34話「合流地点」
13時26分、艦隊は三浦半島沖を航行していた。
艦隊集合に思ったよりも時間がかかり、結局艦隊が移動を開始できたのは13時を過ぎていた。
総旗艦・ミライの周囲は200隻の艦隊が守りを固めている、しかしこれでも完全体では無い。北京へ向かうまでの間に各地に散らばっている本部所属艦隊を拾っていくため北京へ着く頃にはその数は600を超えるのだ。
「舞鶴の山本中将、佐世保の石井中将の艦隊は既に空中集合を終え合流地点へと向かっているようです。閣下、我が艦隊も移動速度を上げ合流を急ぎませんか?」
幕僚会議の席上、春翔にこう提案したのは本部直属第3艦隊指揮官・坂本中将だ。そしてその意見に同意を示す者も少なくない、うまく合流できない可能性を危惧する者は少なくないのだ。
しかし、春翔はその意見に同意しなかった。
「いや、ダメだ。現在の速度もかなり巻きでやってる、これ以上速度を上げれば事故が起こる事も予想できない訳じゃない」
「ですが合流に失敗すれば作戦行動どころでは無くなります!」
「そこは山本、石井両中将がうまくやってくれるだろう。僕はあの2人を信じるよ」
「私は閣下の意見に賛成です、今は道を急ぐべきではありません」
「私も同意するわ、私たちが今努めるべきは安全行動よ。焦るあまり事故を起こして戦力が減っては元も子もないわ」
「特に今は相手のはっきりとした戦力、出方もわかりません。時間をかけることは必ずしも悪い事とは考えません」
春翔の意見に眞木中佐、そして第6艦隊指揮官・富永中将が同意した。
「それでしたら閣下、合流地点を変更せねばなりますまい。現状、予定の地点E-4での合流は不可能です」
作戦参謀の1人・三浦准将が声を上げる、彼は航路選定等を中心とした任務に就いているのだ。
「ではどのあたりなら合流が可能か?」
「現在大西少佐を中心として計算中です。しかし、舞鶴の山本中将はともかく、佐世保の石井中将は北京に近すぎます」
「無理に合流しようとすると速度にとんでもない制限をかけることになる、、、か」
艦船には適正巡航速度と言うものがある、それは決して狭いものではなく、寧ろかなり広めに取られていると言える。しかしそれを上回って航行しても、下回って航行しても機関には絶大な負荷をかけることになる。それは出来るだけ避けるべきことなのだ。
「仕方がない、石井中将麾下の第八艦隊には先に北京に向かってもらおう。本隊が北京に到着し次第合流。本隊到着までの間北京における総司令官権限を石井中将に移譲。大尉、その旨石井中将に送ってくれ」
「わかりました、ですが、、、」
「石井中将はそんな浅はかな人間ではない、それにいざとなれば李提督も居る。君は心配しなくて大丈夫だ」
ガブリエーレの疑念を見透かしたかのように春翔が言った。ガブリエーレは顔が熱くなるのを感じた、一瞬とは言え尊敬する上司の信じる人間を疑うとは何事か、そんな思いが脳裏を走った。
そして彼は急いで敬礼をしてその場を辞した。




