えっ、私じゃないの?
今年はつの投稿です。
今年はもう少し頑張ります。
あーあっ、ついてない。
今日はお気に入りのドラマがあるというのに。
この頃は、ひかるにお願いしてばかりだし、そろそろ私が、本人が行かないとやばいレベルだ。
だから、久しぶりにひかるのお願いに二つ返事で了承した。
「ひかりちゃん、今日はブン太と約束があるから、代わりに母者のお店に行ってくれないかな?」
「えっ、まあいいわ」
「ええっ、ホントに?」
「ええ、ホント!」
「ホントにホント?」
「ホントにホントだよ!!」
ひかるからは代わりと言われたが、そもそも私の役目をひかるに押し付けていただけだから、これで正常に戻ることになる。
しかし、母者はがっかりするだろうな。
そもそも昔から母者は、ひかるにはとても甘い。
ひかるはバカで鈍感だから気づいてさえいないと思うけど、母者は私をライバル視していると感じることがある。というか、毎日がそうだ。
朝ご飯も、私は洋食が好きと知っているのに、和食となるのはひかるのためだ。
つまり母者はライバルということ。
つばさというライバル以上にウザい存在だ。
いや言い換えましょう。
母者は、私達のために頑張っている。
それは事実で、私も母者を尊敬している。
ただ、ひかるに関することだけは違う。
それは、愛息子とただの娘というほどの大きな差がある。
全てにおいて、ひかるより秀でた私には耐えがたい事実なのだが、私自身もひかるをとても意識しているわけで、……同じ穴の何とかなのだろう。
うだうだ思考していたが、纏めると、ひかるを巡って母者と私はライバルということだ。
ただし、家族なんだけどね。
少し、世間体がうるさいだろうけど、同性婚が認められる世の中で、姉弟という理由で結婚できないことはあり得ない。
だから、私はひかるをいつかゲットする。
今はつばさという彼女がいても、まだ目が届く範囲の方が良い。それにつばさなら私も負けない自信がある。あえて虫除けという位置付けがつばさの役ということだ。
ひかるに彼女がいること、それ自体は嫌なんだけど、有り余るメリットがある。
それに、将来、まずいと思った時には、非常手段も辞さない。何をするかは秘密だけど。
私は傷心の弟を慰めてハッピーエンドになるって算段だ。でも、今のままならそう簡単にはハッピーエンドとはならない。
どちらかといえばハッピーエンドレスになるだろう。
そのまま読めば幸せいっぱいとの直訳だけど、ハッピーエンドがレスな訳だ。つまり不幸。そして泥沼だ。
あーあ、つまらない。
いやいや、落ち着け、わたしっ!
そろそろ目的地に到着だから、スマイル、スマイルねっ。
目の前に母者の経営するテナントが見えてきた。
さて、妄想はしばらく手放してプロの仕事をしましょうね。
「あの、お母さんは?」
近くにいる店員に尋ねると、その店員は私に少し待つように伝え、店の奥に向かって行った。
約5、6分だろうか?
普通なら私を待たせるなんて、そのファッション雑誌にはもう出ないレベルのチョンボだ。
さて、なんて言ってあげようかしら?!
「あらっ、あーあ。本人なのね」
あからさまに残念がる母者に私は怒りを覚えた。
「お母さんは、私じゃダメなんだ。
ふーん、なら最初からひかるに頼むべきじゃないかしら?私は忙しいのだから」
「あっ、いや、ひかりが嫌がるタイプの服だったから、戸惑っただけよ。あなたがモデルなら言うこと無いのですけど、今日は私の趣味のシリーズなのよ。
いいの?」
「うーん、いいも悪いも無いわ」
「なら、異論なしということね。じゃあ、早速、そこに掛けてある服を着てから裏の撮影現場まで来てちょうだい」
ビジネスライクに言い放って母者は事務所の中に入って行った。もし、ここにひかるが来ていたなら、きっと母者は事務所なんて行かないだろう。
……あたし、お母さんから嫌われてるのかな?
それは嫌だ!
