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39話「不吉な知らせ」

「では富永中将、マハーデーヴィー大将によろしく伝えておいて下さい」

「了解致しました、必ず無事にバンコクまで辿り着いて見せますわ」

翌朝午前9時、第4艦隊司令・富永加代子中将指揮の下、第4、第8艦隊によって編成された分艦隊が出撃した。

仁領侵入のための二正面作戦を完成させるためインド・東南アジア方面軍艦隊と合流するためだ。

「閣下」

見送りが落ち着いたタイミングを見計らって1人の士官が春翔に話しかけた。

「本部のネルソン大将から通信です、至急お話ししたいことがあると」

「ネルソン大将から?」

春翔とガブリエーレは困惑した。本部に残るガーディアンズ副総司令官・ホレーショ・ネルソン大将には昨日、仁に潜伏する王海蘭准将に連絡(コンタクト)を取るように指示したばかりだったのだ。

結果の報告をするにはあまりにも早すぎる、だが彼から連絡が来るような事態も想定しにくい。

「わかった、通信番号は?」

春翔は何か不吉な予感を感じながら答えた。

「PQ-6583-SCCです」

「-SCC」、これは副総司令官のみに使用が許されているコードである。

このコードが用いられた場合、これよりも上位に位置するコードを使用した通信が無い限り最優先での通信が行われる。

「-SCC」より上位のコードとはつまり、最高司令官・Chief Commanderたる春翔にのみ使用が許されているコード、「CC」のみだ。

これらの優先コードの用いられた通信は他のあらゆる通信に割り込む形で通信が行われる、そのため混乱が生じる可能性も捨てきれない。そのため優先コードの使用には慎重さが求められた。

ガーディアンズ副総司令官・ホレーショ・ネルソン大将は万事無駄を嫌う人物である。

少なくとも無駄な混乱を引き起こす可能性のある優先コードを乱用するような男では無い。

そう考える程に春翔の足は早まって行くのだった。


彼が通信スクリーンの前に立った時、彼の目の前には非の打ち所の無い敬礼を披露する初老の男が映っていた。

硬めの白髪はワックスで丁寧に固められ、その目の鋭さは見る者全てにカミソリのような鋭さを感じさせた。

そんな彼こそがガーディアンズ副総司令官たるホレーショ・ネルソン大将である。

「ネルソン大将、報告を」

春翔が端的に問うと彼も端的に答えた。

「王准将と連絡が取れなくなりました」

「王准将と?」

「はい、一月前の定期連絡は通常通り行われましたが、先日から連絡(コンタクト)を試みていますが応答がありません」

春翔は顔をしかめた。

諜報部長たる彼女の下にはガーディアンズのあらゆる情報が集まっている。

そのような人間が敵地に在って連絡が取れないとなれば何が起きてもおかしくないのだ。

「連絡を急いでくれ、彼女の拠点は分かっているんだろう?」

「はい」

「では、本部諜報部の内誰かを蒙経由で仁に密入国させてくれ。その人間に直接安否を確認させる」

「その人間も戻らない可能性がありますが」

「1週間して戻らなければ仕方がない、作戦を展開する」

その言葉に彼は頷き、そして最初と同じように見事な敬礼でスクリーンから去っていった。

「連絡が取れないってどんな状況なんでしょうか、、、」

「分からない、が、、、」

呟くようにそう言って春翔はガブリエーレを見た。

「彼女の父には伝えておくべきだろう。大尉、陸軍部総司令部に赴いて王大将に会ってきてくれ。あらゆる可能性を想定し、心の準備をしておくように、と」

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