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人生フリーフォール状態の僕が、ユニークスキル【大落下】で逆に急上昇してしまった件~世のため人のためみんなのために戦ってたら知らぬ間に最強になってました  作者: THE TAKE
第1章 パパス村編

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第36話 蛮族


 僕らの挑発に不敵な笑みを浮かべたカマキリは、「だったら刻んでやろうじゃねぇか」と両腕の鎌を振り上げた。速度低下(スロウ)のトリプル掛けで迎え撃つ僕らは、身動きが取れないほど遅くなった身体を正面へ向けたまま、大の字になって待ち構える。



「……な~んて、バカ正直に殴りかかるバカがいるかよ。吹っ飛びな!」



 しかしカマキリは、両の鎌を振るい、二重の斬撃で僕を狙った。避けることもできず正面から攻撃を受けた僕は、風圧で後ろにひっくり返り、真上へ攻撃を流してしまった。


 ポンさんを潰す形で大の字に倒れた僕に対し、背中の羽を広げて飛び上がったカマキリは、立ち上がることもできず寝たままな僕らを見下ろし、「ヒャヒャヒャ」と笑った。そして逃げ場もなく張り付け状態な僕に向けて、溜めに溜めた魔力を撃ち放った。



「何を狙ってるか知らねぇが、テメェらの浅はかな狙いなんぞ乗ってやるかよ。黙って死んでろ!」



 最高出力で放ったダブルの風魔法が、クロスして最上階の僕らに突き刺さった。(やぐら)ごと足場が崩れ、瓦礫にまみれて落下した僕らは、そのまま破壊されてしまった塔の残骸に飲み込まれた。



「ハーッハッハ、どれだけ硬かろうが落下の衝撃と瓦礫の重みには耐えられんだろうが、…………あん?」



 瓦礫が地面に落ちきった直後、地表近くで爆発が起こった。


 言うまでもなく、原因は僕。

 しかしいくらどんくさい僕だって、そうそう何度も、易々と、無駄に爆発したりしない!




  「 ッッ跳ッッベェェッー! 」




 攻撃を受けた衝撃、瓦礫に埋もれた衝撃、そして落下の衝撃をプラスした全ての反発力を、身体を捻って地面一点に向けて放った僕は、地表が抉れて凹むほどの力で空中へと打ち上がり、空高く高笑いを決め込んでいたカマキリへと突進する。


 速度低下(スロウ)の効果などつゆ知らず、恐ろしい速度で発射された『僕爆弾』は、ミサイルのように一直線で打ち上げられると、そのまま鋭い槍のようにカマキリの横腹を貫いた。



「ガッ、ハッ、バ、バカな……!?」



 核弾頭にくくりつけられた小人のように僕の背中にしがみついていたポンさんは、悲鳴にも断末魔にも似た、声にならない声を漏らしていた。しかし僕は伸ばした右の拳を握ったまま、「どうだ、まいったか!」と言い慣れない魂の台詞を無意識に叫んでいた。


 カマキリ型モンスターが形を失い爆散する。上がった花火のように、空中を漂いながら、勝利の喜びに震える僕。しかし僕は、肝心なことを忘れていた……



「あかん落ちるで、空は飛べへんねん。あかん、高い、高すぎるて!」



 僕の背中から離れて空中を漂っているポンさんの姿を、客観的に見つめている僕。彼が落ちているということは、僕も落ちていることに他ならない。


 そして改めて考える。

 僕が高所から落下したあとに起こることを……。


 確かに、あの時は今回よりもっと高かったかもしれない。けど、僕は最悪の地と呼ばれた『カーズルイン』を、跡形もなく消し飛ばした『前科』がある。

 さっきはたまたま衝撃を下に逃がすみたいなことができたけど、今回はどう考えたって無理。だって――



「さっきはスキルと瓦礫のおかげで落ちるのもゆっくりだったし、それに、それに!」



 だって必死だったから!

 みんなのために、アイツを倒さなきゃって、必死だったから!

 何よりも、どうやったのか自分でも覚えてないんです!


 終わった。今度こそ、僕はなんの罪もない多くの人々を、この世から蒸発させてしまうみたいです。隣で助けろ助けろとうるさいポンさんのせいで緊張感もへったくれもないけれど、全ては僕の責任です。本当にごめんなさい。


 僕は全てに身を委ね、胸の前で十字を切り、天空から落ちてくる少女のように横になった。こんなときにもし飛行石があれば……、なんて想像しても、僕にそんな能力はありません。


 周囲の景色がくっきり見えるようになり、「ああ、終わった」と呟く。しかしそんなとき、僕の身体はまるで綿毛に包まれたように、ゆっくりと、ただただ静かに静止した。



「あれ……? どうして」


「お疲れ様です主様。お美しい放物線でしたね」



 何事もなかったように、僕を抱きかかえるインフ。「あれ?」と周囲を回し見ても、倒れた塔の瓦礫は散らばっているけど、他には何も壊れた様子がない。



「どうなって……?」


「どうって、わざわざ主様からわらわのもとへ飛び込んできてくれましたので、こうして優しく受け止めてさしあげたまでですわ。もう主様ったら、結局わらわがいないとダメなんですね♪」



 町ごと全破壊の想像をしていた僕の脳は完全にショートしていたけど、硬直していた身体から力が抜けていく。嬉しそうに僕を抱えるインフに抱きついた僕は、「本当にありがとう!」と伝えるだけで精一杯だった。



「そ、そんな、当たり前のことをしたまでですわ。それに主様も楽しそうに頑張っていらっしゃいましたから」



 彼女の胸の中でへなへな崩れ落ちる僕の隣では、地面に落下して血だらけになったなポンさんが、ワナワナしながらこちらを睨んでいた。「そのまま死ねばよかったのに」と言うインフに「喧しわ蛮族、こっちも助けんかい!」とツッコミを入れる余裕があるみたいだから、ひとまず大丈夫みたいです。



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