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聖女の傷はずっと癒えない  作者: くーた
2/6

出会い

受験シーズンで遅くなってしまいましたけど、来週からは受験シーズンも終わるのでペース上げていきます!

「……」


知らない天井。いつも使っていた布団に比べると格段にフカフカなベット。家じゃないみたいだ。


「…ここは……医務室?」


少し上体を起こし、警戒する様にキョロキョロと見渡すと、魘されている少年と、うずくまった白髪の男性が同じくベットに居た。


「あ…」


「ん…?」


その中に1人だけ起きている少女と目が合い、少し気まずい。


「……」


「何か用?」


「あ…えっと…用と言えば、ここは何処ですか?私は……一体…」


「ふむ…そうですね……君にとってここは異世界。私は、私達は君を異世界から喚んだ。引きずり込んだと言っても過言ではない。以上」


「……そうですか…でも、その点は構いません。あのまま元の世界に居てもどうせ」


「暗い話は、嫌いだから要りません。愚痴なら許可を取って」


「……そうですね。ごめんなさい」


こんな風に言いたい事をズバッと言えたら楽なのだろうか?なんて考えても意味は無い。


「用は終わり?」


「いえ、もう1つ、何故私がここに喚ばれたのですか…?」


「そうですね…貴方が必要だと神託が下りたから」


「!」


神託…なら、これは神が示した道…?


「……?どうかしましたか?」


「いえ……とても…とても深く感謝します…」


「……その感謝は、私に対してでは無い様に見えますね」


「えぇ……神への感謝です。ですが、それを私に教えてくれた貴女にも感謝します」


「そう…」


しかし、謎が1つ残っている。それは自分の名が全くわからない事だ。


「…あの…鏡はありますか?」


「鏡……?少し待って、作るから」


少女は懐から紙を取り出し、その紙に赤い棒状の塊で何か描き始めた。


『映せ』


一言唱えると、何か描かれた紙は、一瞬で手鏡へと変わった。


「……魔法?」


「そう。申し遅れた。私は宮廷魔法使い。そのナンバー1。貴女の魔法の先生になる予定」


「…え?あ、貴女が……先生!?」


驚愕を隠しきれない。だって相手は子供、どう見ても先生になれるようには見えない。


「…やっと違う顔になった」


「いや…こんなの誰だって驚きます…」


「まぁいいです。どうぞ」


少女がベットから降り、手鏡を渡される。その手鏡で、恐る恐る自分の顔を覗く。


「……これが…私?」


短い金色の髪、紫色の瞳。顔立ちは整っている。けれど、自分は本当にこんな姿だったのか?と疑問が消えない。見つめれば見つめるほど疑問は溢れるばかり。


「……名前も、姿も……失った…?」


ただの予想だが、異世界に移動する間に私は、名前と身体を失ったのではないかと考えた。


「……神様…」


その時、頭の中に声が響いた。


『何も心配は要らない。今はただ進め。時が来れば、私がまた道を示そう』


「……え?」


一瞬、耳を疑った。道を示す?つまり今の声が神?


「……あぁ…本当に……私を導いてくれるのですね…お母さんの言った通り…」


「……その調子なら、平気そうですね」


彼女の声は、変なものを見たような声だった。


------------------------


「まず、魔力の適性を測ります。動かなくて大丈夫です。その場に立って下さい」


「…」


指示通り止まる。果たして自分はどれだけ適性が高いのか、結構ワクワクしている。


「……適性がないですね。悪い意味で初めて見ました。本当に人間ですか?」


「……え?」


「次行ってください。適性が低いと魔法が暴発しやすいので気をつけてくださいね?フフフ…」


ワクワクを返せ。腹黒い笑い方をするな…取り敢えず次の検査に移る。と言っても隣の部屋に行くだけだが。


「失礼します」


「どうぞ。次は魔力の量を測ります。魔力を少しでもいいので、この水晶に注いでください」


「魔力は…どうすれば出るのでしょうか?」


正直魔力とかいう物とは無縁な生活をしてきた。当然魔力の使い方も知る訳が無い。


「えーと…魔力の流れを感じてみてください」


「…魔力自体分からないのですけど…どうすれば…」


流れと言われても、血管を流れている血しか流れているものは分からない。


「じゃあ僕がその流れを指でなぞるとか…やってみます?」


「…まぁ…腕だけなら」


「充分です。少し待ってください…うーん……濃いですね…魔力タンクじみてる…」


……ん?普通に魔力の総量見えてるんじゃ……?


