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魔法がなくとも

「……やっぱり戦いって難しいですっ」


シアはゴブリン相手と互角の戦いを繰り広げている。

シアが相手の剣をギリギリで避けてゴブリンの腹部に向けて刃を刺そうとする。

しかし、その攻撃はすぐに避けられて逆にゴブリンがシアに向かって剣を振るう。


「アレン様の前で無様な姿を見せるわけにはッ!」


その剣を何とか防いだがそれと同時にシアの剣にヒビが入った。

シアの剣は一番価値の低いEランクの装備。故にゴブリンの斬撃に耐えられなくなっていたのだ。


「しまっ……武器が壊れーー」


更に追撃を加えるゴブリン。その追撃で剣が完全に破壊されてしまう。

剣が壊れて体勢を崩すシア。そんな彼女に対してゴブリンは勢い良く剣を振るおうとするが。

突然ゴブリンの身体が燃え始めて一瞬で灰となり消滅した。


「アレン様ありがとうございます! ですが申し訳ありません。アレン様の助けを借りることになってしまって」


「いや、悪くなかった。ゴブリン相手に互角の戦いをしたんだ。初陣にしては十分だ。それに……」


アレンはそういうと何もない空間から剣を出現させる。

錬成魔法。これはあらゆる武器や防具を作り出すことの出来る魔法でその品質は武器や防具の作成時間によって変化する。

今作った武器は一瞬で作った武器。性能は高くないがそれでもゴブリンと戦うのには十分だろう。

アレンは早速作ったばかりの武器をシアに渡した。


「さっきの戦いは武器が悪かった。この武器ならばゴブリンを倒せるだろう」


「ありがとうございます! でも、今のは魔法ですよね? アレン様の魔法は発火魔法だと思っていたのですが、このような魔法も使えるのですね!」


「俺の魔法はコピーだ。だから色々な魔法が使えるんだよ」


「そ、そうなのですか! 発火魔法だけでも凄いのに武器を作ったり他にも色んな魔法が使えるなんて凄すぎます! 流石はアレン様ですね!」


本来魔法は一人一つしか使えない。中には二つ以上使える人物もいるがそれは稀だ。

そんな中でアレンの魔法はコピーという魔法一つだけだが、そのコピーによって現在千以上の魔法を使うことが出来るようになっている。


「しかもそれだけじゃないわ。アレンはコピーした魔法を他の人以上に使いこなすことが出来るのよ」


「そうなのですか!?」


「アレンが良く使ってる発火魔法。あれは一般的には葉っぱを何とか燃やせるかって程度の火力の低い魔法なのよ。だけどもアレンはその魔法で人を消し炭に出来るの」


「昔から魔法の才能はあったんだよ。それよりゴブリンが来たぞ」


「はい。アレン様、お任せを。アレン様から武器を頂いたのです。負けるわけにはいきません」


シアはこちらに近づいてくるゴブリンに対して剣を振るう。

それをゴブリンはすぐに剣で防ぐが、相手の剣は一瞬で壊れてしまった。


「相手の剣が壊れたっ!? これがアレン様の力……!」


シアはアレンの作った武器の性能に驚く。勿論今回の相手がゴブリンで故に敵の武器の性能が低かったこともある。

だがそれを差し引いても相手の武器が一振りの剣で壊れるなどあり得ないことだった。


「アレン様! ゴブリンを倒すことが出来ました!」


「よくやったな。冒険者経験がない割には悪くない動きだったぞ」


「これも全てはアレン様のおかげですよ!」


初めて魔物を倒せたことに喜ぶシア。そんなシアを見ながら今度はティアナが剣を構える。

そしてゴブリンを見つけると一瞬でゴブリンまで接近してその首を切り落とした。


「凄い速度です。これも魔法ですか?」


「ええ、そうよ。私の魔法は速度魔法。早く動くことが出来るの」


ティアナは素早い速度でこちらに戻ってくるとそう答えた。

ティアナの魔法ーー速度魔法は自分の動きが速くなる魔法。

一見地味な魔法ではあるがその分、魔力の燃費が良いので長時間その速度を維持することが出来る。


「これで三人の実力と魔法は分かったな」


「本当に? 私、アレンが倒したところみてないんだけど」


「一応ゴブリンを倒しただろ?」


「あれはシアちゃんが戦ってるところに援護しただけでしょ? それに発火魔法以外の戦い方もみたいしね」


確かに言われてみれば自分はゴブリンと戦っていなかった。

それにやはり仲間なのだから発火魔法以外にも使える戦闘魔法を少しは見せておくべきだろう。


