バレバレでした!
んで、なんで僕はこうなんですか?
化粧台の前に座って、ジャージ姿のひかりに頭を整えてもらっている。
今の僕の髪型は少し長めで、ひかりとほぼ似ている。
刈り上げした後ろ髪意外は、ショートボブで制服を取り替えてもひかりとは分からない。
ここだけの話、ひかりの胸はあまり自己主張していないから、真っ平らでもなんら支障はない。
いつぞやの写真集には、ギッシリと詰めのもが入っていることはつばさも承知していて、それでいてタブーな話題となっている。
「はい、終わり。じゃあ、リップしよう。ひかる、こっち向いてよ」
「いやいや、ひかりちゃん。僕も持っているから、自分のをするからいいよ」
「だーめ! 私のは、素聖堂のリップグロスなのよ。あなたのはキャツビーのでしょう。だから、はいん〜ってしなさい」
「いやいや、おねーたま。姉弟で間接何ちゃらはいかがなものかと思うのですが? それに、どうせ朝の告白が終われば僕は普通にひかるとして自分のクラスに戻るし」
「ひかるちゃん。これにはね、ふかーい話が有るのよね。姉弟での間接何ちゃらなんてどってことないわ。
それよりも、今日のお昼からの体育が水泳って知ってる? あんな外でプールに入るなんて紫外線に襲ってくださいと言っているようなものだわ。
だ・か・ら、今日一日はあなたはひかりなのよ。
ひかるちゃんは、お休みと連絡してちょうだい」
め、目が…座っているぞ、こいつ。
それにどこが「ふかーい話」だったのか理解不能だ。
ひかりは異常に水泳が嫌いとは知っていたが、なんで仕事がない時に代役をしなければならないんだよ!
しかも、自分の休みをひかりとして担任に伝える勇気は持ち合わせてない。
…………あっ、いい案が浮かんで来た。
じゃあこうしよう。
「ひかりちゃん。いや、おねーたま、僕のお願いを聞いて欲しいのですけどね。僕も今日は、ある子から呼び出されているから、お姉たまにひかるとして登校して欲しいのですけど」
「えっ、やだ。それは勘弁ね! 私はひかるにはなれないし、そもそもブン太君とは話しが合わないから、バレちゃうと思うの」
目を潤ませながら、上目遣いなひかりが僕に縋りつく。だが、僕も今日は重要な要件があるから、それを処理しないと落ち着かないし、その子に気の毒だ。
十中八九、僕への告白だと思うので、きちんと説明して納得して欲しい。まあ、断ることに変わりはないのですけどね。
「ちなみに、誰なのよ?」
「ああ、言ったらダメだよ。月城 あやめさん」
「…………ひかるん。あのレベルを振るんかい?
一年生のナンバーワンじゃない。ちょっとだけ付き合うなんて気は無いの?もったい無いわ」
「そうかな? 雫ちゃんに返事して無いし、本命はつばささんだし、三人もあやふやな関係は大変だよ。それに僕がおねーたまの代役をしているなんてバレたらどうするの?」
「……わかったわ。仕方ないから今日は私がひかるになってあげるから、大丈夫よ」
「ほんと? じゃあ、放課後の体育館裏だから、よろしくね」
「えっ、そう。私もその時間にそこだからね。よろしくね」
そう言うとひかりは自室に戻り、学生服姿で現れた。
これなら、入れ替わる必要は無いし、なんだかな〜だよ。
そうこうしている内にいつものように登校時間となり、今日は二人で学校に向かった。
チラチラと色々な視線が僕達に向けられる。
それは仕方ないことと諦めるのだが、かなり目立つのだろうな。悪目立ちと思いますけどね!
「ひっかり、おはよう。ひかる君もね」
可愛い声で爽やかな挨拶はつばささん。
「おはよう。つばさ」
「おはよう。つばささん」
久々の呼び捨ては、僕で『さん』付けは当然ひかりの役目だ。
つばささんは、僕らを見てもいつもと変わらない。
ここでやっとホッとするのだが、今日は直後に衝撃が走った。
「おはよう。ひかる…ちゃん。それに、おはよう。ひかり…君」
周囲に聞こえるかどうか微妙な大きさの声で雫ちゃんから挨拶された。そして、それを聞いて目を丸くするつばさ。
咄嗟にひかりを見ると、ひかりも僕を見ていた。
ど、どうしよう?
