29話「将軍」
「皇上!皇上!」
寒さ厳しい12月某日、黄瓦城内の執政殿においていつものごとく公務に励んでいる仁皇帝・陳江民の元に顔を真っ青にした侍衛が飛び込んできた。
「何か!?朝から騒々しいぞ!」
「も、申し訳ありません皇上、、、」
怒鳴り声に恐縮しきった侍衛を見ながら江民は「もうよい、申せ」と言った。
「は、はい。先ほど敵本部に潜入しておりました者から報告がありまして、、、」
そこまで言って彼は辺りをはばかるように見回し、皇帝の耳に顔を近づけて小声で報告した。
「なに!?それは本当なのか!?」
驚愕して問いかける皇帝の声に頷く。
「信憑性は高いです、裏切りはありえません」
「、、、明確な作戦の発動時期は」
「それについてはまだ、、、」
その答えに江民は舌打ちをして、苦々しげに呟いた。
「あの古狸め!あえて日時を決めず直前になって各司令官に連絡することで我々の不意を突くつもりだな!」
「ど、どうなさいますか、、、?」
「案ずるな、我々には大きな兵力がある、負けはしない。だが、相手がこちらを滅ぼすための戦いというのであれば朕が出ないのは無礼というものだろう」
「と言いますと、、、」
心配そうに皇帝を見つめる侍衛に江民は自信に満ち溢れた顔で言った。
「今回の戦いは親征とする、三皇子たちもそろそろ戦場を知っても良い頃だろう、彼らも連れて行く」
「敵は二正面作戦を挑んできます、今一方の司令官はいかがしますか、、、?」
その言葉にしばらく皇帝は考え込んでいたが、すぐに指を鳴らして言った。
「適任者がいるではないか!」
「26番、出ろ」
重庆郊外の軍事刑務所、そこには罪を犯した軍人が収監されていた。
彼・年瀟もまた、かつて将軍の地位にまで昇りながら高嶺山の戦いにおいてガーディアンズに大敗した罪を問われここに収監される身となっていた。
「何のようです?」
「皇上がお会いになる」
その言葉を彼は最初理解できないようだった、やがて反芻が終わった頭でその意味を理解したとき、彼は驚愕した。
「な、なぜ今更、、、」
「早く着替えろ」
数時間後、彼は主君である皇帝の前に跪いていた。
「微臣给皇上请安」
「年瀟、朕がなぜお前を呼んだかわかるか?」
「、、、いえ、見当も尽きませぬ」
その答えに江民は少し笑い、そして体を起こすように指示した。
「今、お前の敗れたガーディアンズの連中はわが国を二方向から挟撃せんとしている。我々が何を強いられているのかはわかるな?」
「部隊を二分する事ですか」
「その通りだ、そのためにその部隊を指揮する者を探していた。しかし、お前が将軍の位を剥奪されてより後に将軍の称号を持つものは居らず、何よりお前に並ぶ力を持つ軍人も居らぬのだ」
「なにが、、、おっしゃりたいのですか?」
「年瀟、朕はお前が欲しい、お前の力が必要なのだ」
彼のすぐ近くにまで寄っていた江民は玉座に駆け寄り、声も高々と宣じた。
「年瀟に征南軍督使として将軍位を与える!これより我が軍の半分を率いてガーディアンズと戦え!」
「、、、多謝皇上恩典」
「年瀟よ、もし勝ったらばお前は不動の地位と名声を得られる、だがもし負けたら、、、わかっているな?年将軍」
「、、、是」
その言葉に満足そうに頷きながら江民は年瀟に部屋を出るように命じた。




