変なヤツ
遅れました○| ̄|_
1週間以上かけてしまった……
1つの命に2つの人格、しかも完璧に主人格とは乖離した人格。それが僕だ。
「……」
ずっと暗い所で、彼女と同じ景色を見て、同じ事を学び、彼女以上に理解する。
「◼◼◼はこんな事もわからないんだね」
学校の数学も、キチンとやり方を覚え、反復して解けばとても簡単だ。何故、出来ないのだろうかと疑問が浮かぶ。
「…友達……ねぇ…」
その原因は娯楽、友人、食事、睡眠時間などなど。全て僕には必要無い物だ。
「ちょっと、興味が湧いたかも」
今まで1度も表に上がっていなかったが、この時、ちょっとだけ身体を借りようと思った。彼女が寝ている間、僕が目を覚まし、上手く身体を動かせるか試してみる。
「……よし」
先ず僕がやったことは、ゲームだ。彼女がやっているゲーム。それを起動し、ワクワクしながら始めた。
「操作方法……バッチリ」
見ていたから操作はわかる。けど初めて自分で動かした。
「これ、たのしい…!」
気付けば夜明け、どうやら時間を忘れて楽しんでしまった。
「あら?起きてたのね」
「あ…お母さん」
「ゲームで夜更かし……って感じじゃなさそうね。早く目が覚めた?」
彼女らしく振る舞う事なんて簡単だ。見てきたんだから。
「うん…もう1回寝ようとしたけど、寝付けなくて」
「そっか。なら、朝ごはんはパンとご飯、どっち?」
「パン」
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あの時、ゲームの楽しさにハマってしまい、ちょくちょく彼女が眠っている間にこっそりゲームをするようになった。
「お母さん、新しいゲーム……1つ買ってもいい?」
「あら、珍しいわね。なにか欲しがるなんて」
「なんか……よくわからないけど、欲しいの…欲しいって言うか…必要…?」
「……そう。分かったわ」
いい加減同じゲームに飽きた僕は、彼女の身体の支配権に少し割り込み、新しいゲームを買わせた。そして新しいゲームを夜、僕が遊ぶ。
「ねぇ」
ある日の夜、気付いたら後ろにいたお母さんに呼ばれ、ビックリしながらも振り返る。
「お……お母さん…」
お母さんはしばらく私を見つめ、意を決して様に息を吐いた。
「アンタ、誰?怒らないから言ってみな」
そう言われた時、頭が真っ白になった。
「え…あ………気付いてたの?」
「勘だよ勘。でも当たってたみたいだね」
この人、変な人だなと内心思った。
「…僕は……◼◼◼の別の人格……◼◼◼は…多分多重人格なんだと思う…」
「僕…ねぇ…なるほど……」
「……気味悪がらないんだね」
「そりゃあね。多重人格って言っても、私の娘には変わりないでしょ?」
「そうだけど…」
全て言ってしまったら気味悪がられると思い、告白できなかったが、こんな反応されるなんて思わなかった。
「……変な人…」
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「……らしくない…過去を思い出すなんて」
暗い部屋に1人、窓を開く。
「僕は縛られるのは嫌いなんだ。元に戻る前には帰るよ」
ポケットを触り、お守りが入っているか確認する。そしてフード付きの外套を纏い、窓から飛び出した。
「うわっ、高っ!」
勢いで飛び出したが、思ったより地面が遠い。
「えーっと…なんだっけかな…」
空を飛ぶ魔法、確かあったはずだ。リリィがそんな魔法を本で見たはず。
「……『我が背に空駆ける翼を』だ!」
どうやら成功した様だ。けどどうやって飛行する?どんなふうに操作すれば…
「考えるな…感じろぉ…おぉっ!」
適当に頭の中で飛べ飛べ飛べと思っていたら本当に飛べた。そして減速しながら地面に着地する。
「リリィには悪いけど、僕の方が魔法の適正は高いみたい」
せっかくの異世界、爆発する魔法と回復魔法しか使えないだなんてガッカリしているだろうなぁ…
「……さて、冒険冒険…時間は無いんだから急がないとね!」
強化魔法を発動し、街を目指し森を駆け抜けた。
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「……」
「……リリィは来てませんか?」
「来てないねぇ…」
翌日、リリィが休んだ。昨日の事もあるし、そっとしておこうと思っていたが、ナンバー1に何も言わずに休んだという事で、何か引っかかる。
「1度、部屋でも見に行ってみる?」
「……許可しましょう」
「ありがとう。スキャリィも行くよ?」
「うぇっ!?私もか!?」
スキャリィを引きずりながらリリィの部屋に走る。そしてリリィの扉をノックする。
「リリィ〜?具合でも悪いの〜?」
