21話「新技術」
ガブリエーレの帰還から数日後、ガーディアンズ総合本部棟最上階に位置する司令官オフィスではその部屋の主であるガーディアンズ最高司令官・火神春翔元帥が眉間に皺をよせながら目の前の資料を見つめていた。
「閣下、どうされたんですか?」
心配そうに尋ねるガブリエーレのベレーに付いている階級章の錨の部分には横棒が三本、彼は情報を無事に本部へと持ち帰った功によりその階級を尉官の最高峰たる大尉へと進めていた。
「あぁ大尉、ちょっと例のデータを見ててね」
「王大佐、、、准将の情報ですか?」
「そう、その新型艦の構造がね、、、」
そう言って彼は口に手を当てて考え込み始めた。
「何か引っかかる部分がおありですか?」
そうガブリエーレが尋ねると彼は無言で資料を渡してきた。受け取って中を見ると『105号型艦建造計画』と書かれた紙と『105号型艦武装配置及艦内配置図』と題された資料の二つがファイリングされていた。
要約すると建造計画においては1ヶ月に50隻の無人艦を就役させると言う事がかかれており、『105号型艦武装配置及艦内配置図』と書かれた要は設計図にはごくありふれた(無人艦故に艦橋その他居住スペースが無いため有人艦より一回り小さいと言う違いこそあるが)艦の設計図が記されていた。
「これに何か違和感がおありですか?」
「うん、建造計画に特に違和感はないし今までよりも少々建造スピードが早いというのは新技術の開発と艦の武装の簡素化と言う部分で説明がつく。だが違和感を感じるのはここだ」
そう言って彼が指し示したのは配置図の中央付近、通路などが詳細に書き込まれている中唯一空白となっている部分だ。
「ここは、、、」
「場所的には恐らく動力部に当たる、だけどね小さいんだよ」
「小さい?」
「そう、我々の最新型艦のSF-258号型戦艦の動力部よりもざっと68%小型化されてるんだ。確かに技術発展と言う事で説明がつくかもしれない、だがあまりにも急に小型化されすぎではないかと思ったんだ」
そう言われると確かにそう思えてきた。そもそも現状艦の動力源となっている疑似核の精製には1週間から2週間と言う時間がかかる、それを一月に50、ざっと計算して一週間に12から25の疑似核を精製する必要がある。令を併合し、統治機構を行き渡らせる事が急務であるはずの仁にそんな余裕は有るのだろうか?そう考えると答えはほとんど自明であった。
「と言うことは、これが令の秘匿していた技術と言うことですか」
「多分ね。魔力の供給源、艦の魂そのもの、それだけにいくらでも自由な発想は出来るはずだ」
「元々が人間に創られた物とはいえ生物を流用していた部分です、認めたくは有りませんが令が秘匿していた理由は、、、」
「恐らく、人道的に問題が有った、実用化をはばかられる物だった、、、と言うわけか、、、」
途端に室内の空気が重くなる、ガブリエーレは自らの手が軽く震えていることに気がついた。
「調査を急がせましょう、手遅れになる前に」
「そうしてくれ、それからこっちに入り込んでいる虫についても調査を、嗅ぎ回られたら厄介だ」
「わかりました。それから、香港の部隊は全て撤収しました、これからは仁からの情報は全て別ルートを経由することになります」
「致し方ないな、その辺りはイニーゴとジノヴィーに頼もう」
「わかりました、すぐに手配します」
そう言って彼は敬礼もそこそこに急ぎ足で部屋を出て行った。
春翔は窓の外を眺めながら自分の発想に恐怖した、そして考えついた仮説が根も葉もない幻想であることを願うのだった。




