27話「司令官」
「大尉、緊張してるかい?」
新暦161年11月26日、ガーディアンズ最高司令官・火神春翔元帥は彼の副官・ガブリエーレ・パッドリノ大尉を伴って総合本部棟内のエレベーターの中に居た。約1週間前に召集をかけた方面軍司令官級会議に出席するためだ。
「ええ、俺が任官してからこういうのに出席するのは初めてなので」
「となると軍港のこういった姿を見るのも初めてな訳か」
その言葉にガブリエーレは窓に目をやった。総合本部棟の近くに迫る湾は、中華方面軍旗艦・杭州、欧州方面軍旗艦・パクス=ロマーナをはじめとしてインド・東南アジア方面軍旗艦・チャクリ・ナルエベト、ロシア・北欧方面軍旗艦・インペラトリーツァ・エカチェリーナ2世などといった形もカラーリングも様々な艦で賑わっていた。
規格化され、ライン生産の量産品となっている通常の艦と異なり、旗艦級の艦は世界の修復以前から運用されていた艦であったり、新技術のテストヘッドとして建造された試験艦であったりしたため、周りの通常艦とは一線を画した見た目をしていることが多いのだ。
「賑やか、、、ですね」
「ああ、そうそうない機会だからね、一般向けの開放も行う予定だよ」
「我々ガーディアンズの活動は民生の協力によって成り立っている部分が大きいですからね、感謝とその協力に対する成果をアピールする場としてはもってこいでしょう」
壁が視界を占領するようになった窓から目を離してガブリエーレが淡々と述べる、その言葉に同意しつつ春翔
は続けた。
「うん、それから一般だけではなく将兵の間でも話題になっていると聞いたけど」
「事実です、士官学校の友人なんかは教官に頼み込んで軍事管理区域入構許可証を取得したと言ってました」
「それはそれは、、、部隊研修や校外学習をみんなが本部にいる内にやらせるべきかな?」
「良いんじゃ無いでしょうか、手配しますか?」
「ああ、頼むよ」
「わかりました」
ガブリエーレがそう答えた瞬間にエレベーターのドアが開く、春翔に気がついた下士官が慌てて敬礼をするのに答礼しながら無機質かつ気温の低い廊下を歩く。
「この地下区画の空調、どうにかならないんでしょうか?」
「カミナルモノ由来の技術と違って、この辺の通常技術は大陥没を境に一度崩壊してる。現在目下研究中だが、大陥没前の水準にまで戻すにはかなりの時間を要すだろうね」
「夏はともかく、今の時期の地下指令室なんて悲惨です。防寒具をつけてないと凍死しますよ、あそこ」
「地下に暖炉を設置するわけにもいかないからね、それについては技術陣に発破をかけておこう、、、そら着いた」
『第一会議室』そう書かれた、正直言って重厚感や威厳は欠片も感じられない鉄製の扉が空気の抜ける音と共に開く。それと同時に多くの視線が彼らを射抜いた。