「分かった」


アレンはそういうと手をかざして巨大な氷を出現させる。

その氷は宙へと浮き上がり、そのままゴブリンに高速で衝突する。

当然、ゴブリンは何が起きたのか分からずそのまま動かなくなった。


「氷魔法で巨大な氷を作り、念動力の魔法で氷を動かしゴブリンに衝突させた。こんなものだろう」


「相変わらず凄い魔法ね……」


「アレン様流石です! 二つの魔法を使ってそんな戦い方も出来るのですね!」


アレンの魔法を前に驚く二人。これでアレン自身も戦闘でどの程度役に立つかは伝わったはず。

後は薬草を採取するだけ、それ自体は初心者冒険者でも出来る簡単な任務なのだが。


「……何か来たわね」


「あれは……ミノタウロスですよね?」


シアとティアナがその牛の怪物に視線を向ける。

漆黒の毛に覆われた巨大な人型の牛の魔物。身体は大きく、全身は筋肉質であり右手には巨大な剣が握られている。

その魔物はミノタウロス。Aランクの魔物であり、その身体能力の高さで多くの冒険者を殺している凶悪な魔物だ。


「どうする? 今の私たちじゃ敵わなさそうだけど」


「俺たちの任務は薬草採取だ。無理に戦う必要はないが……向こうはやる気らしいな」


ミノタウロスは自分達の姿を見つけたのか、こちらに視線を向けている。

シアとティアナはいつ攻撃が来てもいいように剣を構えた。


そんな中で最初に動いたのはミノタウロスだった。

ミノタウロスは一瞬でティアナに接近すると剣を勢い良く振るう。

それをティアナはすぐに避けて逆に剣を振るおうとするがそれよりも速くミノタウロスが彼女を蹴り飛ばし吹き飛ばされた。


「がッ!? 全然速い……力も……」


鎧である程度の威力は軽減されたがそれでもかなりの攻撃を食らったのか口から血が溢れる。

アレンはティアナの方へと近づくと彼女の頬に触れて身体を回復させた。


「ありがとう……でも予想以上に強いわ。私の動きよりも速かった」


「やはり今のままではAランクの魔物はキツいようだな」


ミノタウロスは吹き飛ばしたティアナの事など既にどうでもいいようで今度はシアに向けて攻撃を仕掛ける。

シアは避けようとするがそれよりもミノタウロスの動きの方が速い。

ミノタウロスはシアに目掛けて剣を振り下ろす。

だがその剣はアレンの剣によって簡単に受け止められていた。


「アレン様……!」


「後は俺がやる」


アレンがそう言った瞬間、ミノタウロスが更に速度を上げて何度も剣を振るう。

アレンはそれを軽く避けると一瞬でミノタウロスの右腕を斬り飛ばした。


武器を持っていた腕を吹き飛ばされて驚くミノタウロス。

そんなミノタウロスにアレンは表情を変えないまま今度は首を切り落とす。

アレンの攻撃に対してミノタウロスは反応することすら出来ずにそのまま倒れて動かなくなった。


「アレン様ありがとうございます! やっぱりアレン様はかっこいいです!」


そういってシアはアレンの腕をぎゅっと抱き締める。

そんな彼女に対してアレンは内心、動きづらいなと考えていた。


「流石はアレンね。魔法を使わずに素の身体能力だけでミノタウロスを倒すなんて」


「念のためだけどな。魔法が使えない状況が来ても戦えるようにはしている」


勿論アレンは魔力が切れたことがない。だから魔法が使えない状況など起こりはしないのだが。

それでもアレンは油断をしない。冒険者は魔法も身体能力も両方必要だと考えているのだ。


「アレン様の魔法が最強なのは勿論のことですが、魔法が無くともアレン様は最強なのですね!」


「最強かどうかは分からないが。だがミノタウロス程度なら問題ないな」


アレンはそう静かに告げると本来の任務である薬草採取を始めた。


ーーー


「こんなものでいいだろう。随分集まったしな」


薬草が大量に入った袋を手にしながらアレンは呟いた。

シアやティアナも薬草をある程度集め終えているみたいだった。

後は帰るだけ。アレン達は町の方へと戻ろうとしたその時だった。


「すみません! 助けてくれませんかッ!?」


突然、一人の女性がこちらに駆け寄ってくる。見たところ怪我とかは無さそうに見える。

だが息が荒れており、何やら大変な事が起きている事は理解できた。


「どうかしたのか?」


「それが魔物に私たちの仲間がやられちゃって……! 助けて欲しいんですっ!」

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