「……あの、魔力を直接見れるなら別に測るための道具なんて要らないんじゃ無いですか…?」


「あっ……つ、次にどうぞ…うぅ…」


さっきの人とは違い可愛い。いじめたくなる様な子だ。取り敢えず名前を聞いておこう。いや特に深い意味は無いですが


「貴方の名前は?」


「……ラーマ……です」


「ラーマ君……これからよろしくお願いしますね?」


少し微笑みながら握手をし、次の検査に向かう。


「失礼します」


「来ましたね。では早速測ります。ここでは魔力の性質を調べます」


「性質?」


「はい。魔力の性質です。例えば性質が炎なら、炎属性が強くなります。これだけで説明は充分ですよね?」


「なるほど…それで、どう検査するのですか?」


「簡単です。私が呪文を唱えるので、復唱してください」


コクリと1つ頷くと、彼女は静かに呪文を紡ぎ始めた。


『我が内なる力よ、現出せよ』


彼女は手のひらに小さい竜巻と石つぶてを出現させた。


「これが私の属性。上手く使えば割と強いと言われてる属性の風と土です。まだ私は使いこなしていませんけど」


「なるほど……復唱すればいいんですよね?」


「はい」


取り敢えず集中し、手を出す。


『我が内なる力よ、現出せよ』


手のひらを見ると、青緑色のモヤモヤと、赤いモヤモヤが浮かんでいた。


「これは……?」


「赤いモヤは身体強化系の特性。しかしその隣の青緑色のモヤは初めて見ましたね……これが救世主の力なのですかね?」


「……多分…傷を癒すとかそういう特性なんじゃないかと思います」


一応ゲームとかでは、こういう色はだいたい回復魔法と相場が決まっていると思う。


「まさか……回復魔法…?それなら確かに、救世主足る力ですね」


「?どういう事ですか?」


「簡単に説明しますね?この世界には、回復魔法は存在しないのですよ。回復魔法の特性持ちも、回復魔法の陣も詠唱文も、無いんですよ」


つまり私は……世界で1人の回復魔法使い……!?


「そんな…重役が私に…務まる訳無いです…」


ボソリと呟いた言葉は、彼女の耳には届いていなかった。


-----------------------


「昨日の奴、こっちに来るんかねぇ…」


「さぁ?どっちかと言うと来て欲しいけどね〜」


「……確かに、ここには私とジンだけだしなぁ…まぁここが出来たばかりだから仕方ないけど…」


ここは簡単に言えば、養成所みたいな所だ。1ヶ月前にできたばかりな上に、入れる奴は相当な実力者じゃなければ入れないとかいうシステムで、今の所合格したのが僕とスキャリィしかいない。


「ここの試験、かなり鬼畜だし、あの子多分入れないと思うんだよねぇ…」


とか言っていると、扉が開き、宮廷魔法使いのナンバー1が入ってきた。


「……今日は新しい生徒を紹介します。名前は無いので、呼び方は本人に聞いてください。入りなさい」


「おぉ、まさか昨日の子が本当に…?」


「……」


少しワクワクする。だって話し相手が増えるし、何よりあの子は少し危うい気がする。なら、ワクワクというよりドキドキだろうか?なんて考えている間に、彼女は現れた。


「えーっと…初めましてでは無いですよね?見覚えがありますし……取り敢えず、自己紹介から。私は昨日、異世界から喚びだされました。名前も自分の姿も分かりません。なので、この世界っぽい呼び名を考えました」


「……」


真面目に、微笑みながら聞く。何故かスキャリィが不機嫌だが、まぁ気にしなくてもいいだろう。


「私の事は、リリィと呼んでください」


「……うん。よろしくね、リリィさん。僕はジン、話し相手が増えて、嬉しいよ」


「…まぁ…一応……よろしく…スキャリィだ」


しかし彼女、なんというか表情が作られてるみたいだ。信用されてないみたい。無理もない。


「はい、それでは始めましょうか。二人は実戦を、リリィは魔法から教えましょうか」


「分かりました」


------------------------


一通り魔法。教わり、実践してみたが……


「……適性は、14と言った所でしょうか。平均は100程度なのにこんなにも低いとは驚きを通り越して笑えますね」


「……」


炎魔法は爆発魔法に、水魔法は爆発魔法に、風魔法は爆発魔法に、土魔法は爆発魔法になどなど、どうやら私は爆発魔法以外使えないみたいだ。


「魔力を制御しきれず暴走し爆発を起こす……初期魔法でこれですから、これ以上の魔法を使いたいならもっと大掛かりな魔法陣が必要ですね。通常の何倍もの細かい魔法陣が」


ちなみに通常の初期魔法の魔法陣は、円に星マークだけで良いが、私は上級魔法の魔法陣が無いと使えないほど適性が無いらしい。


「はぁ……」


「次、身体強化魔法の魔法をどうぞ」


教わった魔法陣を描いた紙を握り、魔力を込める。すると少量魔力を流しただけで発動した。さっきとは大違いだ。


「……成程、自分を強化する適性は高いんですね。大体527くらいですかね…」


極端過ぎるが、別に魔法だけが勝利の鍵という訳では無いし、頑張ろう。別に魔法使いたかったなんて思ってないですし、はい。身体強化も立派な魔法だし。


「次……回復魔法を試したいのですが……多分これが回復魔法の魔法陣かと。宮廷魔法使いですら使えなかった魔法陣です。単純な構造なのですが…」


「わかりました……やってみます…」


魔法陣が描かれた紙を握り、魔力を流す。


「……!魔法が起こった……自己回復……?」


回復魔法の温かさが伝わる。確かに発動している。


「……他人の傷を治す魔法陣は無いのですか……?」


「……魔法陣には見つかっていません。ですが、もしかしたら詠唱魔法の方にあるかもしれませんね」


まだまだ覚えなければならない魔法は多い様だが、この程度、まだまだ序の口。


「神様……きっと、この世界を救ってみせます…だからお導き下さい…」


十字架を握り、信じるものに呼び掛ける。形だけの偶像ではなく、私を導く神様に。

ネーミングセンスが欲しい(切実)

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