第2、第3の…
くっそ遅れました。本当に自分が決めた期限ぐらい守りたい……
「………」
正直僕はリリィと違って少し短気だ。だからあんまり馬鹿にされると手が出る時もある。ゲームで相手から煽られた時なんて自分の膝をゴンゴン叩いて叫びたい気分を噛み殺してたくらいだ。
「今すぐ僕の視界から消えて」
「おや?反論はないのですか?」
「アンタみたいな人は無視が1番だからね」
「無視が1番って言ってる割には、視界から消えてって…くくっ…全然無視出来てないじゃないですか」
いや、何?僕何かした?してないよね、うん。
「僕を怒らせてどうするの?いい事なんてあんまり無いと思うけど」
「さぁ?もしかしたら私に何か良いことがあるかもしれませんよ?」
「あっそ」
ステーキの最後の1切れを食い終わると同時に席を立ち、店員にお金を丁度渡し、1度男の席を訪れる。
「これは、僕の勝ちぃぐッ!?」
「はぁ…僕、意外と短気なんだからこういう真似はやめてくれる?」
ミノタウロスの串焼きに使われていた鉄串を手の甲に突き刺す。うん。意外と人を刺してもなんとも思わない。
「くっ…こんな事をして良いと思ってるですか…ッ?」
「いや、だから逃げる」
串から手を離し、足早に店を出た。
「ハハ…中々強い御方だ…」
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「……僕になにか用?」
甲冑を纏ったいかにも騎士みたいな見た目の集団から取り囲まれた。さっきの件ですね間違い無い。
「外套を纏った変な奴がいきなり相席の男の手を刺したと通報があってな……お前か?」
「相席の男を刺した…?まさか、僕がそんな事をするわけがないじゃないですか。人違いですよ」
捕まるのは面倒な為嘘をつく。嘘発見器なんて物無いだろう。
「貴様…今、嘘をついたな?」
「…どうして?」
「嘘を見抜く魔法を使っている。それに反応があった」
「なっ……!?」
一気に心拍数が跳ね上がった。冷や汗も少し出てきた。フラグ回収してしまったとは…
「その反応、やはり貴様が犯人だな?」
「しまっ…悪いけど逃げさせてもらうね!」
これはまんまと引っかかった。嘘を見抜く魔法なんて無い。カマをかけられた訳だ。少しでもその魔法が存在するのではと思ってしまったのが不味かった。
「追え!ハウンド!」
甲冑を着込んだ騎士なら逃げられると思っていたが、その背後から軽装のハウンドと呼ばれる者達が追いかけてきた。
「やばっ…このままだと追いつかれる……!」
ついカッとなって手を刺さなきゃ良かったと今更後悔。とにかく今は逃げる。
「捕まるのは勘弁…『我が背に空駆ける翼を!』」
飛行魔法を発動する。しかしここは街中。この世界の法律で、街中での飛行は禁止とされている。では何故飛行魔法を発動したか?少しだけ浮き、超低空飛行する為だ。多分これなら法律に引っかかっらない。多分。
「このまま門を抜けて西の迷宮に行くのもアリかな…!」
このまま行けばハウンドとかいう奴らも撒けそうだし、このまま西の迷宮に行くことにした。
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リリィが居なくなった。と言っても、2日3日位で帰ってくるらしい。
「……私、なんて顔して会えば良いんだろ…」
「ん?」
「いや、だってさ…1回思いっきり…」
怖がられたりするかもしれない。避けられるかもしれないなんて考えるとしんどい。
「そこはもう頑張って謝るしかないでしょ。許してもらえるかはわからないけど、リリィなら許してくれると思うよ」
「…うん」
珍しくしゅんとしたスキャリィにはぁとため息を零し、取り敢えず放置させておく事にした。
「はいはいーい、おはよー」
入って来た者はナンバー1では無く、同じ宮廷魔法使いのナンバー12だった。
「今日ナンバー1は別用でお休みとなりましたので、僕が代わりを努めます。1日だけどよろしくね」
「えっ?ナンバー1はどこに行ったんですか?」
「ん?ん〜〜…確かねぇ…王と話してると思うよ。なんか重要な案件があるらしいとか」
まぁ詳しいことはわからないけどと言っているが、多分嘘だろう。この人は情報通で知られている。けどわざわざこんな嘘を吐くという事は言えない事なのだろう。
「分かりました」
「それじゃ、ナンバー1ほど上手くないけど、授業でも始めよっか」
……正直あのナンバー1より下手だと言うのなら相当イカれた授業しか思い浮かばないが、今は黙っておこう。
「さて、今日の授業は魔法の組み立てとかそんな感じの物みたいな感じだけど、正直もう教えなくても分かってるよね?」
