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17話「副官」

「パッドリノ中尉がいなくなった瞬間これとは、あなたは少しあの坊やに頼り過ぎだったのではありませんかな?」

元帥臨時副官代理の村井中佐が呆れたような声を出して仕事の山を片付け始めた。無論春翔自身も日々進めてはいたのだが、とても処理しきれなくなり富永中将に泣きついた結果派遣されたのが彼という訳だ。村井中佐は今年で47歳。厳格そうな見た目をしている彼の正式な肩書きは「ガーディアンズ総合本部人事局長及第一事務局事務次官付一等書記官」と言い、書類仕事に関しては専門家と言っても良いほどの能力を持つ。

「いやぁ、耳が痛いね」

「そんな事を言うので有れば彼に休暇など取らせなければ良かったのでは?」

「労働環境の良さは直接士気に影響する、君も休暇を取れと富永中将やレアード少将からしょっちゅう言われているんじゃ無いのかい?」

「まぁ過重労働(ワーカーホリック)に比べたらまだマシでしょうが、結果として最高司令官の事務仕事が滞り組織が崩壊、では笑い事になりませんぞ?」

「肝に銘じておこう、まぁ彼を帰省させたのは休暇を消化させるためだけでは無いんだけどね」

「王大佐の件ですか?」

「早いね、もう聞いていたのか」

「事務局では大騒ぎです、なんでも蒙帝国経由で欧州入りしたとか、、、まさか彼女の持つ情報をパッドリノ中尉に!?」

「当たり」

「あまりにも危険過ぎます、彼はまだ16ですぞ!?」

「彼なら大丈夫だよ」

「無論、彼が文武共に優秀な能力を持つ人材であることも、私のような月並みな発想しか持てぬ人間とは違うこともわかっています、しかし危険であることにはかわりありません」

「だからイニーゴにはあらかじめ連絡をとっておいたんだ、彼の麾下の部隊を演習名目で動かして、そこに潜り込めばカムフラージュにもなるさ」

「そうでしょうか、、、?」

やや釈然としない顔をしながらも彼は切り替えようと頭を振った。

「いずれにせよこれを成功させればかなりの功績となります、その遂行の危険性を鑑みてもなにか見返りを用意せねば割に合いますまい」

彼の指摘に春翔は軽く頷いて、「実はもう考えてあるんだ」と言った。

「と言いますと?」

「彼は昇進させる、大尉にね」

「となると彼は来年の頭には佐官という訳ですか」

「例が無い訳じゃない、君も士官高等学校卒業後の定例昇進の時に大尉になったんじゃないか」

「そこから28年、結局2つしか階級は上がりませんでしたがね」

「中佐だってそんなに低い階級じゃないんだ、そこまで卑下しなくてもいいだろう」

「とりあえずパッドリノ中尉の昇進に関しては了解しました、となりますとそろそろ手続きを始めた方が、、、」

「うん、富永中将とレアード少将には君から連絡しておいて貰えるかい?」

「了解しました」

そう言うが早いか受話器を手に取る村井中佐を横目に彼はガブリエーレの身を案じ始めていた。さっきはあんな威勢のいい事を言ったが正直言ってかなり心配であることには変わりないのだ。

ガブリエーレ・パッドリノの故郷シチリアはレストニア教国とも比較的近い位置にある、何が有ってもおかしくは無いのだ。

(どうか無事で帰ってきておくれよ、、、)

その願いは口に出されることは無かったが、そばの村井中佐にははっきりと伝わっていた。

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