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31話「判断」

年が明けた1月26日、後清帝国の首都・北京(ペキン)では伝統的な習慣に基づき春節(チュンジエ)を祝う行事が大々的に催されていた。

「皇上!皇上!あれを!」

皇帝・愛新覚羅永醒一行も春節を祝うために紫禁城を出、街中を散策していた。大勢の護衛に守られながら、ではあるが。

そんな一行の中の一人、嘉妃・(イン)楼花(ロウファ)が指差す先には大きな龍がゆっくりと空を泳いでいる姿が有った。

「本当だ、、、あれは、、、」

「提灯です、それに魔術をかけて空を飛ばせているそうですわ」

皇帝の疑問に和貴妃が答える。それに感心したように頷きながら、「魔術って便利だねぇ」と呟いた。

「ですがそれだけに気をつけて扱う必要があります」

そんな如懿の言葉に、嘉妃が煙たがるような顔をしたのを彼女は見逃さなかった。大方皇帝との時間を邪魔されたのが気に入らないのだろう。しかしそんな事で怯むほど弱い彼女ではない。彼女はそれを意図的に無視し、それどころか嘉妃に微笑みかけてみせた。

「ねぇ皇上、今度二人で参りましょうよ。お忍びで」

「え、えぇ?」

(これは不味い)、如懿は即座にそう感じた。永醒が押しの強い嘉妃の誘いを断れるとは思えないし、何よりお忍びで街に出たとき、彼らが自分の身を守れるかどうかも怪しいのだ。

「嘉妃、皇上が困っていますよ。それから皇上、この後も行事が多くあります、そろそろ城に戻られては?」

「え?あ、あぁ、そうだね。ではみんな戻ろうか」 

皇帝のその言葉により、行列はもと来た道を戻り始めた。

如懿はこめかみの辺りに強い視線を感じたが、それもあえて無視する事にしたのだった。

「いやぁ、如懿、助かったよ、、、」

その夜、紫禁城内の養心殿には疲れきった永醒の姿が有った。

「やはり困惑してらしたのね?そのままならお受けになるところだったでしょう?」

「図星だよ、図星」

自分でそう言って彼はケタケタと笑い出した。

それにつられて如懿も小さく笑いながら、不意に真面目な顔に戻って永醒に向き直った。

「皇上、ガーディアンズが仁との決着をつけるつもりだと聞きました」

永醒の体の輪郭が堅くなったのを如懿は認め、そして彼女は自身の予想が正しいことを確信した。

「お耳には入っているのでしょう?」

「あぁ、、、うん、報告は上がってきてるよ」

返ってきたのは歯切れの悪い返事、彼女はそこで一気に畳みかけてみることにした。

「それで、我が清帝国はどうなさりますの?ガーディアンズに呼応して挙兵なさっては?」

その言葉に皇帝は目を泳がせた。言うべきか言うまいか、恐らくそう言った事で迷っているのだろう。

彼がようやく口を開いたのは、たっぷり2分ほど沈黙した後であった。

「いや、今回は兵は出さないよ」

「それはなぜ?」

「我々も仁との戦いでかなり消耗している、これ以上兵力の提供など出来ない」

「それはあなたの考えなのかしら?」

そう言った瞬間、永醒の顔色が変わったのが分かった。

「図星なんですのね」

「あぁ、、、軍機大臣たちの言に従った形になる、、、」

その答えに如懿は大きくため息をついた。

「皇上、あなたが軍機大臣たちの言に従う義務などないのですのよ?今回の件、今後の事も含めて、皇上ご自身が判断なさるべきではありませんか?」

「今後の事、、、」 

「作戦が成功したとき、失敗したとき両方の、ですわ」

永醒は汗を拭った、大方軍機大臣たちの言と如懿の意見との間でどうすべきか揺れ動いているのだろう。

「とにかく、今回の件は良くお考えください。それでは私はこれで」

如懿が退出して後、彼は全身の力を抜きため息をついた。

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