「まぁ、はい。わかってますね」
待って、ものすごい嫌な予感がした。多分当たる。
「今日はそれ以上。自分だけの魔法の創り方を教えようと思う」
「は?」
「…え?」
「うん?」
…………
「うん?」
「いや、何言ってるんですか……それってもう宮廷魔法使いレベルの実力ないと無理ですよ…」
流石にこれは予想以上と言うか、ぶっ飛びすぎではと。どれくらい難しいかと言うと、普通の魔法が1+1みたいな足し算レベルな物だとすると、自分だけの魔法を創るのは既存の計算方法以外の方法で計算しろと言っているような物だ。
「いや、簡単に出来るものを言ってもアレでしょ?だからここは思い切って一流の魔法使いを超えさせてみようかなって」
「一流の魔法使いの上は化け物だと思うんですけど…」
「まぁまぁまぁまぁ。取り敢えずやれ!そんでもって成功して宮廷魔法使いなって僕の負担を減らせ!」
欲望ダダ漏れ過ぎて顔が引き攣りそうだ。ていうかもう引き攣っているかもしれない。
「分かりました……やるだけやってみます……説明、よろしくお願いします」
「マジでやるのかよ……」
「やらなきゃ終わらなそうだなって…」
果たして解放はどれくらい先だろうか……
「うん、頑張ろう。君たちの実力なら絶対成功すると保証するよ!」
にこやかに微笑む顔が眩しくて直視したくない。
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「はぁっ……はぁっ……しつこいっ…」
壁に隠れ、ちらりと向こうを覗くと、やっぱり居た。ハウンドだ。
「けど、目的地は…ふぅ………もうすぐだね…」
こんな時音を消せる魔法があればなんて思ったが、生憎と覚えていない。困ったものだ。
「取り敢えず……そっち行けっ…」
手元にあった石を適当な場所に投げ、様子を見て奴らが動き出した瞬間に逃げようと考える。
「おい、今そっちで物音しなかったか?」
「あぁ…俺も聞いた。どうする?向かうか?」
「…俺が行く。お前は引き続きこの辺りを、お前はあっちの方を探せ。その方が効率的だろう」
「あぁ、わかった」
よし、一先ず1人だけこちらにおびき寄せ……てはないが、こちらに来た。気配と息を殺し、動きを止める。衣擦れの音1つ立てない。完璧なアンブッシュ。カモフラ率60%くらいだろう。
(まだ…まだ……まだ…………)
その時をじっと待つ。ポケットから愛用ナイフを抜き、敵が現れた瞬間、
「隙あり」
敵の喉元にナイフを当て、耳元で静かに睡眠魔法を唱えた。この魔法はリリィの人格を無理矢理抑える様に使おうと思っていたが、こんな所で役に立つとは思わなかった。人格を抑えると言っても、僕が出たい訳では無く、止むを得ず僕が出なければいけない状況の時にしか使わないのであって……と、自分に対し言い訳を重ねていく。
「『穏やかな我が音に包まれ、微睡みに落ちよ』」
「くっ、貴様…ぁ…」
「『スリープ』、ふぅ……悪いね」
眠った彼を優しく仰向けに倒し、目的地に飛行魔法で向かう。これで音もあまり立たないだろう。
「こっちか…」
勘で目的地を探り、追っ手をの距離を引き離す。正直迷子だ。
「……あ」
何か石作りの入口のような所を見つけ、これはここなのではないかと思い、迷わず中に入った。
「ただの迷宮なら良いんだけど……いやそれも嫌だな」
地味に方向音痴なんだから迷宮に入ろうものなら迷うのではと考えるが、取り敢えず目印を付けることにした。壁に何かしらの印を描いておく。
「こんな所かな」
出口の方を指す矢印を描き、迷宮を進み始めた。割と方向音痴なので20メートル間隔で矢印を描いていく。
「……?」
少し違和感に気付く。迷宮なんて名前なのに、ずっと直線しか続いていない。もしかしてもう迷っているとか?
「ん……?」
目の先に光が漏れ出す部屋があり、もしやと思い駆け寄り、扉を開ける。
「あははははっ!」
扉の中には、獰猛で凶暴な二足歩行の牛が1人の少年に翻弄されていた。
「ほらほらこっち!あ、やっぱこっちだよ!」
ミノタウロスは苛立った様な咆哮を上げ、拳を握り直し、少年を粉砕しようと構えたその時、
「ん……ざーんねん。もう終わり」
楽しかったーと少年は伸びをした後、喉を切り裂かれたミノタウロスがその場に崩れ落ちた。
「やぁ。リリィ……でいいのかな?」
「……誰?」
「あぁゴメンゴメン。自己紹介とかしてなかったよね」
少年はごほんと咳払いをした後、年相応の笑顔を浮かべ、
「ぼくは宮廷魔法使いのナンバー2!仕事は主に近辺の魔物狩りと凶悪犯罪者の捕縛、または殺害!よろしくね!」
少し、嫌な予感がした。
最低1週間には書きたい……




