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23話「開戦」

『諸君!!心して聞いてほしい!!』

北米大陸の赤く、冷たい秋に雄々しく、野太い声が響きわたった。その声の主はアテルイ、敬虔なレストニア教徒にして北米帝国の遠征討伐軍司令官として大軍を率いる身であった。

『我々は何故戦わねばならないのか!?それは神聖なる我が領土を取り返すためである!!では何故領土を取り返さねばならないのか!?それはレストニア教の威光を世界に知らしめ、そして()()()()()の到来の糧とするためである!!諸君!!恐れる事はない!!我々には神がある!!神を僭称する者を讃える浅ましい者共とは違い神がある!!そして神は言われた『気付きへと到達していない者を導け』と!!諸君!!我々は奴らを撃滅し、彼らに完全な世界という気付きを与えるために軍を起こした!!故に!!これは神聖な行為でありレストニア教徒である以上逃れる事は出来ない!!諸君!!前進せよ!!攻撃せよ!!神を持たぬ者共のヤワな横腹をぶち抜き、そして我々が神を与えるのだ!!』

「素晴らしい、演説だ」

ノイズと一体化した北米帝国兵士たちの歓声に合わせるように、ニミッツが手を叩いた。

北米帝国遠征討伐軍艦隊とガーディアンズ北米方面軍艦隊は距離100000mでにらみ合っていた。ガーディアンズ北米方面軍司令官チェスター・ニミッツが北米帝国艦隊が国境に移動しつつあるという情報を受けて艦隊を出動させてから8時間が経過していた。 

「閣下、ここからどうなさるおつもりですか」

旗艦・ブルーリッジの艦上で副官の魏中尉が微量の不安感を含んだ声で彼に訊ねた。

「待つ」

「相手が動くのをですか?」

「ああ」

「それではジリ貧になりませんか?」

「それは相手だって同じだ、ジリ貧に嫌気が差してさっさと撤退してくれれば良いんだが、、、そんなに甘くはないか、、、」

メインモニタには前進しつつある北米帝国艦隊の姿が映し出されていた。

「応戦しつつ後退だと!?」

北米方面軍第三艦隊指揮官・アーノルド・リューリック中将は自らの耳を疑った、今まさに恐るべき速度で迫り来る敵に対して彼の上官は後退せよと命じたのだ。

「あの坊主何を考えている、、、!?奴らをこちらの領内に流れ込ませるつもりか!?」

「敵艦隊、まもなく射程に入ります!」

「ええい命令だろうが何だろうがあんな上官に従ってられるか!リューリック艦隊は全艦全速前進!全力砲撃を行え!」

「閣下!命令に反されるおつもりですか!?」

「黙っておれ!」

参謀長の諌言に怒鳴り声で返し、彼はまたモニタを見つめ始めた。

「第三艦隊前進しつつあり!」

その報がブルーリッジ艦橋に伝えられたとき、司令部には大きな衝撃が走った。

「なんだと!?」

「誤報じゃないのか!?」

そんな彼らの疑念の言葉を吹き飛ばすように本隊から離れ北米帝国艦隊方面へと驀進していく艦影がモニタにははっきりと写っていた。

「愚か者が、、、」

スプールアンス中将が苦々しげにつぶやき、ニミッツに話しかけた。

「多かれ少なかれ作戦の変更を余儀なくされるでしょう、どうなさるのですか」

「、、、全艦このまま後退、スペリオル上空まで引きつける」

「、、、わかりました」

本隊を離脱してから数時間も経たない内に、突撃を仕掛けた第三艦隊は完全に包囲され壊滅の危機に陥っていた。

「包囲されてます!完全に包囲されてます!」

「艦隊損耗率85%を突破!これ以上の組織的行動は不可能です!」

オペレーターが口々に悲鳴混じりの報告をする、リューリックは青い顔をして通信士官に叫んだ。

「本隊に連絡をしろ!救援を請うとな!」

「無駄です、本隊から救援は来ませんよ」

冷静な声で答えたのは第三艦隊参謀長であった、リューリックは彼を睨みつけさらに怒鳴った。

「何故そう言えるのか!?」

「閣下が命令を無視し艦隊を進めたからです!我々は敵のど真ん中、本隊からも離れすぎている、しかも命令を無視した!司令官閣下の作戦をぶち壊しにしたのです!、、、これで、来援が来ると思いますか?」

重苦しい沈黙が艦橋を支配した、そのまま数秒がたち、突如として砲術士官が何か叫びながらリューリックに殴りかかった。完全に不意を疲れたリューリックは顔にめり込んだ拳の勢いのまま床に倒れ伏し、砲術士官に続いた艦橋要員の怒りのはけ口となった。

リンチされる上官を参謀長は止めるでも哀れむでもなくただ黙って見つめていた。

「もうだめか」参謀長がそう言った直後、ガーディアンズ北米方面軍第三艦隊旗艦は爆沈した。乗組員はことごとく、一切の例外なく消滅したのだった。

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