くっそ、今日は頑張るからね!
心の中で本日の意気込みを決意し、掛けてある服を無造作に手に取って着替え室のドアを閉めた。
さて、今日の服はどんなだろう?
って、ヒラヒラにデカいリボンやらゴテゴテしすぎじゃないか?これは所謂、ゴスロリの最たるもの。
ニーハイのソックスも花模様がよくわかる。
こっ、これを私に着ろというのだろうか?
手に取った服をハンガーに掛けて、ズカズカと事務者に乗り込むと、待ってましたといった感じで母者は待っていた。
「やはり、ひかりには無理だわね」
「いーや、あんなの誰でも無理でしょ!」
「そうとも限らないわよ。さて、仕方ないからあなたは帰っていいわ。代役には連絡してから大丈夫よ」
「代役?」
「そう、とっても美少女だから安心しなさい。
うちのブランドの看板娘だし、あの子とおかげでうちの店は安泰だわ!」
「えっ、それってもしかして……」
コンコンっと事務所の扉がノックされ、顔を出したのは、やはりひかるだった。
「まぁ、ひかるちゃん早かったわね。お母さん嬉しいわ」
「えっ、まあね。お母さんからタクシーを使いなさいとメールが届いから、たまたまだよ。それで、ひかりちゃんがここに来ているのなら、僕は必要無かったんじゃないの?」
「いやいやいや、やっぱり写真が映えるのはどちらかといえばひかるちゃんの方だから、ひかりには帰ってもらうつもりですよ。それにわざわざ来てくれたから、今日のバイト代は増し増しにするし、帰りはお母さんと美味しいものでも食べて帰ろうねっ♡」
「えーっと、お母さん、私はなぜ電車?
それにバイト代はきちんと払ってくれるのよね?
あと、あなた達は一緒に夕御飯食べて帰るなら、私も一緒と考えていいのよね?」
チラリと私を一瞥した母の言葉は辛辣だった。
「へぇー、私の服が着られない人が、なんか生意気にも意見言ってるー。ひかりは今日はいつも楽しみにして見ているドラマがあるから、遅くなると間に合わないわよ」
「いや、友達に録画してもらうし、私もご飯を一緒に食べたいなっ!」
少し可愛めにおねだりするが、母者の優しい瞳は、私には向かうことはなかった。
まあ、仕方ないか、ここ半年は母の仕事を手伝っていなかった罰でしょうね。
肩を落として、事務所から出ようとした私の腕を掴んだのは、ひかるだった。
「お母さん、悪戯が過ぎるよ。ひかりちゃんと僕が交互に撮影されれば半分の時間でいいし、今日は本当は春向けの爽やかな服装がメインだったはずだけど、なんでゴテゴテしたものが出ているの?ひかりも反省していると思うから、帰りはみんなでご飯食べて帰ろう」
うっ、昔から、ひかるってば優しいなぁ。
そうだったのか、母者は私に怒っていたのか。
なら納得いく。
「お母さん、ごめんなさい」
「……し、仕方ないわね。ひかるちゃんのお願いだから、今回だけだよ。次は水着ということでOKね?」
……あっ、引っ掛けられた!
私は未だかつて水着姿を公衆の面前に晒したことはない。私の完璧なボディを雑誌に載せるなんて、嫌だけど、今の状況では断れない。
「……わかった」
言いたくはないが、喉の奥から絞り出す。
ホントに悔しい。
明日はひかるになって、1日ブン太をいびって発散するしかない。それしかない。決定!
そして、私が言葉を言い放った一瞬、ひかるの表情が緩んだのを見逃す私ではなかった。
その夜、ひかるの部屋に入るとお財布を開いてみた。
やはり、諭吉様がいらっしゃる。
それを樋口さんに入れ替えて、溜飲はやっと下がった。
しかし、ブン太の刑は重い。
ひかるが名前を勝手に使ったのだろうけども、それでも許せない。さて、復讐は寝ながら考えよう。
明日が楽しみだ。
読んでいただき、ありがとうございます。