たぶん二人共そう思っていた。
雫先輩はつばさを見て、バツが悪そうな顔をしているし、みんながシーンとなってしまった。
その静寂を破ったのはつばさだった。
「やっぱり、ひかる君がひかりになってたのね。
どうせ、誰かから告白されるから入れ替わったのでしょうけど、ひかりはひかる君をおもちゃにし過ぎだよ」
「えっ、つばさは知ってたの?」
「当然でしょう。親友なんだし、…幼馴染の男の子ぐらい分かるわよ。それにひかりの番組はチェックしてるから、ライブ放送の時に横にいるのはひかる君しかいないじゃない。そんな時は、ひかる君はお休みしてるから、割と昔から知ってたの」
「……………………」
僕達には弁解する言葉も出てこない。
ただただ、ひかりと顔を見合わせたまま俯いていると、意外な言葉がつばさから投げかけられた。
「大丈夫だよ。二人が私を裏切ったとか思って無いし、ひかる君がひかりの時には、更衣室では絶対に着替えないし、トイレにも一緒に行かないし、その時だけは私と手を握ってくれるから、割と入れ替わりもいいと思ってるんだ。
だから、今日もいつものひかりと同じようにしてくださいな」
「は、はーい。よろしくお願いします」
そこで、一人だけ黙っていた雫が異論を挟む。
「えっ、つばささん。ずるい! 私もひかる君と手を繋ぎたいし、お昼を一緒に食べたいんだからね」
「あの、雫先輩、この子は今日はひかりちゃんだから、ひかる君はあっち」
当然、つばさが指差したのはひかり扮するひかるだった。
「ねえ、それならひかりはどう思う?」とばかりに僕を見つめる雫ちゃん。
雫ちゃんの目は座っている。
ちらりとひかる扮するひかりに視線を向けると、関係無いとばかりに明後日の方向を向いて口笛吹く真似をしている。……なんて鬼畜なお姉だろうか。
「じゃあ、お昼をみんなで食べよ。それで勘弁してください」
この一言に素知らぬふりをしていたひかる扮するひかりが異論を唱える。
「えっ、ひかりとしては雫先輩とは面識無いから、それはおかしいよ」
ここぞとばかりに反論するが、雫ちゃんも異論は無いようで、反論しない。
この二人に何があったのかは知らないが、やはり女の戦いは男にはわからないものがある。
かなり奥が深いのだろうか?
「じゃあ、ひかるのところで四人で昼食ということでは?」
じっと考える三人とも異論すること無く、これで結審した。
ちょうど学校に到着と同時に解決出来たから、そこでそれぞれが自分のクラスに向かうことになった。
ここまでは良かったのだが、つばささんの考えが分からない。大きなスクールバッグにはぎっしりと教科書やら参考書やらノートやらが詰め込まれていたのだが、授業が始まると手を挙げて、教科書を忘れたと言っている。
そして、迷惑とまではいかないが、僕の隣の男の子に席を替わってもらい、腕と腕が触れるほどの距離で、僕の教科書を覗き込む。
ノートに『なんでこんなことするの?』と書き込むと『ふふふ、なーいしょ』という返事が返ってきた。
なんだか楽しそうなのは見間違いじゃないよね。
まあ、いいんだけどね。でもつばささんから良い髪の匂いが僕の鼻腔をくすぐるので、なんだかソフトな拷問を受けているようだ。
たまに手が触れたり、僕の髪の毛に触れたりと面白がっているつばささんは上機嫌で、こんな笑顔に抗うことは出来ない。
昼休みまで、少しだけは二人の時間を満喫してもいいよね。おねえも許してくれるかな? アーメン!
久しぶりですね。
この作品は、書くのが楽しみですけどね。
時間が無いから、更新は遅いです。
すみません。