何度もノックしても返事は無い。不審に思い、ドアノブを回すと、鍵が空いていた。
「……?入るよー」
部屋の中を確認すると、リリィは居ない。窓が開いたままだ。そして机に置き手紙があった。
「これは…」
『冒険してくる。2日後に帰ってくるから窓は開けておいて。以上』
「……どうしたものか…」
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外套のフードを深く被り、焼き鳥屋のようなところで『ミノタウロスの串焼き』を買った。固いしでかいし臭いけど味は好み。けど何故この世界の人はミノタウロスを調理しようと考えたのかわからない。
「アンタ、見ない顔だね」
「はむはむ……だからどうかした?」
「……いやどうかしたとかではないけどね…」
「あぁ、うんよそ者ですよそ者。はむはむ」
この肉何度も噛まないと噛みちぎれない。
「質問はむはむ…ミノタウロスって強い?はむはむ」
「強いも何も、手練10人以上じゃないと討伐は無理なんて言われてるんだぜ?この意味が分からないほど馬鹿じゃないだろ?」
「9人じゃダメなんですかね」
「今10人以上っつってんだろ!?なんで1引いちゃうんですか!?」
「はむはむ……店主さんのリアクションが面白いから…ふふっ」
立ち上がりツッコんでいた店主さんは疲れたように座った。実際疲れてると思う。
「どこらはむはむ辺に居るんです?ミノタウロス」
「……さぁな。近頃は隣国と戦争が起こるんじゃねぇかとかそういう噂ばっかりしか聞かねぇ。魔物共は国の連中に倒されてるかもな。最後に現れたミノタウロスは…4日前に西の地下迷宮の最奥に現れたミノタウロスだ。まぁ今頃そのミノタウロスも討伐されてんだろ」
「はむはむほうほう……ありがと、店主さん。生きてたらまた会おうね」
情報通の店主さん。僕の考えに気づいたらしく、
「おい待て嬢ちゃん!1人でミノタウロスと殺り合おうなんて無謀だ!」
「大丈夫大丈夫。今頃は討伐されてるかもだし。ただの冒険。いざとなったら逃げるよー」
あの店主、良い人だな……うわ、まだ肉全然残ってる……はむはむしなきゃ。
「さて……西の迷宮かぁ…その前にお昼ご飯でも食べなきゃね」
宝物庫らしい所からお金はくすねてきた。飯代なんて足りる足りる。え?ミノタウロスの串焼きを食べただろ?これくらいじゃ足りない足りない。
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なんで異世界って、こうも荒くれ者と酒場は付き物なのかなぁ……
「ステーキくださーい」
「はーい」
待っている間、ミノタウロスの攻略法を考える。
「奇襲して脈の1本や2本切れば簡単そうなんだけど……まず皮膚が切れなかったらなぁ…」
ぶつぶつと周りに聞こえないように小声で呟く。こんな時ケータイがあれば『ミノタウロス 攻略法』なんて調べてるんだろうけど、生憎そんな文明の利器は存在しない。
「すいませんお客さーん、今席混んでまして、よろしければ相席のお客さんを」
「構いませんよ」
「あっ、ありがとうございます!ではこちらへどうぞ」
「いやぁ、助かりました。他のところはどうも怖くて、ハハ」
見た感じ弱そう。だけどこういう人に限って強いんでしょ?僕知ってる!
「確かに他の人みんな強面ですもんね」
「えぇ。まぁ貴方は貴方で怪しいんですけどね」
「そりゃ失礼」
この男のずっと笑ってるけど表情筋固まってんのかな?
「お待たせしましたー、牛のステーキでーす」
「おっ、これはミノタウロスじゃないのか」
「はい、ただの牛ですよー」
牛肉なんて最後に食べたのはいつだろうか……4年前くらい?
「ん…これなんの調味料使ってんのかな……初めて食べる味…」
「……折角なので、私にも彼女と同じ物を」
「かしこまりましたー」
「……」
なんだコイツ……ウザイというか……
「そう言えば、そんな似合わない剣を持って、どこに行かれるのですか?」
「僕の勝手だ。口出しするって言うならタダじゃ済まさないよ」
「いえいえ、聞いただけです」
なんだろう、笑顔って言うより薄ら笑いって言った方が合うな。うん。
「こりゃ相席拒否しとけば良かったな」
「おや、振られてしまいましたか」
「口説いてたのか?」
「いいえ」
「そ」
黙ってステーキをフォークで突き刺し口に運ぶ。とにかく早く。
「一応言っておきますけど、自分の実力を過大評価するのはやめておいた方が良いですよ」
「…何が言いたいの?」
「いえ…とても単身でミノタウロスに勝てそうだとは思えなくてですね」
「…」
コイツの笑みは印象のいい笑顔でも、不気味な薄ら笑いでも無い。これは僕を馬鹿にする嘲笑だ。
初音ミクの消失ってアレ頑張れば歌える気がするんよね()




