でもこの力のことはみんなには黙っててね。あまり知られたくないから」
「そらそやろな。ま、人に教えられるほど俺も知らんのやけど」
先程ドロップした晶石で、ランクアップに必要なアイテムが揃った。そして今回のクエストが10回目の依頼となるため、このまま納品を終えればFランクにランクアップすることができる。
「そろそろ村へ戻ろうか。インフもいい?」
彼女に話を振ってみるが、どうにも素っ気なく頷くだけ。やっぱりメルビンでのことを気にしているのか、彼女の反応は悪いままだ。
帰り際、新たに現れたボイルベア(小型)とフォレストボアを一匹ずつ狩った僕は、その肉を手土産にパパス村の冒険者ギルドへと帰還した。小さな扉を開けて中に入ると、僕に気付いたレビンさんが「おかえりなさい」と手を振ってくれた。
「お疲れさま。今日も上手くいったみたいね、ウタさん」
「うん、おかげさまで。それにほら見てよ、小さなベアとイノシシも。今夜の食材にしようと思って」
「え!? 待ってください、ボイルベアを狩ったんですか。しかも単独で!?」
なんだかレビンさんの反応がおかしい。もしかして僕やっちゃった?
「そ、その、小さな個体だったので、僕でもどうにかなるかなって……」
「それだってボイルベアはEランクになりたての冒険者でも単独で倒せるかどうかで……。ところで、ウタさん?」
僅かに殺伐とした空気で近寄るレビンは、僕の手を引き、いつぞやの水晶玉の置かれたテーブルの前に座らせた。ついにきたと僕が顔を歪ませるのも気にせず、勘ぐるように質問した。
「レベルアップしてスライムやゴブリンを倒せるようになったとは聞いてましたが、やはりちゃんとレベルを測定いただいた方がいいみたいですね。この私に、内緒は許しませんよ!」
誤魔化すように笑った僕は、玉の上に手をかざした。
すると以前見たように、現在の僕のレベルが映し出された。
「あらら、凄いです! この短期間でレベルが32まで上がってますよ。ウタさん、本当に頑張ってますね」
これまたハハハと笑って誤魔化す。
何にしても、ひとまず僕はここで一つ胸を撫で下ろす。
まず第一に。実際の僕のレベルはこうである。
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レベル:578
HP : 97054 / 98354
MP :103088 / 109433
STR:2390
DEF:2377
DEX:2361
AGI:1933
INT:2263
MND:1489
LUK:9
CHA:916
SP :110118
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メルビンの戦い後に確認したところ、また知らぬ間にレベルが上がっていた。レベルアップの恩恵はベース値のアップだけなのか、大きな変化はみられなかったけども。
でもだからといって、この状況をギルド関係者に見られるのは絶対にマズい。
ポンさんにも相談してみたけど、やっぱり実際の数字は隠しておいた方がいいと言われ、僕はステータスの値を誤魔化す方法を模索することにした。
インフも言っていたけど、ヒューマンはスキルでステータスを修正することができるらしい。例に習って習得可能なスキル一覧を眺めていたところ、『偽称』というスキルを発見。詳細を確認したところ、なんともまぁ都合がいいことに、自らの情報を欺くことができるスキルと説明がのっていた。
すぐさま僕は偽称のスキルを習得しステータス値を修正。どうにか人に見せられる数字に能力値を編集することに成功していた。
「あら? ですが魔法ランクはまだ1のままなんですね。ウタさん、魔法の習得はしないんですか?」




