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13話「旧知」

「お客さん、そろそろ着岸だよ」

ちょび髭を生やした船長がドアをノックして室内に入ってきた。ガーディアンズ士官・ガブリエーレ・パッドリノ中尉はそう知らせる彼に礼を言いデッキへと出た。

蒼い海、蒼い空、懐かしい故郷の風が頬を撫でた。

イタリア半島をブーツに例えるのであればそのつま先、まるで蹴り上げられているかのように見える場所に一つの大きな島が有る。その島の名はシチリア島。

地中海のほぼど真ん中に位置し、古くから交通の要衝として栄え、シケリア戦争、ポエニ戦争などで様々な勢力が覇権を争った地でもある。かつては王国が有ったり、イタリア半島の国の一地域となったりもしたが大陥没以降は統一国家を持たず、いくつかの都市が同盟を組み緩い連邦を形成するに止まる。

彼の乗る客船はそんなシチリア島南東部、C-15型戦艦、通称「赤い矢(フレッチャ・ロッサ)」級3番艦の名の由来にもなった都市・シラクーザの港へと入った。

シチリアの土を踏んだガブリエーレはまず伸びをした。彼があの小さな船に乗り横浜を発ってから3日が経っていた。

空を飛べば1日足らずで着く距離であるが、水上を航行する民間船は攻撃してはならないと言う条約に乗っ取り安全のために多くの客船は水上を航行する。彼の乗った船もその1つだったのだ。

(家に帰るのももう何年ぶりだろう、、、)

歴史的な町並みの中に多くの人が行き交うシラクーザの雑踏を歩きながらそう考える。

(母さんは元気かな、久しぶりに友達にも会えそうだ)

足取りも軽くトランクを持つ手に力が入る、彼は自分が久しぶりに浮き足立っていることに気がついた。

「3年ぶり、、、かな、、、?」

シラクーザの港についてから約2時間、シラクーザにほど近い田舎町・パラッツォーロ・アクレイデが彼の故郷である。

町の入り口に静かに立つ門を前に彼は感慨に浸っていた。そんな彼の背にある一組の夫婦が声をかけた。

「ガー坊!?お前ガー坊じゃねえか!?」

「ミハイルさん、マージさん」

驚いて振り向いた先に彼の3倍ほどは驚いているであろう所労の夫婦が立っていた。

「久しぶりです」

肩をすくめて少し苦笑しながら話しかける。

「まぁまぁまぁまぁ大きくなって!あたしゃガー坊といやこーんなちっちゃい、、、」

「バカ!そんな事より早くイセリナの所へ行くぞ!」

「あぁそうだった!ほらお前さん早く!」

「おうおう、あぁガー坊!お前さんすぐに家に向かうんだろ?」

「あ、いえその前に墓地に」

「あぁそうか、、、そうだな、ラオコーンとリオの奴もきっと喜ぶぞ」

「そうだと、、、いいんですけどね」

「バカ野郎お前、息子の成長を喜ばない父親がどこにいるってんだ」

「ほらお前さん!早く行くよ!」

「あぁそうだな!じゃあなガー坊、イセリナにはきちんと伝えておくからな、ゆっくり行ってこい!」

「ありがとうございます」

彼がそう言い終わるのが先か夫婦が駆け出したのが先か、10秒後には彼らはもうガブリエーレの視界から消えていた。

(相変わらず嵐のような人たちだな、、、)そう考えた彼は久しぶりの感覚に破顔一笑し、そしてトランクを持ち直して再び歩き始めたのだった。

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